【ライブレポ】Fragrant Drive & PASTELL フリーライブ(20220205)
2月5日(土)、5人組アイドルグループ・Fragrant Driveと3人組アイドルグループ・PASTELLが合同でフリーライブを開催しました。
会場は、池袋リヴォイス。
数日前に告知された急遽のイベントでしたが、PASTELLは25分、Fragrant Driveは50分というかなり長めの持ち時間で、同じ事務所の先輩後輩グループ同士でのツーマンライブのような充実ぶりでした。
池袋リヴォイス、フロアは幅がステージと同じくらいでさほど広くはないのですが、奥行きがそこそこあり、周囲は黒に覆われているいかにもなライブハウスです。
◆PASTELL
まずはPASTELLから。
順番が怪しいですが、披露された曲は以下の通りです。
ゼンマイ仕掛けのロマンス
Seed of Departure
ドリームパレット
You
Evergreen
PASTELLを観るのは昨2021年クリスマスの「Merry Merry Idols」という仙台でのイベント以来で、その時はオープニングアクトにも関わらずマサイを大量発生させるなど、がっちりとフロアを掴んでいた印象がありました。
ステージデビューから半年ちょっとのPASTELL。
持ち曲はまだ少ないです。
この日のセットリストに入ったオリジナル曲は「ドリームパレット」のみで、残りは「Label The Garden」(LTG)の遺産を引き継いで組まれていました。
同様にLTG曲の継承をしているお姉さんグループ・Fragrant Driveとも曲が被ることが多いのですが、PASTELLメンバーの目を見張るべきところは、同じ曲であってもFragrant Driveとは違う雰囲気を出せてしまうところではないでしょうか。
「Evergreen」という曲を例にとってみます。
Fragrant Driveの場合、この曲をわりと楽しむ方に振り切って使っているイメージがあります。
対バンライブでも単独ライブでも、出番は後半のほうです。
「胸の奥のVermillion」や「恋花」などで下地を作った上に「フリコピ」のしやすくクラップパートがいくつもある「Evergreen」が乗っかると、「楽しかった」「盛り上がったね」という感覚が残りながらフロアを後にすることになります。
Fragrant Driveらしい、魅せる系の曲を中盤までで仕掛けているからこそ、ここではっちゃけることができている。
実際にはそうスパっと言い切れるかというと微妙なところではありますが、Fragrant Driveの「エバグリ」にはそんなイメージがあります。
それに対しPASTELL。
PASTELLのパフォーマンスから受ける印象はもう一つ違います。
年数の浅さからくる、活発で元気溢れる雰囲気もありながら、他方では若干の切なさみたいなものもついてきているような気がするのです。
両グループの振り付けや所作から違いを見てみます。
大体の振り付けは同じだと思うのですが、歌うときの身振りといった個人の裁量が大きいパートとなると両グループで色が違います。
「蒼く高い空の下ですらも ステージに変えてゆく」
1番Bメロ、Fragrant Driveの板橋加奈さんは何でもない地に魔法をかけるかのように指をクルクルさせるのですが、PASTELLメンバーが歌うときはそんな動作もなく控えめですし、振り付けそのものも違うようです。
「黒く白い虫のように どちらともつかずあるものは」
2番Aメロ冒頭、Fragrant Driveの辻梨央さんはコミカルな動きをつけながら、上手から中央に向かって歩いていくのですが、PASTELLの七川さんが歌うときは上手で立ち止まったままですし、フォーメーションも替わりません。
5人で入れ替わり立ち替わり歌割を分担するFragrant Driveに対し、PASTELLは3人組。
人数が少ないだけに自然と一人当たりのパートが重めになります。
Fragrant Driveが2人で歌い継ぐところを、PASTELLは一人で歌い切ってしまいます。
だからなのでしょうか。
与えられた長めの時間を使い、じっくりと歌詞を伝えようという意識が透いて見える様ですし、こちらとしても落ち着いて聴こうと姿勢を正します。
「お願いどうか この夢よ叶って」
「Evergreen」が終わってから頭に響くのは、1番Bメロの歌詞にある祈りにも聴こえるメッセージでした。
Fragrant Driveの「Evergreen」も良いがPASTELLの「エバグリ」もいい。
同じLTG曲でも、PASTELLのパフォーマンスはFragrant Driveのコピーではありません。
PASTELLにしか作れないものです。
めっきりFragrant Driveで聴く機会が減りましたが、Shine Fine Movementからの「You」もこれと似たようなところがあります。
「あなただけを あなただけを あなただけを 好きでいるの」
サビのこのフレーズも強いのですが、1番Aメロ、冒頭でハスキーがかった千代田さんが語りかけるように歌いだす下のパートのほうが印象的です。
「斜め下つないだ手だけが 世界のすべてのように思えてきた放課後に」
こうして書き並べてしまうと、やけに落ち着いていたグループなんだなというイメージになってしまいそうなのですが、かといってフレッシュさが失われているのかというと全くもってそういうわけではありません。
「ドリームパレット」「Seed of Deaparture」といった曲になると、今のPASTELLでしか出せないような新鮮な風が吹いてきます。
同級生トリオのPASTELLメンバー。
つい一週間前に、唯一の早生まれである千代田流季さんが誕生日を迎え、全員が19歳で並びました。
成人を前にしたこの年の抱負は「面白くなりたい」とのことですが、これはどうやら七川叶憂さんの19歳の抱負と同じとのことです。
個人単位だけでなくグループとしてもウケがほしいようで、漫才やらコントやらと話が膨らんでいましたが、もともと仲良し3人組のところからグループが組まれただけに、変に気合を入れなくとも3人の素のやり取りだけで十分面白いです。
◆Fragrant Drive
赤で染まった中に黒が紛れ込んだ通常衣装。
黒い部分がライブハウスの環境色に同化したように溶け込み、一方で「進出色」である赤色は立体感をもって浮かび上がってきます。
しなやかな腕の振りやターンは、ステージ後ろや天井に括りつけられた照明の光を散乱させていました。
フロアからステージ壇上を眺めたとき、鋭い視線を飛ばしてくるメンバーと目が合うと、Fragrant Driveのライブはこの場でしか得ることの出来ない「生もの」だなと強く感じます。
◆「Growing Up」の盛り上がり
この日のライブは、ラスト10曲目に披露された「Growing Up」から振り返ってみようかと思います。
この曲には、「あの風が運ぶ」種に、花をつけ実を結ぶ未来を託すような言葉が織り込まれています。
サビには、「Growing Up! Growing Up!」と腕を回してジャンプしたり、拳を上げ下げする振り付けがあてがわれています。
拳を下げる動作に象徴される、「頭でわかっているつもりでいるのに できないのはなんでだろう」といった落ちてしまう心情を認めつつも、歌詞に映るほとんどは前向きな気持ち。
目線は自然と上に上がります。
50分という長めのライブ時間で徐々に暖められた会場の熱は、この「Growing Up」で見事にピークに達しました。
一気に沸騰させるのではなくじわじわと熱をため込んだ末の盛り上がり。
辻梨央さんはフレーズの語尾を上げるように歌っていました。
腕を振り回す振り付けでは、ステージとフロアとの温度は同じに感じました。
「良かった」しか出てこない、カタルシスにも似たスカッと感を生んでいたように思います。
ですが、「Growing Up」での盛り上がりを思えば思うほど、そこに至るまでのステージ作りも強く意識します。
9曲目までに種を蒔き、じっくり水をやったからこそ輝いた「Growing Up」でした。
ここからは1曲目に戻り、メンバーについてふれつつセットリストを振り返ってみようかと思います。
◆1~9曲目
1曲目「胸の奥のVermillion」から際立っているのが、片桐みほさんの歌う姿勢です。
ここぞという場面では斜め上を向きながら歌い、マイクの先っぽは天井を向きます。
首を傾けたままフロアを見てくるわけですが、この日の会場はステージから見下ろす角度がついてることもあり、視線は痛烈です。
「髪を振り乱し...」
昨年後半からレギュラー出演している「ガルポライブ」のとある回のライブレポでは、片桐さんのパフォーマンスはこう評されていました。
髪も短め(最近は編み込みを入れられるほどまで伸びてきたそうですが)なのに、本当にそんな崩れるほど暴れるの?と思ってしまいそうですが、これは誇張なくその通りなのです。
「バーミリオン」から早くも、気付いたら乱れてきています。
この日特に歌声が聴き取りやすかった伊原佳奈美さん。
ソロパートへの入り方が上手いです。
いわゆる合流とでもいうのでしょうか。
メンバーの中では身長が低めで、MCではそのことに触れられてもいましたが、前の人のパートを邪魔せず、さりげなくセンターに回りこんでマイクを取っている姿は流石です。
かと思えば、この日は見られませんでしたが直前にロングの髪をかきあげる仕草で主張してくることもあります。
◆6曲目「Want Your Love」
サビでは指をピストルの形に曲げたままで、フロアとステージとでここでは指を指し合う、いわゆる「レス曲」。
立ち位置が目の前の人とかぶっていてもレスをくれるのが、板橋加奈さん。
板橋さんについては、ちょっとライブからは脱線した話をします。
いつか別の記事で書こうかなと思うので、ここでは軽く触れるにとどめますが、板橋さんは言葉にする能力に長けているなと感じます。
これは、昨今よく見かける「言語化」とか「語彙力」だとかとも違います。
そんな小難しいものではなく、もっとシンプル。
そっと言葉を添えるようなイメージです。
むしろ個人的には、それっぽい言葉をこねくりまわして理屈ぶるのを「言語化」とはどうしても思えず、むしろちょっとした、けれども大事な言葉をポンと乗っけられることこそが「言語化」の正体ではないかと思うのです。
板橋さんの添える言葉には優しさがあり、見習うべきところが多いと感じています。
ライブに戻ります。
「一緒にー!」
多分この曲だと思うのですが、辻さんが2番サビ前を歌い終わるか終わらないかの内に、板橋さんがこう煽りました。
サビでのフリコピを、歌声に被せて促してきたのでした。
走り気味の入り方です。
今思えばこのあたりから、クライマックスへの布石が打たれたような気がします。
この日一番の意外性は、8曲目「℃repuscolo」でした。
綺星★フィオレナードの曲のカバーですが、ある時からなかなか披露されず。
すっかり頭から抜け落ちていました。
ピアノのイントロを聴いても、何の曲だったかと理解するまで時間がかかりました。
照明は黄昏=crepuscoloを思わせるオレンジ色となり、夕陽に照らされた辻梨央さんが息を多めに歌いだします。
落ちサビでは、マイクを持つ指を楽器のピストンバルブを押さえるかのように小刻みに動かしながら歌う板橋さんの姿がありました。
曲が止み、暗がりの中に次のフォーメーションへと向かった板橋さんが告げたのは「Stay Gold」。
この間現体制でお披露目されたばかりです。
1週間ぶりに聴くと、三田のえさんの落ちサビは前回よりもボリュームは増していました。
拮抗していると以前書いた伴奏を、跳ね返しています。
これらの過程を経ての「Growing Up」でした。
「こうしたいっていうのがうまくはまった」
片桐さんはこう振り返っています。
10曲を積み重ねるなかで、メンバーが見せたい姿、聴かせたい音がはまり、その日限りの素晴らしいライブが出来上がったのでした。
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