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【ライブレポ】群青の世界×MARQUEE 定期公演 青の記録 vol.4

5人組アイドルグループ・群青の世界と、「MARQUEE祭」など対バンライブを主催しているアイドル雑誌「MARQUEE」がタッグを組んで2022年の年明けから開催中の「青の記録」。
2022年4月18日(月)にSpotify O-nestで行われたライブをもってはやvol.4です。
今回はこのライブについてレポを書こうと思います。

「青の記録」、少なくともこの年末まで月に一回予定されている定期公演ではあるのですが、単なる定期公演ではありません。
来場者には「青の記録」という小冊子が配られ、そこには各回ごとにテーマを変えた群青の世界メンバーのインタビュー記事が載っています。
2月のテーマは「バレンタイン」で、2月14日にまつわるメンバーの思い出話が語られました。
3月からは月ごとにメンバーひとりひとりをフィーチャーして、他の4人から見たそのメンバーの姿が語られています。
先月3月のフィーチャーメンバーは一宮ゆいさんで、今回・4月の主役は、水野まゆさん。
小冊子の主役メンバーにはその日のライブのセットリストを決める権利も与えられ、この日は水野さん考案のセットリストでした。
悩みに悩んだ末のセットリストの1曲目にやってきたのは、フォーメーションからそれとわかる曲でした。
5人が互い違いの横二列になり、天を見上げながらイントロを待つ、もうこれは「アンノウンプラネット」しかありません。

メンバーが身に着けている衣装は、先日4月3日開催の全国ツアーファイナル公演から新調されたものです。

直近の衣装と比べると思い切ったイメチェンをしたという印象でした。
タータンチェックの配色にはグループ名にある青色を残してはいるものの、ステージだと影にまぎれて黒のチェック模様にしかみえませんし、何よりも大きな紫色のリボンや装飾が真っ先に目に入ってきます。
主張が強い紫色は、以前までの淡い色のロングワンピとは好対照な明るさを演出していました。
個人的にはツアーファイナル以来2週間とちょっとぶりに見る衣装で、その当時は少々の違和感があったものでしたが、その間重ねてきたライブ出演でメンバーにじんわりと馴染んできたのか、この日は初見で感じていた違和感はなくなっていました。

最下手側には水野さんが立っています。
照明を正面から浴びながら「こんにちは!群青の世界です!」
二言三言フロアに向かって投げかけました。

配られた「青の記録」の冊子を繰ってみると、メンバーによって水野さんの様々な顔が明らかにされています。
グループをちゃんと追うようになってからまだ数ヵ月で、それまで知ることがなかった面も見えてきました。
見る角度が変われば感じ方も変わります。
インタビューを通し、水野さんに対するイメージが少しかわったこともあるので、このタイミングでちょっとだけ深めに書いてみたいと思います。

匂いの源

グループから漂ってくる匂いというものがあります。
雰囲気や空気感などと言ってみてもいいかもしれません。
意識したり言葉に出てくるよりももっと手前にある、直感的なものです。

ライブアイドルは今や数えきれないほど活動していますが、この匂いは千差万別で、これだけ数が多くともグループごとに結構違いがあります。
そのうえあくまで直感的に感ずるものなので、深く知らずともステージをパッと見たりツイッターに流れてくる画像なんかを観ているだけでもなんとなく感じ取れます。
そのみなもとはビジュアル、衣装、音などといった、言葉にしやすいものとは別のベクトルにあり、かつグループの芯の部分を担っている気がしています。

群青の世界から香ってくるにおいには、清廉さが乗っかった爽やかさがあります。
爽やかという点では他のアイドルもままあったりするものなのですが、群青の世界はもう一つアイドルに寄りすぎていないというか、俗っぽさと一線を引いているところが大きな特徴だと思っています。
同時に鏡写しのように自らの色々な意味での汚さみたいなものも自覚させられるのですが、それくらい群青の世界のステージは非常に綺麗です。

ライブハウスよりもでっかいホールでこそこのグループは輝くのだろうなというイメージが容易に描けてしまうのは、もちろんあてがわれた曲や詞のもつ豊かな世界観もあるのですが、それだけでなくメンバーの立ち振る舞いや雰囲気とも大いにつながっています。
群青の世界は、距離感の近さで勝負するグループではありません。
曲の主人公、あるいは第三者になりきって演じる姿にはスケールの大きさを感じずにはいられませんし、塗り固められたステージはあまりにも上品で、雑多なものが入り込む隙間がありません。

他グループと比べてルールや制約が多いという運営上の性格も、このグループをさらに際立たせます。
そして、メンバーの中で特にその匂いを強く放っている人こそ、水野さんではないか。
僕はそう思っています。

水野さんは立ち姿が本当に美しいです。
姿勢も見習いたいほど真っ直ぐですし、表情はいつも変わらず穏やかで優しいです。
この日のライブ中、手を下ろすただそれだけの動作にも、すらりと伸びた指先の綺麗さが目を引きました。
何にもましてオーラがあります。
強烈に飛び出してくるわけではありませんが、円をえがくように水野さんのまわりを広がっています。
この日のO-nestには、朝から続いた雨による湿気がたまり、会場の狭さからあっという間に熱がこもった結果、蒸し風呂かと言うほど熱い空気が立ち込めていました。
もしかしたらステージ上には小さな池が出来ていたかもしれません。
凛とした水野さんの姿はしかし、混ざった空気がぐちゃぐちゃになっていく後半戦でも乱れませんでした。

ところが、です。
フロアから見えている水野さんはほんの一部分、たったのひとかけらにすぎないのかもしれないと、「青の記録」を読んで感じました。

だれでも表に立つ人は、見られている自分を意識し、それなりに自分を作ってステージにあがっているはずです。
それを承知の上ではありますが、そうとは分かっていても、青の記録でのインタビューから見えてきたのはいくばくかの意外性でした。
作っているであろう部分を差し引いてもなおギャップを感じたのです。

会場で貰える小冊子にはインタビュー内容の全てが打ち込まれているわけではなく、部分部分をかいつまんだ要約バージョンになっています。
ライブ後、改めて全文がホームぺージにアップされるのですが、気になる言葉を見つけたのはフルバージョンでした。

メンバーによって描かれる水野さん像には、育ちの良さそうな感じや、清楚感という表向きのイメージだけではない面があったのでした。
例えば意外とギャルっぽいだとか意外とがさつだとか。
事務所ではいろんなところにぶつけて絶叫し、意外とおうちは物で溢れている。

近しい距離で見続けているメンバーにとって、水野さんはそう映っているようでした。
もっとも繊細なところはやはりあるようで、「こう言ったら相手はどう思うだろうか」という想像力が高いレベルではたらくのだと、一宮さんは自らと対比させて言っていたりしたものの、頭に残るのはどうしたって意外な面のほうです。
メンバーのコメントを読み進めると、ゆったりと微笑むステージの裏では激しく感情や行動を波打たせている、そんな水野さんの姿が見えてきました。

ただ一方で4人が口を揃えていたのは、アイドルとしてなりたい像に向かっていく行動力にかんして水野さんはピカイチだということでした。
鼻で感じる匂いと同じく、アイドルから漂ってくる匂いは自然と生まれてくるものだとばかり思っていました。
もちろん、生まれつき備わったものもあるのでしょう。
いつかの水野さんのShowroom配信を観ていたら、面白くしつつもコメントをくれたファン一人一人への気配りを忘れない姿を見ました。
こうしたものは一朝一夕には得られないはずです。

ただその一方で、自らに求められていることを理解したうえで努力して作っている(この書き方だと無理しているみたいであまり響きはよくないかもしれませんが)、そういう部分も水野さんには大いにあるのだと、インタビューを読んでいて感じました。

水野さんのキャラクターは他のメンバー4人とは重ならず、独自色があります。
清楚感をどのメンバーに見るかは人それぞれでしょうが、少なくとも自分はあるところで突き出ている水野さんをみて先のように書いたわけです。

もしそれが、水野さん自身が群青の世界というグループを鳥の目で眺め、一番ベストだと思う位置を探し当ててピンを刺し、そこに向かって他と重ならないキャラクターを作り上げていったたまものだったとしたら。
計算づくだと言ってしまうのはどこかピントを外している気がしていて、水野さんはそんなあざといものよりも何度も書きますが生来のひとがらがほとんどなのだとは思います。
でも、「青の記録」を読むまでは生まれもったものがほとんどだと思っていたのが、文字を追っていくうちにその配分が変わっていきました。
求められることを自然と感じ取り、長文の病みツイートだって余裕で書けてしまうような自分を徹底的に抑えている。
我々の目に映る水野まゆという存在は、そうして固められていったのだろうということです。
間もなく20歳の節目を迎える水野さんの、底知れぬプロ意識みたいなものを垣間見ました。

盛り返す歌声

青の記録からなんとなく読み取った水野さんについて書いたところで、ここからはライブの中身に入っていきます。

主催ライブに何度も行くようになって思ったのですが、群青の世界のライブはかなり密度が高いです。
MCで無駄に時間を食うことがなく、こちらが求めているものを分かっているかのようにポンポンと曲が出てきます。
1時間もかからずに終わったこの日のライブでは、10曲も披露されました。
1時間に10曲ペースは以前の全国ツアーでもありましたが、メンバーは当たり前のように詰め込んでしまっています。
流石に1時間を全力で走り続けるのは苦しかったのか、途中全員でのユニゾンやコーラスとなったときに音の数が少なくなった体感がしたのですが、そう思うたびにすぐ誰かのソロパートが盛り返していました。

例えば工藤みかさんの、ぼやけた視界をクリアにするような鮮烈な歌声であったり、村崎ゆうなさんの広がっていく特徴的な歌声などです。
あるいはいつも細めできゃしゃに聴こえる一宮ゆいさんの歌声も、この日は喉の開きがよかったのか声量たっぷりでした。
調子の良さを伺わせます。
落ち着き始めた場を、かわるがわるメンバーのソロが浮かせていました。

ここからは短めな各論的に、いくつかの曲をピックアップしてみます。

M3. 最終章のないストーリー

「消せない過去を悔やむより」
Cメロで横田さんのソロに入るとき、2サビで手を広げて上に伸ばした腕をそのまま横田さんにむかって振り下ろす、あの一呼吸もないままなだれ込んでいくひと時がたまりません。

M4. アイ・ワナ・ビー

水野さんの「抱きしめたかった」の歌い方には力がこもっていました。
歌パートというよりもセリフに近いパートです。
というか、水野さんの歌い方がそう感じさせています。
音程から多少ずれても、感情を優先させての結果だというのが存分に伝わってきました。

ストリングスの切り裂く音が、悲痛なメンバーの表情と見事マッチしていました。
ラスサビで5人が一歩前に飛び出してくるパート、ここはちょっとのけぞってしまうくらい圧倒的でした。

M6. 僕等のスーパーノヴァ

前髪を流してセンターわけにした横田さんは、この曲あたりから泣きそうな表情をしているように見えました。
最後は、横一列のコーラスに始まる「カルミア」で終わりました。
ミラーボールが照明に照らされ、陽の光のように明るくなっています。

外では雨が坂がちな渋谷の街を駅の方向に向かって滝のように流れ落ち、あちこちのくぼみには沼が出来ていました。
湿気でいっぱいのそんな日でしたが、この1時間だけはそんなことを忘れられました。

それに加え、青の記録によりほんの少しメンバーの知られざる面を知ることが出来ました。
特典会で話しこんだり、SNSでポロっと吐き出してくれでもしないとアイドルのことは分からなかったりするのですが、青の記録はその隙間を繋いでくれます。
次回は横田ふみかさんです。
あと3人、どういう面があらわになるのか楽しみです。

◆セットリスト
M1. アンノウンプラネット
M2. Quest
M3. 最終章のないストーリー
M4. アイ・ワナ・ビー
M5. メロドラマ
M6. 僕等のスーパーノヴァ
M7. コイントス
M8. BLUE OVER
M9. 青空モーメント
M10. カルミア


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