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【ライブレポ】Peel the Apple 秋もアツいぜ!炎の全国ツアー2022 静岡公演

こうしてハマっていったという過程を自覚することは少ないのですが、この日は珍しくその入口に立った実感がありました。

2022年11月3日の静岡は暖かく、少し歩くだけで汗ばんでくるくらいの陽気でした。
風花が舞うだけで大騒ぎするくらい温暖な静岡らしい天気と言えるかもしれません。
そんな秋晴れのこの日、7人組アイドルグループ・Peel the Apple (略称ぴるあぽ)が静岡駅からすぐの「LIVE ROXY SHIZUOKA」にて全国ツアーの静岡公演を開催しました。

自分にとって初めてのぴるあぽは、偶然の産物ともいうべききっかけからでした。
元々、市内の別会場でのライブの予定があり、そこだけに行く予定だったのですが、たまたま見かけた告知で同じ日にぴるあぽもツアーが入っていると知り、しかもお互いに時間が被っていませんでした。
チケットを取った時点では1曲も知らなかったのですが、静岡でアイドルが見られるというのもそうなく、せっかくすぐ近くまで行ったのなら見ようかということで買ったのでした。
さらに言えば、元々決まっていた別ライブも最初から予定されていたものではなく、コロナで延期となった末の振り替え公演でした。
振り替えがなければこの日静岡に行くという選択はしなかったはずで、当然ぴるあぽを見る機会もなかったはずです。
棚ぼたというか全てが上手いこと組み合わさってくれました。
加えて、静岡は長らくライブハウス不毛の地でした。
県内のライブハウスは浜松の方が圧倒的に強く、数年前であればツアー静岡公演があったとしても浜松窓枠など市内から離れた会場しかなかったはずです。
となると回すのは不可能でした。
「ROXY」が出来たおかげで来てくれたようなもので、時代も味方してくれました。
ライブ後に再び、この日見られたことの喜びを噛みしめることになります。


ライブに早速入っていくと、2020年にニジマスオーディションのファイナリストを中心に結成されたぴるあぽは、意外とウェルカムでした。
出るフェスの規模や出順などからも、数あるライブアイドルの中でも人気なグループだということは知っていました。
先日解散したニジマスの妹的グループで、地盤は十分に固まっています。
実際、縦長のフロアのROXYは後ろまでぎっしりと埋まっていました。
成長しきったグループに飛び込んでいくときは、周りが皆通い慣れた人達のように思え、どうも身体が縮こまってしまいます。
登場SEでは、裏拍や三々七拍子など様々なリズムのクラップをフロアの誰もが狂いなく叩いてることに戸惑い、場違いな感じを覚えてもいたのですが、それは最初だけでした。

何がその垣根を取っ払ってくれたかというと、まずひとつにダンスだと思っています。
どの曲の振り付けも、サビを中心にフリコピしがいがあるのです。
簡単すぎるわけではないけれども呆気にとられるほど難しくもなく、しかし完コピは難しいというくらいの絶妙な難易度。
サビの振り付けは1度見れば大体ついていけるはずです。
集中していれば1番後半フレーズや2番になればなんとなくでも波には置いていかれません。
ステージとリンクした動きをしているだけで、余計なことをわすれて楽しくなっていくのです。
特に山崎玲奈さんの動きは分かりやすくて、後半は山崎さんを目の端に捉えながら振り付けを真似していました。
文字通り幸せになれる「Happyyyy Pop!」では鼓笛隊のように手元でリズムを叩き、「さんきゅー!」ではありがとうと手を差し伸べます。本編ラスト、佐野心音さんの煽りが響く「Va! Vamos!」は後述する「はじまりのはじまり」に似て右、左と腕をしならせるという至極分かりやすい振り付けですが、曲調もあってなんだか集大成の雰囲気が広がっていました。

ただ、メンバーはフリコピを過度に煽るわけでもなく、フロア全員が揃って同じ動きをしているという感じでもありませんでした。
女性も多い場内にはリズムに合わせてサイリウムを上下させている方や、目の前に推しが来たときにひたすら手を振っている方など、様々な受け止め方がありました。
人気ゆえに裾野が広いというのもあるのでしょう。
ライブアイドルが陥りがちな内輪だけで盛り上がっている感じがなく、遠慮なんてものはどこかに行っていました。
初めてのグループなのに初めての気がしなかったのは久々だったように思います。
数ある楽しみ方の中にフリコピがあり、ライブハウスで呼吸しながら自らに合う波長を見つけていくという、ライブの理想的な姿を見たような気がします。
訓練したかのように統率された現場も綺麗ですが、楽しみ方の選択肢をこちらに残してくれているおおらかさは、まだ何もしらない自分にとってはありがたかったです。

音源を聴く限りはおとなしく聞こえた「はじまりのはじまり」は、取り立てて印象深かったです。
生で観るまでまさかこんなに跳ねる曲とは思いませんでした。
印象が音源をはるかに上回ったということもさることながら、サビでのメンバーの動きが跳ねていました。
振り付けはきわめてシンプルで、人差し指を右、左にやるだけ。
メンバーが跳ねるのは左右に動かす間です。
たったこれだけの振り付けなのに、フロアは揺れてなぜか体温が上がっていくのです。
やっているのは単純な仕掛けなのに、それだけで明らかに血の巡りが良くなっていくのは不思議としか言いようがありませんでした。

同時に、予習のために参考にしていたアーカイブ映像の限界も見えたような気がしました。
ライブの模様を収めるカメラは、引いたカメラで全体を映すか、アップにして1人の顔やマイクまわりに寄った画を映すかという両極端な2パターンが主だと思います。
加えてぴるあぽくらい大所帯のグループだと、そう長いこと1人だけフォーカスされることがありません。
生で誰かに目線を当て、振り付けの細かく微妙に変化する動きを見てしまうと、これは映像でなく現場でないと感じ取れないと思ってしまいます。
テンポがちょうどよくリズムに乗りやすい曲揃いだからというところに安住せず、「あとはフロアで盛り上がってね」と細かいところを捨てるようなこともせず、自力で組み立てようというメンバーの姿勢が透けて見えました。

少なくともこうした楽しさを知ってしまうと、今回の一度きりで終わりにしてしまうのはもったいないと思ってしまいます。
はじまりこそ偶然でしたし、言ってしまえばついでのようなところから始まったぴるあぽ現場デビューでしたが、あまり視界が良くなかったことへのリベンジも含めて既にもう一回行きたくなっています。
こうしてハマっていくのでしょう。
8箇所を巡ったツアーは、ファイナルまであと8公演も残されています。
どこか行けるところはないかと考え始めていました。
いつもであれば自覚無しのまま真っ逆さまに落ちていくのですが、どういうわけかぴるあぽに関してはかなり自覚的でした。

音を聴いているだけでは気付きませんでしたが、7人の歌声にも特徴がありました。
大きい目でじっと見つめる春海りおさんは見た目に違わず可愛い声でした。
ソロやメインパートが多めな4人について表情などとともに取り上げると、自分がぴるあぽを知ったきっかけの黒嵜菜々子さんは、画像とかで見るクールな表情そのままに、「夏、恋はじめます」などでの低めの音が良く伸びてきました。
自撮りや他撮りでは雑誌グラビアよろしくすました顔ばかりしちゃうと言っていましたが、ライブ中もそうした表情は多かったです。
だからこそ笑顔になると安心します。
メンバーカラーの「ミントグリーン」がぴったりな、スッと心地いい歌声の持ち主が松村美月さんでした。
なんてこった!」の長めのソロは、知性を感じさせるような落ち着きがあります。
息するように随所でウインクする佐野心音さんは、眉を下げて筋肉の緊張が伝わってくるような歌い方です。
演歌にも通じる、こねるようなスタイルはポップスを歌うライブアイドル、とくに圧倒的なビジュアルのぴるあぽの中だと一見変則的に思えるのですが、その佐野さんが「No.1歌唱力」として歌割の柱を担っているから色がついてただ可愛いだけのグループになっていないのかなと思います。
そして浅原凛さん。
出身が静岡で、初の凱旋公演でした。
現在センターということになっていますが、初見でもうなづけるほどその位置があっていました。真ん中にまるで引き寄せられたかのようにやってきて、上の4人と比べて素直な声を出していました。
~Don’t Peel the Apple~」で裏返りそうなほどの大声を出し、「Va!Vamos!」のラストではセンターで決めポーズをしていたでしょうか。
ぴるあぽ現場にきてまさか抱くとは思わなかった”かっこいい”という感想が出てきました。

全ての曲を終え、記念撮影をした後、メンバーが浅原さんのほうに向かって「凱旋おめでとー!」と口々に声をかけていました。その中に1人、感慨深げな笑顔でフロアを見つめている人がいました。
小田垣有咲さんでした。
ライブに先だってある程度頭に入れたとはいえ、メンバーの顔と名前がまだ瞬時に判別出来ない自分は最初、こちらに笑顔を向けている人が祝福の真ん中にいる浅原さんかと勘違いしていたのですが、そうではありませんでした。
主役級の笑顔だった小田垣さんが印象に残っています。

だんだんライブ空間に慣れてきて周りが見えるようになったころ、ステージの後ろにあるツアーロゴに目が行きました。
真っ赤なリンゴの下側の皮が波線状に剥がれ、その下には銀のシャーシっぽい模様が着いていました。
上側はヘッドランプらしく黄色い丸があしらわれています。
どうやら列車を模しているようでした。
普通ならツアー8本目はファイナルになっていたっておかしくない本数のはずです。
メンバー一人一人のキャラクターが歌詞になって1人ずつフィーチャーされる、ももクロの「Z伝説」風の「We are … hungry 戦士」は、これまでツアー各地で1人ずつ振り付けやリアクションをレクチャーし、今回・静岡の浅原さんで全員分が終わったようです。
新曲「リーリーGO!」も、何回も披露しているからか慣れた様子で、序盤にメドレーを披露するという本ツアー特有の形式もすっかり馴染んでいるように見えました。
ここからさらに同じ数だけツアーがあるのかと思うと途方もなく長く感じます。
ツアーの電車ロゴが、快速で走り抜ける急行というよりも各駅停車の電車のように見えてきました。


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