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【ライブレポ】群青の世界 全国ツアー「High five」大阪公演

吹く風が暖かく感じるのは久々でした。
雨は降っていたものの寒さがなくむしろ心地のいい空気は、季節はもうすっかり春なのだと教えてくれます。

3月26日(土)、5人組アイドルグループ・群青の世界がOSAKA MUSEにて全国ツアー「High five」大阪公演を開催しました。

2月から始まった全国ツアーも、これで5公演目。
地方公演はこの大阪でラストとなり、4月3日のラスト東京公演を残すのみです。
この日は遠征してきた方々だけでなく関西近郊から来られる方もやはり多いようで、待ち時間には彼らの主現場であろう在阪アイドルの名前がちらほらと聞こえてきました。
開演時間となり鳴らされた拍手の大きさは、グループとして数ヶ月ぶりの大阪入りを心待ちにした期待の大きさといってよかったと思います。

ここからライブの内容に入っていきますが、細部の記録というより全編通して浮かんできた印象が主になります。
もっとも、いつも書く文章もこんな調子でレポの体裁を成していないのですが。

洗い流されるライブ

空色やエメラルドグリーン、深みのある群青色など、青から連想される様々な色の照明が光る空間に包まれると、流れていく言葉だけでなくダンスや動きまでも何かを語り掛けてくるように感じます。

動いていくステージを追っているときの感覚は、何と言ったらいいのでしょうか。
詞を読んでいるような、次々と展開される物語を観ているような...
汚いものが洗い流される様な感覚もあります。
昨2021年12月に開催された3周年ライブでは、会場の荘厳さもありコンサートホールでオーケストラ演奏を聴いているかのような緊張感を覚えていました。

この日のライブはアンコールなしのちょうど1時間で終わりました。
フルコーラス12曲が1時間で収まってしまったのは、出来る限りMCなどパフォーマンス外の時間を削ったからだと思います。
群青の世界というグループには、決めごとやルールが多いらしく、MCの流れは形式的かつ短めです。
パッと終わるトークは会場を冷やさず、醸成された空気をそのままに保存して次の曲に繋げていました。

こう大層に書いてはいますが、当のメンバーにはそこまで気負っているような雰囲気がなく、それもまた素晴らしいです。
あくまで気楽にライブを楽しませてもらっています。

◆セットリスト
(ファンの方のツイートを勝手に参照しています)
1.アンノウンプラネット
2.最終章のないストーリー
3.Nonstop
4.ロールプレイ
MC
5.メロドラマ
6.真夏のヘリオス
7.青い光
8.COLOR
MC
9.夢を語って生きていくの
10.僕等のスーパーノヴァ
11.カルミア
12.However long

曲目は、MCを挟んで四曲ずつ綺麗に三等分されています。
序盤、中盤、終盤。
それぞれのブロックで大きな一つのテーマを作っていたような気がしました。
いや、一曲ずつ取り出して比べてみると実はそこまで共通点があるわけでもないのですが、ライブ空間の真ん中に立ってみると、なぜかひと繋ぎの曲かのように感じます。

グループ名に関連して青になぞらえてみると、まず序盤は濃く底の見えないような暗めの青から始まりました。
色身は中盤に近づくにつれて明るさを増し「青春」の青に。
ここではキレのあるダンスパートが多めでした。
そして新しめの曲が多かった終盤。
明るい一本道が拓けて東京に向かっていくような、そんな終わり方でした。

二曲ほど、印象的だった曲とメンバーについて書いてライブレポ的なものを終えます。

M3.Nonstop

対バンライブでは滅多にお目にかかれない曲です。

この曲はメロディーがとても特徴的です。
歌詞は、前のめりに
止まらないよ 正直な衝動 フェンス越え パノラマ 前に広がる
とある一方で、イントロから聴こえてくるのはうねるようなシンセの音。
マイクに乗った歌声は深いところに潜り込んだようにこもっていて、パーカッションの規則正しさは、規則正しいがゆえにこの曲だとどこか不気味に感じます。

クセが少なく、キャッチーなロックサウンドを打ち出している群青の世界の曲の中でも異質な存在といっていいでしょう。
言ってしまえば万人受けするような曲ではまずありません。
しかし不思議なもので、歌詞と音との不釣り合い加減がやけにクセになってしまいます。
またこの音をとたまらず聴きたくなってしまう、不思議な魅力があります。

よく「沼る」とか言いますが、群青の世界に踏み入れたとき、沼のディープなところで足を取らんとばかりに待ち構えているのがこうした曲たちだと思います。

この日、個人的には初めて「Nonstop」を聴くことができました。
生で聴くとこの曲、音だけでなくダンスも魅力です。

主にセンターで全ての動作のはじまりになっている横田ふみかさんは、腕をクルクルと回すパートなどダンスでの安定感がものすごいです。

前回のライブレポでも書いたように横田さんは笑顔が凄く良いのですが、この曲での顔を付き出して見下ろすという目線の送り方は抜群でした。
目から顎へのラインが綺麗に引き立ちます。
広がっていく伴奏の音と歌声も良く混ざっていました。

M5. メロドラマ

そっと目を閉じて 描く君との物語

歌詞通り、一宮ゆいさんのそっと消え入りそうな歌声からこの曲は始まります。
いつもは強い歌声を響かせる工藤みかさんも、一宮さんの直後を受けるパートでは静かな入りでした。

まだ特典会で話したことがないというのもありますが、凄くミステリアスに見えるのが一宮さんです。

一般に、ライブでステージに立つアイドルは実際よりも大きく見えることがあります。
ダイナミックな動きや、放たれるオーラのようなものは、その輪郭を何重にも広げます。
フロアからステージは見上げる角度だからという視線のこともあるのでしょう。
その残像が残るまま特典会などで近寄ると、こんなに細く華奢なのかとギャップに驚いたりするものなのですが、一方で一宮さん。
ステージに立つ姿は不思議と小さく見えます。

動きが縮こまっているなどということではなく、脆く消えてしまいそうに見えるのです。
「メロドラマ」の出だしは、そんな一宮さんのイメージと見事に重なりました。
消え入りそうではありつつも、存在感を残す。
これは、一つのアイドル性なのかもしれません。

このライブレポを上げる翌日にはもう、ツアーファイナルの東京公演が待っています。
5か所を巡って帰ってきた東京ではどんなライブになるのか。
さぞかし、と期待しています。

ライブの内容はここまでとなります。

ーーー

【おまけ】2人の芸人と1人の放送作家

最後に旅行記みたいなものをほんのちょっとだけ残させてください。
ライブとは一切の関係がなく、完全に蛇足です。
ライブ前、せっかく大阪に来たということで、大阪からほど近い尼崎に行ってきました。
言わずと知れたダウンタウンと放送作家・高須光聖さんが生まれ育った土地です。

彼らが主に過ごしたエリアはJR尼崎駅北側。
潮江や下坂部、浜といった住所にあたります。
この辺を適当に歩くことにしました。

改札北口コンコースからは何面にもわたる歩道橋が伸び、シネコンなどが入る「あまがさきキューズモール」に直結しています。
土曜ということもありますが多くの人の行き来や、それを狙ったビラ配りの方の数の多さを目にすると、ベッドタウンだけでなく遊びに行く場としても大きいのだなという印象です。

駅南側にはエディオンも見えました。
生活のほとんどが完結してしまいそうな半径数百メートルの風景は、ダウンタウンがいたころとはまるで別世界なのでしょう。

駅を出ていきなり栄えっぷりに驚かされるのですが、真っ直ぐ北上して「アミング」を抜けるあたりで様相がかわります。
交差点の向こう側は「潮江二丁目」。
マンションなどが立ち並びいかにも再開発といった雰囲気の駅北エリアから、平屋のお家が並ぶ、いわゆる住宅街へと変わります。
ここからがダウンタウンのかつての生活圏内です。

潮江を北西方面に向かうと、彼らが通っていた「潮小学校」、その向かいには「田中(角栄のことです)のボケー!」でおなじみの「潮江公園」にたどりつきました。
ここまで駅から徒歩10分以内。
松本・高須コンビがやっていたラジオ「放送室」で語られる思い出話はたいていが高校生のころまでで、電車移動のイメージがまるでなかったのですが、意外とアクセスが良いことに驚きました。

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潮小学校と潮江公園の間を東に向かって抜けると、工場が隣接するエリアに突き当ります。
大阪からJR線で尼崎方面へ向かうとき、府と県とを隔てる神崎川の先に「環境モデル都市尼崎へようこそ!」という文字がでかでかと書かれた看板を目にしました。

環境への意識がほかより先んじているということを意味するのでしょうが、裏を返せば環境問題に苦しんできた歴史を背負っていると見ることもできます。
その象徴が、こうした工場群なのでしょう。
かつての尼崎は重工業が盛んで、排出されるスモッグ類を綺麗にするためなのか近隣小学校には業務用のどでかい空気清浄機が置かれていたそうです。

今はかなり改善されたのだと思いますが、その名残を素材系の工場跡地がある潮江三丁目のエリアに見ることが出来ます。
普通のアパートの中に、粉塵や臭気を出し土日かまわず騒音を出しながら運転を続ける工場が同居しているという、なんとも不思議な光景がありました。

とはいえ尼崎は基本的には下町エリアです。
そんな工場地帯もほんの一部にすぎません。
目につくのはやはりお家。
10年も経っていないであろう一軒家が固まるエリアや、うっそうと草が茂った木造家屋など、新旧様々な建物が不規則なまだら模様に並んでいます。

気が付いたら1時間強歩き回っていました。
金蓮寺さん、神崎病院、昭和風呂...
潮江デパートは「コア潮江」に変わっていました。
「放送室」「GEISHA GIRLS」などで耳にした名前を初めてこの目で確かめられたことに、ちょっとした嬉しさがあります。

散歩と呼ぶには歩きすぎましたし疲れましたが、ライブ前にいい思い出になりました。


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