【ライブレポ】群青の世界 全国ツアーREBORN 埼玉公演
「侵略完了!」
工藤みかさんのツイートにはこうありましたが、初めての地に一方的に青色の集団が踏み込んできたというよりも、フロアとステージとで密なやり取りをしながら気持ちいい時間を過ごし、1時間たって気が付いたら未だ白だった埼玉県のマップが青く塗りつぶされていたようなライブでした。
2022年10月8日(土)、三連休の初日に4人組アイドルグループ・群青の世界が全国ツアー「REBORN」の2公演目・埼玉公演を西川口Heartsにて開催しました。
群青の世界にとって、埼玉での単独ライブはこれが初めてでした。
埼玉での対バンライブも数えるほどしかなかったのではないでしょうか。
関東で東京の隣であるにも関わらず、ライブアイドルはあまり埼玉でのライブをしない印象で、アクセスの良いところに手ごろなライブハウスが少ないというのもあるのでしょうが、都外でのライブをするにも横浜にほとんど持っていかれているような気がします。
個人的にも、西川口は7年前にあったアイドルの全国ツアー以来と、かなり久々でした。
住宅街に忽然と現れたようなライブハウスの建物や、手前のウッドデッキ、カーテンで仕切られて肩くらいの高さが段差となって荷物置きのようになっているフロアの両サイドなど、忘れかけていましたが目にすると記憶がよみがえってきます。
開演5分前、フロアの隅からシューっという音とともにスモークが焚かれ始めました。
天井にある空調がそれを巻き込んで、白い煙を吐き出しているように見えます。
たちまち視界が雲に包まれました。
開演から少し経ち、SEが流れると工藤さん、一宮ゆいさんが登場、ほんの少し間が空いて村崎ゆうなさん、水野まゆさんが続きます。
うつむき気味で口を閉じ、等間隔で横に並びました。
スモークに包まれたまま、導入が終わります。
4人で作る次のフォーメーションは、小さな円のような形でした。
初日の名古屋の1曲目「青い光」でも観たような光景でしたが、はじまったのは「真夏のヘリオス」。
先ほどとは打って変わって晴れ晴れとした表情です。親しみを込める意味で親指と小指を立てるポーズは、この日初めて顔を合わせる緊張感や距離感をなくしてくれました。
次の曲は意外でした。「RIBBON」です。
今ツアーのテーマ曲とも言うべき新曲で、名古屋ではラストのブロックに丁寧な誘導の末に披露されたのですが、この日は会場が暖まり切る前にやってきました。
早くもここに持ってくるのかと、少し驚きました。
とはいえ、序盤に持ってきてはいけない理由もありません。
まだ生で聴いて数回。
名古屋公演で感想はある程度書いたつもりでしたが、近めの距離から見てみると、新たな発見があります。
2番Aメロの頭「遠回りに見えても無駄なんてことない」で、水野さんの振り下ろす腕を村崎さんが受け止め、ふたりでアーチを作るシーンがあります。
このパートを歌いながら工藤さんがくぐり抜けるアーチです。
この時水野さんが下ろす腕には迷いがなく、映像に残っている初披露のバンドセットワンマンライブの時よりも速く強いように見えたのですが、あれだけ強く下ろしても受け止められるだろうという信頼関係がはっきりと現れていました。
暖まり切っていなかったとは書いたものの、既にこの2曲で群青の世界のライブがハイペースで組み立てられていきました。
同じ会場なのに、7年前に観たときよりもステージが広くなっているような気がします。
両サイドの黒いひだつきのカーテンは、ライブ前とは見え方が変わって重厚さがあるように思えてきました。
晴れ晴れとした顔は、3曲目「ロールプレイ」で深刻なものに変わっていきました。
細かなアップダウンはまさに群青の世界です。
意外性は再びやってきました。
4曲目「僕等のスーパーノヴァ」、これも最初というよりも締めくくりの印象が強い曲なので、まさかという思いでした。
ブロックのラスト、5曲目の「最終章のないストーリー」まで、人気曲ばかりで本気を出してきたようなセットリストで、まるで25分枠持ち曲5曲の対バンを見ているかのようでした。
定番の曲で固め、浮き沈みを体験させる見事なワンパッケージです。
実際、過去の対外ライブで何度もこのようなセットリストはあったはずです。
「最終章のないストーリー」サビでの「1,2,3,4」と指を開いていく誰でも真似のしやすい振り付けのとき、床に貼られた「0」や「1」の小さなバミリの少し前にメンバーが出てきていました。
ステージ最先端というわけではありませんが、スポットライトに直接当たらないくらいには前に出てきています。
開演前に焚かれていたスモークからも遠ざかり、照明にも白煙にも隠されていない、加工無しのメンバーの肌の色が浮き出てきました。
全てをさらけ出して生で対話をしている感じがより強まります。
5曲を披露してMCへ、というのは名古屋と同じ流れでした。
名古屋公演ではここからグループ初の試みとして持ち曲8曲のメドレーコーナーへと入っていったのですが、この日は様子が違いました。
喋っているメンバーの後ろ、上手側からスタッフの方が譜面台を持って出てきています。
メドレーが始まる雰囲気ではありません。
譜面台が4人分出そろったときに工藤さんが「見覚えのある方もいるかもしれません...」と言いました。
工藤さんが口にしていたのは、8/9のバンドセットワンマンの後夜祭として行われた単独ライブのことでした。
今年に入って群青の世界は、公式YouTube番組に不定期にカバー動画をアップしているのですが、後夜祭ではそれを生で披露するという機会がありました。譜面台はその時以来です。
どうやら、新たな挑戦としてカバー企画をこのツアーでもやってみようということらしいのです。
名古屋でのメドレーを目にしていただけに、このツアーはメドレーありきで進んでいくのだろうと思っていたのですが、その考えはいとも簡単に覆りました。
となると次回以降の公演も予測がつきません。
振りや大きな動きもなく、歌のみのパフォーマンスというのは運動量の多いライブアイドルからすればかなり珍しく、ともすれば初回のメドレーより緊張したかもしれません。
レコーディングとは違い、目の前には観客がいるというシチュエーションですが、SEに乗って登場してきた冒頭のような緊張感がこちらにも伝わってきました。
この企画をしたのは、ただ有名な曲の「歌ってみた」をしてみたかっただけではないはずです。
様々な音域だったり歌唱スタイルのアーティストの曲をカバーすることで、グループの歌に幅を持たせようという明確な意図があったと思います。
自分の歌が物足りないと時に呟く一宮さんは、上手側端にいました。
何かを期するように思いつめたような表情をしています。
下手端にいる村崎さんが、思ったより4人の間隔が広く心細かったのか身体を中央寄りに傾けていたのが印象的でした。
サビで拳を振るジェスチャーをフロアに促していたのは緊張を振り払うためでもあった思うのですが、自分はちょっと遠慮気味になってしまい、後押しを出来ていたかは分かりません。
カバーしたのは3曲。
「夜明けBrand New Days / ベイビーレイズJAPAN」「オーケストラ / BiSH」「初恋サイダー / Buono!」、いずれもYouTubeにカバー動画を公開している曲です。
「オーケストラ」では、BiSHの音域の高さを知るとともに、グループの音域がいかにメンバーの魅力を引き出す絶妙な高さとなっているのかを思い知りました。
「リハの時はもう少し歌えたのに」と、終わったときに珍しく悔しさを口にしていましたが、水を飲んだときに気管に入ってしまったという水野さんのカバーを工藤さんはごく自然にしていましたし、2番でメインを歌った村崎さんの高音の出方は素晴らしかったです。
「初恋サイダー」は一宮さんの声やキャラクターが曲に合っていました。
タイトル通り恋愛ソングで、かたや切なさもある曲なのですが、そこから思い起こされる主人公の姿に一宮さんのたたずまいが合っているような気がしました。
それにしても、Bouno!はどちらかというとアーティスティックな歌唱力3人組というユニットだと思うのですが、一番歌い継がれているヒット曲が「初恋サイダー」というのは不思議なものです。
メドレーの時はワンコーラスとはいえ8曲を詰め込んだため、フルの3曲で終わった今回が短いように感じてしまうのは否めませんでしたが、当人たちにしてみれ、もしかしたは動きっぱなしのメドレーコーナー以上に神経をすり減らしたかもしれません。
大きな動きがなく、やや言い方を悪くすればごまかしが効かない状況だと緊迫感が増します。
ツアーファイナルまでに少なくともあと1回は「歌ってみた」はあるはずです。
それまでにこの緊張感がどうなっていくのかは楽しみなところです。
そしてライブは終盤ブロックへ。
序盤にかかることが多い印象で、意外と頻度が高いことから、個人的に群青の世界のライブに来た実感を一番覚える「青い光」のラスサビ、半音上にシフトするところがこの日のハイライトでした。
まさに光が振ってきたような感覚で、流れている音までも張り切っているような気がしました。
思えばメンバーのフロアへのコミュニケーションがこの日は多かった気がしていて、上手のやや見づらくなっている端っこ寄りのあたりに指を差していた水野さんなど、遠くを見渡すだけでなく足元や近いところへ頻繁に目線を送るシーンが目立ちました。
一宮さんなど特に、上手側で視線がぶつかる(気がした)機会が多かったです。
初めての地ながら、名古屋の時のように埼玉らしさは最後の記念撮影での「埼玉ポーズ」くらいで、あとは脇道にそれることのない、ワンマンライブの地方版でした。
(BEST FRIENDの感想は次回以降に書きます…)
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