中古買取の話
勤務していたレコード屋は、幸いなことに中古の取り扱いもあって。
実は、入社時期に同級生で同じくレコキチだった幼なじみも一緒に誘って、同期でアルバイトで入ったんですけど、自分はブラック・ミュージック担当、彼は何かしらのジャンル特化型の聴き方ではなかったんで、オールジャンルの中古(クラシック以外で、ソウル/ファンク/ジャズ/和モノなど)の担当ってことで。
元々、友達だったんで、中古担当の仕事で当初は作業拠点も違ったんですが、催事準備の時なんかは自分もヘルプで手伝いに行ったり、情報共有も頻繁にしてて。
私自身、業務としてはあくまで新譜の取り扱いがメインではありましたが、ユーザーとしては中古もガンガン掘ってましたから、もともと馴染みも深く。抵抗が無いってよりも、むしろ率先して関わっていった感じでした。
中古の買取と値付けについて
といった趣味嗜好もあってか(?)、程なくして買取の査定業務や値付けも担当するようになりました。この業務の中で、個体ごとの市場価格の肌感覚とか、オリジナルの見分け方などが身に付いてくるわけですね。当時は、(こちらが一方的に)競合視していたマンハッタンレコードやDMRは基本、中古の取り扱いはしておらず、CISCO RECORDSもほとんど無かったように記憶しています。そんな中で、当時はまだ、ブートレグの再発盤なんかも多数出回っていて、しかもモノによってはそれなりの枚数が捌けていたような頃だったんで、中古査定や値付けの業務は、後にバイイングをする上でも基礎体力的に役立った気がしています。
査定価格
これはもう、ピンキリっちゃあピンキリになっちゃうんですけど。当時、まだヤフオクすら市民権を得ていないぐらいの時期だったこともあって、けっこう強気の査定をしていて、大体、販売価格の50%(=利益率50%)を目安にするように、と言われてました。
もちろん、販売価格が1000円以下の、いわゆるカスのレコードは、査定価格も10〜300円ぐらいが関の山で、販売価格の50%ではなかったんですけどね。
今となっては、中古市場もまったく様変わりしちゃってるんで、ブーンバップの90年代マイナー系のLPがバカみたいな値段になってたり、出せば売れるような限定リリースの人気盤なんかだと査定価格をもっと上げて利益率を下げてでも確保しないと、店に買取で入ってくる機会自体がほとんど無くなってると思いますが。
査定としては、高いモノはもっと高く、安いモノは0円でも買い取らない(拒否)、みたいな感じだと思うんで、そう考えると良い時代でした。
オリジナルの見分け方
まあ、レコードも良く言えば、骨董品みたいなもんで。査定する人間は鑑定士みたいなもんで、パチモノ=ブートレグを摑まされるわけにはいかないんで、こっちも目利きを磨く以外無いと。
今みたいに、ネットに情報も無い時代だったんで、自分自身の知識が全て。自分ももちろんですけど、当時買取を受けていた中古レコード屋はそれが生命線で、高く売れるモノをしっかり把握した上で、本物を見分けて買い取る。そんな仕事でしたね。
さて。オリジナルの見分け方は、これもこれで色々なんですけど、当時は雑なブートレグも多くて、ジャケットが最初から色褪せてるような露骨な偽物も沢山出回ってたし、そんなのは見ればすぐ分かるけど、中には当然オフィシャルの再発盤だったり、精巧な偽物も存在するので、それをしっかり見分けていくのはもう経験としか言い様が無いところもあり。
ただ、当時はまだヒップホップやR&Bなんかだと、再発盤の球数も少なくて、自分は新譜のオーダーリストもチェックしていて、再発盤自体が存在するか否か、という根本的な知識も大体は頭に入っていたので、それほど難しい話ではなかったんですけど。
ただ、近場の中古レコード屋はけっこうな頻度でブートレグをオリジナル盤として買い取り、値付けして店頭に出しちゃってることも多かったですね。これは、今でもまあまあ見掛けますけど。
国内ブート業者の存在
で、こっからが非常に書きにくい話なんですけど。ブートレグにも色々あって、オリジナルに忠実なモノから、ジャケ無しだったり、勝手に編集盤みたいな形にしてたりとか。
CDから音源を起こしたモノ(レコードでのリリースが元々無いモノ)や、勝手にエディットされてるモノなんかは、今となっては逆にレア化しているものもあったりとか、むしろオリジナリティがあってイイんですが、タチが悪いのは原盤のまんまコピーしたやつですね。当時は、中古市場で2800円ぐらいの、ちょっと探せば出てくるレベルの盤すらガンガン出回ってたんで、まあカオスな状況で。
実名出してももういいと思うんですけど、REVOLUTION RECORDINGSとかね。今でこそ、版権物を取り扱ってますけど、当時は本当メチャクチャしてましたね。
余談
ですが、そんな中で、幾度となく再発がリプレスされ続けた、レコード屋としては当時だいぶ有難かったのがAROUND THE WAY”REALLY INTO YOU”。言わずもがなのGROVER WASHINGTON JR.”JUST THE TWO OF US”ネタ。
これは、編集盤みたいな形から、モノクロ/カラーも含め原盤のパクリ仕様も、当時国内にどんだけ出回ったか分からないぐらいプレスしてると思います、何度も何度も。レコード屋的にも、何回仕入れても毎回それなりに売れたし、そこでいくと日本人の”JUST THE TWO OF US”ネタ好きは、間違いないと思います。
勢い余って、同ネタの(カスの)WILL SMITH”JUST THE TWO OF US”とかまで再発してた気がするし、2010年代にはDJ KOMORIもTINA NOVAKとオフィシャル・カヴァーしてたり、日本では本当に鉄板と言っていいでしょうね。
今日は、こんなところで。