【ライブ3本回し】1/31 Fragrant Drive 室町三井ホール&YMCAホール
2022年1月30日。
この日のFragrant Driveは、ライブが3本入っていました。
一つ目が室町三井ホールでの「POP in FESTIVAL ~PIF2022~」、二つ目がGRIT at shibuyaでの「IDOL Paradise in Shibuya Special!!」、そしてラストがYMCAホールYでの「東京アイドル劇場」です。
PIF2022の開始は11時20分で、東京アイドル劇場の終演は19時45分。
朝から晩まで出ずっぱりのスケジュールです。
ライブ時間は20分、25分、30分の計75分と、合計したらワンマンくらいのボリュームになりました。
遡ってみると、1日3本ライブは4月24日の都内、9月24日の大阪で過去あったようで、この日が現体制にとって3回目の「3本まわし」のようです。
1つ目と3つ目を観に行ったので、それぞれの雑感みたいなものを例によって書いてみようと思います。
1本目「POP in FESTIVAL ~PIF2022~」
遅めに出てきたタイムテーブルにあったのは、まさかのトップバッターでした。
3本回しの一発目ということで、浅い時間帯であろうことに疑いはなかったのですが、よもや最初とは。
会場の室町三井ホールは東京のど真ん中、日本橋エリアに位置します。
東京駅から徒歩圏内なのですが、周りは企業の本社屋など似たような見た目の高層ビルばかりなので、地図がないとたどり着ける気がしません。
麒麟の翼で中井貴一さんが倒れていたところは、日本の交通のはじまりである日本橋。
麒麟像の下です。
東京駅から会場への道中、都心環状線の下をくぐりながらこの辺なのかと思って歩いていたのですが、土地勘が無いもので、どうも微妙にずれたところを歩いていたようでした。
Fragrant Driveメンバーは会場まで迷ったそうです。
板橋加奈さん「みんなちゃんと来れましたか?大丈夫でしたか?」
(恐らく)片桐みほさん「来れてるからここに居るんだけどね」
MCではこんなやりとりをしつつ、「迷わなかったですか?」と投げかけられてもフロアの反応がさほどだったのは、アイドルファンの方の多くにとっては行き慣れた場所だったからでしょう。
この三井ホールではワンマンライブや今回のようなフェスイベント等、アイドルのライブイベントがしょっちゅう組まれています。
三井ホールと名の付く会場は、東京駅付近に紛らわしいことに3つもあります。
将門塚の近くに立つ「大手町三井ホール」や、「日本橋三井ホール」というのが室町のホールから遠からずなところに位置していて、会場を間違えたというツイートも多く目にします。
ホールはオープンから2年足らずで新しく、スタイリッシュに「コレド室町」に溶け込んでいます。
記念すべきワンマンライブの場所に選ばれているのは、ちょうどいいキャパというのもさることながら、そこにあるだけで特別感を演出できる立地の良さや、会場の洗練されたつくりなど外側の要素もあるのかもしれません。
広めのステージには黒々としたアンプやら機材やらが並んでいて、ブロック状に組まれた座席の配置は両端のスペースをかなり余らせています。
やや前寄りの真ん中くらいから見る景色には、ライブハウス感がありました。
2022年何本目かのライブから、Fragrant Driveはグループ名にちなみ「香り」をメンバーカラーに絡めた自己紹介をしています。
それまでは非公式というか認められていなかったようなのですが、2021年末に地上波番組の「寺西優真のMUSIC JUMP」に出演した時でした。
せっかくのテレビ出演だからと、メンバーはここで初めて「香り付き」の自己紹介をしました。
地上波にかこつけて名乗ってしまおうということでの自己紹介でしたが、年始に入り、願い叶って定着。
なんだったっけ?と思い出す一瞬もあったりしますが、じきに違和感もなくなるでしょう。
放送分ではかなりカットになってしまったそうですが、放送しきれなかった部分が下の動画に残されています。
ライブの中身に入っていきます。
この日一本目のセットリストはこうでした。
胸の奥のVermillion
恋花
ふたりのストーリー
Everlasting First Kiss
過去のライブでも何度か全く同じセットリストに出くわしました。
「胸の奥のVermillion」でグループのカラーを印象付け、MCを挟み三田のえさんの曲振りからの「恋花」でトーンダウンしつつ聴かせて振り付けの動静を魅せ、現体制で唯一のオリジナル曲「ふたりのストーリー」で今のFrgrant Driveを示しつつポップに振り切りそのまま「Everlasting First Kiss」で弾けるという流れは「外向け」の定番。
20分の中にFragrant Driveらしさが詰め込まれており、グループのことを全く知らない人も多く集まるフェス系のイベント向きです。
SEとともにメンバーが登場し、「胸の奥のVermillion」のイントロが鳴り出すタイミングで、会場が真っ赤に染まるのもおなじみとなっています。
ステージ後ろ、足元に横たわったバーライトのような照明が、この日は会場を赤色に燃やしました。
新しい会場なだけに照明も曇りなく明るめです。
たしか「恋花」では黄色の明かりになっていました。
「ふっと風に乗る薫りが 過ぎ去りし日々を呼び起こして」
「胸の奥のVermillion」の1Aを歌うとき、辻梨央さんは前のみを見ています。
「そっと差しのべる手のひら 温もりを感じて涙するの」
続くは伊原佳奈美さん。
伊原さんも歌い始めからしばらくは正面を向いたままなのですが、パートを歌い終えるタイミングで横を向きます。
この時初めて横顔を見るわけなのですが、聴こえてくる音と目の前の光景との間にほんの少しラグがあるような感じがしました。
ステージ上のスピーカーからは間違いなくリアルタイムで音が聴こえるのですが、残響があるようです。
伊原さんがマイクから口を離すのが見えても、なお音が止みません。
振り返ってみるとそのタネが分かるような気がします。
後ろが途轍もなく広いです。
会場のつくりは、縦長の典型的な長方形。
横にも幅はあるのですが、奥行きはその比ではありません。
PA席があんなに遠いとは思いませんでした。
ステージとフロアとでやり取りする空間はライブハウスくらいの距離感なのですが、音は奥行きのある会場のあちこちを伝った後にようやくこちらまで届きます。
過度にエコーがかかっていた訳でもないのですが、ホールという反響のしやすさが手伝って遠近を感じる聴こえ方になっていたようでした。
結果としてそうした音の跳ね返りは、メンバーの歌声に厚みを生んでいました。
音響の良さはメンバー自身も感じていたようです。
歌いやすそうな姿が印象的でした。
2本目「IDOL Paradise in Shibuya Special!!」
「PIF2022」のタイテが耐えてくれるだろうと考えて(結果耐えてくれませんでした)行きませんでしたが、セットリストだけ。
胸の奥のVermillion
眠れる姫にくちづけを
Melt
Magnet
Want Your Love
この並びを見てしまうと、行けば良かったと後悔しています。
3本目「東京アイドル劇場」
最後は御茶ノ水にあるYMCAホールYでのライブです。
1本目からは髪型を変えてきたメンバーも居ました。
◆セットリスト
ガルスピ
カウントダウン
Snow Dust
fancy drop love
Evergreen
Stay Gold
年始から、Fragrant Driveは自己紹介のバリエーションだけでなく現体制で披露できる曲を2曲増やしました。
「Stay Gold」(Flower Notes)と「カウントダウン」(Clef Leaf)です。
どちらも過去所属していたレーベル「Label The Garden」(LTG)曲。
個人的にはFragrant Driveを通して初めて知る曲でした。
せっかくなので、今回はその2曲から「Stay Gold」、いわゆるひとつの「ステゴ」のほうを軸に書いてみます。
曲の構成としては、ポップスの王道とも言えそうなパターンです。
イントロに始まり、AメロBメロサビを2回繰り返し、落ちサビを経てクライマックスへ。
ABメロも1番と2番とでメロディーは同じですし、展開が変わるわけではありません。
ところが、歌詞に注目してみると劇的な違いをみることができます。
例えば。
「どんな困難(災難)があろうと」と前置きされたBメロは、1番では「立ち向かっていける」。
未来のことを語っているのが、2番の全く同じパートにさしかかると「立ち向かってこれた」となり、間奏を境とした時間の経過が読み取れます。
乗り越えていけるだろうと展望していた未来は、2番では過去になり背中に感じる。
サビでは、うつろい易く儚いものだった「花の実」は、2番では黄金色という共通点で「あの暁」へと受け継がれますが、こちらは「うつろい難き」ものに。
そしてラスサビ。
1サビにあった「花の実」は、ここでも「はなのみ」として出てきますが、今度は「華の身」とスペルアウトされています。
込められた意味合いは、うつろい難き永遠の輝き。
特筆すべきは、似たような語をスライドさせて意味のちがいを作り出しているということ。
音としては同じだったりそう遠くない単語をちりばめながら、1番と2番とでは違う解釈を誘っています。
耳に届いてくる音だけでは完全には理解できません。
歌詞を眺めてようやくわかることです。
一見同じだが違う。
なんだか鏡に映った像と実体との関係のようです。
ここに、この曲の味わいが隠されている気がしています。
二番は決して一番の繰り返しではなく、戻ることのないストーリーの中にあると、「Stay Gold」はアンダーラインしてくれています。
もっとも、LTG曲では「ステゴ」以外の歌詞にも結構この傾向があり、卑近なところでは「かな(叶、適)わない」「な(泣、哭)く」などと同音異義語の使い分けが多く見られます。
どちらもおおまかな意味合いとしては同じですし、そもそも発音が同じなわけです。
けれども絶対に同じものではない。
あれやこれやと考えを巡らせながら聴くのも楽しいかと思います。
またこの「Stay Gold」。
練られた歌詞の精密さに加えてもう一つ大きな特徴があります。
それが、ダンスの激しさです。
その場で目にしてみると、実感します。
「カウントダウン」そうなのもですが、振り付けの手数が多く、動きのせわしなさが目を引きます。
一番目に留まったのが、足の動きでした。
軽くけり出すようにステップしたり、クロスさせたり、大きいだけでなくなんとも細かい。
手や腕の動きを似せただけでなんとなく「フリコピ」できたような気になってしまう曲もある一方、「Stay Gold」は上半身の動きをマスターしたとしても、まだ振り付けの半分くらいしか入っていないのと同じでしょう。
その上半身ですら素人にはとても難しいのですが。
メンバーは振り入れを一旦挫折したそうです。
「Stay Gold」は、5曲目「Evergreen」終りからすぐにそのイントロが流れ始めました。
アイドル劇場での6曲目。
この日最後の曲です。
スタミナを持っていかれるであろうこの曲を、あえて自らに縛りをつけるかのように、最後の最後、しかも前の曲から間を開けずノンストップで持ってきたのでした。
3本目の衣装は当日の朝に決まったというLTG時代の衣装。
1,2本目で着ていた、真っ赤な色合いをした衣装とは対照的に、色は淡めで「か弱さ」とか「可愛らしさ」のほうに寄っています。
速いターンの度に乱れ、遠心力にやられて端っこの繊維が飛んでいってしまいそうなこの衣装は、がっつり踊る「Stay Gold」とは一見不釣合いなのですが、先に書いた1番→2番の対照的な歌詞を思うと案外似合っている気がします。
ダンスの「強さ」と衣装の「脆さ」は、相反しつつ歌詞の中に同居する「うつろい易き」「うつろい難き」を図らずも体現しているのかもしれません。
特に剛柔の振り幅が大きいメンバーが辻梨央さんだと思っています。
鋭い目つきで頼もしすぎるほどの声量と音程を出してくる辻さんも、パープルの衣装を着ると、言い方が正しいのかわかりませんが途端に華奢な感じが引き立ちます。
かといって根っこの強い部分が失われているわけもなく、間奏での上手からのソロダンスなどダイナミックさは残ります。
「カッコよさのなかに可愛さがある」
ファンの方のコメントの受け売りですが、まさにその言葉通りだと思います。
これは何ヵ月か前のライブ映像ですが、「恋花」での真正面を見ながら歌う姿と、歌い終わったあとの対照的な笑顔に端的にそれが出ています。
YMCAホールでのライブの話に戻ります。
落ちサビです。
歌うのは片桐みほさんと三田のえさんで、まず片桐さんが歌った後、三田さんがこう続きます。
「ああ 人の輝きは 心のどこかで 薫り続くだろう」
ざわざわと、ここで周りから音が聴こえ始めます。
被ってくるコーラスはやけに大きく聴こえ、片桐さんの時には静かだった伴奏の音も心なしか強めに鳴り出します。
音が止んでソロが浮き彫りになる、というのがよくある落ちサビのパターンなはずなのですが、このパートではむしろ主役をかき消さんばかりに伴奏やコーラスが主張してきます。
三田さんの歌声は周囲の音と拮抗するわけですが、詰まるような独特の歌い方もあり、ごみごみとした中からもがきながら抜け出そうとするような意志をここに感じました。
はじめの「ああ」と歌いだすところからエモーショナルに聴こえてきます。
何の障害もないところで難なく出されていたらここまで響いてきたかどうか。
他の4人は三田さんの周りを囲み、開きかけている花かのように腕を広げながら盛り立てます。
「胸の奥のVermillion」でも「恋花」でも、同じ動きではないものの似たような振り付けを目にしました。
薫りをまとい、花をつけるragrant Driveの象徴的なワンシーンでした。
披露された他の曲についても、各論的に書いてみます。
・fancy drop love
曲名通りファンシーなこの曲とLTG衣装は溶け込みます。
上手側の板橋さんと伊原さんのやりとりで伊原さんがニコニコしたり、曲終わりでの辻さんと板橋さんのがふざけ合ったり。
メンバー間の掛け合いの多さは注目です。
・Snow Dust
落ちサビに向かう前、ブリッジでの歌い方は5人それぞれです。
センターの伊原さんを頂点として袖に向かい広がるような三角形のフォーメーションで、皆が外側を向いています。
下手端だと片桐みほさんが大きな身振りをつけながら歌い、かたや上手に目を移すと辻さんはフレーズの切れ目ごとにマイクを離しながら、アーティスティックな歌い方です。
真ん中付近に固まるメンバーを見ると、両端の二人と比較して動きは少なく、静かに歌詞の感情を表現しています。
・Evergreen
片桐さんがステージ中央から前に向かってステップしながら歌い出すとき、聞こえてくる歌声がいつもと違ったような気がしました。
だからどうというのではないのですが、この違和感を確かめるために次は注意して聴いてみたいところです。
この日のアイドル劇場では披露して間もない曲が2曲もあったため、やり慣れたこの曲を聴くと安心します。
一通り所感を書いたところで、この日一日のセットリストを振り返ってみます。
胸の奥のVermillion(☆)
恋花
ふたりのストーリー
Everlasting First Kiss
胸の奥のVermillion(☆)
眠れる姫にくちづけを
Melt
Magnet
Want Your Love
ガルスピ
カウントダウン
Snow Dust
fancy drop love
Evergreen
Stay Gold
全15曲。
ほぼ毎回披露される「胸の奥のVermillion」以外は一切の曲かぶりがありませんでした。
アイドル劇場に至ってはバーミリオンすら外しています。
冒頭に「ワンマンライブに匹敵するライブ時間」だと書きましたが、被りなしと言っていいセットリストはもはやワンマンライブそのものでした。
会場ごとの変化を楽しみつつ、変わらぬ素晴らしいライブ。
披露から日が浅い「Stay Gold」も、踊りながらよくこれだけ声が出るなと思います。
どのタイミングで行っても楽しませてくれるFragrant Drive、まだまだたくさんの人に観られるべきグループですし、観られないとおかしいです。
見出し画像:東京アイドル劇場公式ツイッターアカウント画像を改変