経営の動脈と静脈
これから社長ブログを書いていくにあたって、色々書きたいことはあるのですが、何から書いたものかなと悩んでいます。
CTOからCEOになった時、CEOの仕事って何だろう?と考えこみました。
今回は、上場企業のCEOとしてそれなりの経験を経て、今の私がCEOという仕事をどう捉えるようになったかを書いてみたいと思います。
エンジニアにとってのコア業務がコードを書くことであるように、セールスにとってのコア業務が顧客との商談であるように、CEOにとってのコア業務は”経営資源を配分する”ことだと思います。
経営資源(リソース)、いわゆるヒト・モノ・カネ・ジョウホウをどこに投入するか。ここが経営の根幹でありキモとなります。
会社というものを人のような生命体と捉えた時、経営会議は心臓にあたります。経営会議が定期的に実施されるたび、心臓は拍動し、栄養となるヒト・モノ・カネが、酸素となるジョウホウが組織全体に行き渡っていくことになります。
配分された資源は、本部会議を経て、部内会議など、レポートラインという”動脈”を通じて組織へと流れていきます。
ネズミと象では鼓動の速度が違うように、組織のサイズで心臓となる経営会議の拍動の大きさ・速さは変えたほうがいいかもしれません。大きな獣に襲われるなど、危機的な状況になった時も変わってくるでしょう。
一方、逆の流れもあります。
そう、”静脈”です。
組織全体に流れた動脈は、逆の流れを通ってまた心臓となる経営会議へと戻っていきます。静脈には老廃物や二酸化炭素を回収し、コンディションを整えるという役割があります。
静脈の起点は、マネージャーとメンバーとの1on1です。個々人の抱える課題や不満を回収し、重要な情報は本部会議に上がり、さらには経営会議へと逆の流れでエスカレーションされていくことになります。
つまり、心臓となる経営会議を起点として、
動脈:経営会議→本部→部門(リソースを供給する)
静脈:1on1→本部→経営会議(コンディションを整える)
というサイクルが、経営会議が実行されるたびに行われているのです。
このサイクルを回す上で、各部門の健康状態はどうでしょうか。栄養不足に陥っているところ、情報という酸素がなくチアノーゼをおこしているところ、逆に栄養過多になって内臓脂肪が増えすぎているところがあるかもしれません。
部門会議や、1on1が適切なサイクルで実行されず、動脈や静脈が切れかかっているところがあるかもしれません。最悪の場合、部門ごと壊死して組織崩壊してしまうこともあるでしょう。
CEOおよび経営陣の役割は、組織全体が健全なサイクルで回っているかをモニタし、適切な意思決定および、処置を実行していくことです。必要に応じて、内科的な治療だけでなく、外科的な手術が必要なこともあります。
ただ、組織規模が大きくなればなるほど状態が見えにくくなり、判断が難しくなっていきます。
ポイントは、組織の”バイタルをとる”こと。バイタル(バイタルサイン)とは、健康状態を把握するための脈拍・呼吸・体温・血圧などの指標のこと。部門においては、部門ごとのビジネスKPI、エンゲージメント指標、労働時間などの定量的なメトリクスです。
定量的なメトリクスが優れている点は、数学的に大規模なものを容易に扱えることです。過去からのトレンド、比較、平均、中央値、相関などを読み解き、組織全体の膨大なデータから異常値など見るべきところを特定することができます。
全員の日報を読んだり、メンバーからヒアリングする、チャットの流れを追うなど、定性情報は重要ではあるものの、規模が大きくなってくるとすべてを網羅することは困難となります。定量情報で見る範囲を絞り、その範囲での解像度を上げることに定性情報を使っていくことが良いのでないかと思います。
大きな戦略転換を実施するなど組織を大きく変えた時も、そのサインがどうなっているかをしばらく注視することが大事です。病院で手術をする時に、医者がバイタルをしっかり見ているように。
このように、会社や組織を人の体のようなひとつの生命体に見立てることで、経営というものをぐっと深く捉えることができるようになった気がしています。
心臓の鼓動のスピードは適切か?
栄養と酸素を適切に確保し、供給できているか?
動脈と静脈は切れずにすみずみまで循環しているか?
必要なバイタルがしっかりとれているか?
定期的に問い続けながら、今日もCEOとして経営改善を進めています。
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