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【#1 物語は、終わらない】東京パフォーマンスドール 「DANCE SUMMIT The Final」一部公演

その日は、2021年9月26日でした。

前々日に最高30℃を表示した温度計は20℃を少し越えたあたりで止まり、夏の終わりというよりも秋の始まりを感じる気温です。

天気は、曇り。
つい2週間前に今シーズン閉山となった富士山にはこの日、初冠雪が記録されたそうで、その影響が3700メートルもくだったこちらまで下りてきたのか、会場付近に雨がぱらつくときもありました。

この日、お台場Zepp Tokyoで、8年間の活動に一旦のピリオドを打ったグループがあります。

東京パフォーマンスドール。

TPDメンバー紹介

1990年代、篠原涼子さんや木原さとみさんが在籍していた”先代”時には「パードル」と呼ばれることもあったそうですが、1996年の活動休止(自然消滅?)を経て、2013年に14~16歳のメンバー9人の新生グループとして生まれ変わった時には、その呼び方も希少種となりました。
今では、グループ名のアルファベットの頭文字から「TPD」と呼ばれることが主です。

新生TPDは、2018年4月に3人のメンバーが卒業し、そこから今まで6人のメンバーで活動していました。
6人で3年半を過ごしてきたわけですが、デビューから8周年が経過したタイミングでメンバーが選択したのは「2021年9月限りでの無期限活動休止」でした。

365日の一日くらい、特別な日が誰にとってもあると思います。
そしてその日は、予期せず突然やってくるものです。
TPDとそれを取り巻く人びとにとっての「その日」は、9月26日でした。

「大切なお知らせ」

アイドルを追いかけていると、運営が発表するこの見出しを冷静には受け止められなくなります。
具体的な内容が書いてなくとも、「大切な」という語の中には、決してプラスなニュアンスが含まれないことは、これまでの経験からもう分かっています。
そして、思いが深く入り込んでいればいるほど、その言葉を突きつけられた時のダメージも同様に深くなります。

TPDの「大切なお知らせ」が発表されたのは、5月26日でした。
20時の時報代わりに入ってきました。

今やツイッター上にほぼ全ての情報が集約されて久しく、その他の媒体にことさらの注意を払うことはありません。
ですが、僕がまっさきに第一報を見たのはグループの公式LINEアカウントでした。

「新生東京パフォーマンスドール(TPD)は、2021年9月30日をもって、現メンバーでの活動を無期限で休止させていただくことに致しました。」

お知らせにはさらに、現体制での一区切りのライブを開催すること、そのための準備を進めること、などがメンバーのコメントと共に掲載されていました。

なぜ活動休止を選択したのか。
いくつもの要因があったと思います。
ここ数年、TPDメンバーは個人仕事が充実していました。
モデル、女優、ラジオパーソナリティー....
個人仕事が増えるのに反比例して、グループの活動が占める面積は小さくなっていきます。
数週間から何カ月単位にもおよぶ舞台期間中だと特に、その間ライブに参加出来ません。
実際、グループのライブやイベントをメンバーが休むこともありました。
もともとアイドル志向ではないメンバーが多かった中で、どっちつかずになるくらいならグループ活動をやめにするというのは当然の流れだったと思います。

それに加えてコロナによりあらゆる制約が出てきてしまいました。
これにより、ライブ中のコール、ファンとアイドルが触れ合える機会である特典会が制限されたことも大きかったでしょう。

年齢的な面もあると思います。半分のメンバーは今年で25歳を迎えます
「一区切り」のタイミングと考えてもおかしくありません。
昨2020年12月には、先代TPDから数えて結成30周年の記念ライブを、何人かの先代メンバーの方と有観客ライブという形式で成功させてもいました。
それに先立ちアルバムもリリースしました。

「突然」と、冒頭では書きました。
でも、こうして考えてみると、このタイミングでの活動休止という断にも無理はないのではないかな、と思います。
もっとも、Zepp以上の規模の会場、例えば日本武道館や横浜アリーナでTPDとして単独公演を開催するなど、結局かなわなかった夢は残されたままなのですが...

今回は、TPDの事実上のラストライブ・9月26日開催公演のライブレポです。

活動休止のお知らせから9.26まで、ちょうど4カ月ありました。
この間、ライブの機会が無かったわけではありませんでした。

夏には、TPDが何度も出演している、世界最大規模のアイドルフェスの一つ「@JAM」への出演も決まっていました。
グループでの出演ではありませんが、メンバーの生誕イベントも用意されていました。
ですが、コロナの影響でそれらのほぼ全てが無くなってしまいました。
直近に開催したライブは、2月14日の、渋谷ストリームホールでのバレンタインライブにまでさかのぼらないといけません。
結果として、ラストライブまで7カ月間以上空くこととなってしまいました。
当然のことながら、9.26までに思いはかなり膨らみます。

この日は昼と夜の二部構成で、一部には「~Can’t stop the TALES~」、二部には「~Can’t stop the dreamin’~」とサブタイトルが銘打たれていました。

「TALES」は昨2020年11月にリリースのアルバム「20 BEATS 20 TALES」の表題曲、「DREAMIN’」は約8年前、新生TPDに初めて与えられたオリジナル曲です。
メンバ―にとっての最初と最後の曲が、サブタイトルに織り込まれることとなったのでした。

一部二部合わせ、ライブは4時間以上に及びました。
各部ごとに投稿を分けましたが、それでもだいぶ長いです。
飛ばしながらご覧ください。

まずは一部から。

前半戦(M1~M7)

開演~M1. Can’t Stop

ステージとフロアとの間には、一面の紗幕がかかっていました。

予定では13時半開演でしたが、実際には5分以上押したころ、紗幕をスクリーンにしてそこに文字が映し出されました。

「2013/06/19」

新生TPDが初お披露目されたその日の日付です。
続いて映しだされたのは、当時のメンバー6人のアーティスト写真でした。
時代を駆け上がり、最新2021年版の写真になると同時に、カウントアップで8の数字が現れ、最終的に「Thank you for 8 years」の文字が刻まれました。

8の字が90°回転して「∞」へと変わり、こちらに向かって飛び出してくるころ、紗の向こう側に6人のTPDメンバーが姿を現わしました。

「東京パフォーマンスドール」

長く、しかしあっという間に過ぎ去ってしまうであろう一日が、始まりました。

強いライトに照らされたメンバーの姿は陰になっており、表情はわかりませんが、意思をもってそこに立った姿はこの上なく凛々しいです。

「WE ARE TPD!せーの、ダー、ヨッシャー!」

円陣を組み、輪の中心に向かってこう叫びながら腕を上げ下げする気合入れや、全員で背中を強く叩き合うルーティーンはもう舞台裏で済ませてきたのでしょう。

前開きの青色の衣装を着た6人は、この日のためにつくりおろされた「Can’t Stop」というダンスナンバーを披露しました。
身体のいたるところを使い、時にダイナミック、時にゆったりと、メンバーはダンスを見せつけます。
フロアとステージとの間が紗幕でかすんでいるため、照明で強く照らされているはずのステージがぼんやりと映りました。
それがまた、始まったけれど始まっていないようなフワフワした感覚をこちらに与えます。
各メンバーのソロダンスを盛り立てるように、スクリーン上にはメンバーの名前が刻まれています。
4分ほどだったでしょうか。6人はひたすらに踊り続けました。

一部のMCで、メンバーは笑いながらこう話していました。

「筋肉痛がほんとにきつくて」

そもそも、ライブ自体半年以上してこなかったわけです。
お芝居や撮影では使わないであろう筋肉をフルに使った痛みもあったのだと思います。
いじめぬいた筋肉の痛みと引き換えに得たもの、それがこの日の「Can’t Stop」のパフォーマンスでした。

この日がグループとしては最後ですが、ここにきて新たなダンスナンバーを習得だなんて、終わりにむけて尻すぼみになっていく気配がありません。
アイドルの火が絶えてしまう直前に放たれる強い光を見た気がします。

後にも書きますが、ゴールや終わりが見えていく頃、トーンダウンとならずむしろギアを一段も二段もと上げていくのは、TPDのまさにライブそのものです。

ところで、スクリーンに表示された時計の形が六角形だったり、紗のスクリーンに飛び出してくる図形も六角形だったり、メンバーが早着替えをするために消えていったステージ奥のドアも六角形だったりと、六角形がこの先たびたび登場します。
これは恐らくメンバー6人を点に見立ててできたヘキサゴンなのでしょう。

ふと上の方を見やると、紗の上に時計の絵が映し出されていました。
針は待ってくれず、高速でひたすら右回転を続けます。
勘の良い人ならここで気付くのでしょうか。

6人が歌い始めたのは、この曲でした。

M2. TIME

Time waits for no one 置いてくか置いてかれるだけ

止まってくれるわけもなく、無情にも流れていってしまう時を感じさせるこの曲。

「Can’t Stop」では、首から下を筋肉痛になるほど酷使しますが、対照的に「TIME」でのメンバーの表情は無で、表情筋がピクリともしません。
この曲特有の表情も、もう見納めです。
9人のステージであればより大きく見えたたのでしょうが、時計周りにメンバーがクルクルと回る姿や、全員の腕で一体の龍を作り出す間奏のダンスは、6人であっても十分見ごたえがありました。

続いても、過ぎていく時間を語った曲です。
シンセでその訪れを徐々に予感させる、特別バージョンのイントロが長く響きました。

M3. Counting the seconds

キミとの想い出に 鍵をかけさせて...

浜崎香帆さんのソロパートです。
カチャっと鍵を押し込むような動作は、終わりを惜しむ今の心情にどうしてもラップさせてしまいます。

この曲には手話で思いを伝えるパートが間奏にあります。

腰を下ろして皆でこの振りをしているとき、橘二葉さんと脇あかりさんが涙をこらえているように見えました。
現地ではそうとわからず、あくまで配信を見て、です。
遠目からでは悟られないよう、肩の震えを抑えつけていたような気がしました。

感傷に浸る間もなく、曲は終わりました。

TPDの曲は、ABメロ→サビという流れは他アイドルと同様なのですが、ステージだとまず2番がほぼ歌われません。
1番と構成が全く同じである2番の冗長さを嫌い、ほとんど1番→間奏→落ちサビという流れで披露されます。
ここが、本編で少なくとも一回はMCコーナーを差し込む他アイドルと、ノンストップライブにこだわるTPDとの違いかと思います。

ノンストップのライブをさらに速く見せるため、あるいは限られた時間の中に出来る限りの曲数を放り込むための策がこの「2番カット」なのでしょう。
実際、2曲分を消化したこの時点で、体感だと一曲分のボリュームのような、あっという間に過ぎ去っていく感覚がありました。

ポーズをとった6人は、ステージ奥に等間隔に並んだ六角形の前に立ちました。
明かりが絞られるころ、6人はその六角形の奥に消えていきました。

正体不明な六角形が出てきたところで、この日のステージの構造について書こうかと思います。
ラストライブに彩りをくわえるべく、ステージのつくりがいつもとは違っていました。
ステージ手前半分のエリアはいつも通り平坦だったのですが、特殊だったのはもう半分を占めるステージ奥側のスペースでした。
ここには、最上手から最下手まですっぽりと覆い隠す、小高くなったもう一つのステージが立っていました。
高さは3メートル弱ほどだったかと思います。

そしてこの高めのステージの土台にあたるところ、フロアに面する側には、人が一人入れるほどの大きな六角形が描かれています。

「Counting the seconds」おわりにメンバーが立っていたのは、このダイヤ型をした六角形のことでした。
六角形の中に隠れたメンバーが再び出てくるのにかかった時間は10秒程度。
再び扉の前でポーズを決めたとき、身に着けるその衣装が変わっていました。
金色に輝くゴージャスな衣装です。

六角形はまた、隠し扉のようにもなっていたのでした。
この中に入っていったメンバーが急いで衣装チェンジして登場、というシーンがここから数えきれないほど見られます。

でもこれも、終わってみて初めて説明できることです。
現地の興奮やらの中にいると、気が付いたら着ているものが変わっていたという感覚でした。
いつの間にか消え、いつの間にか現れている。
そんな、早着替えシーンでした。

M4. SHINY LADY

何度聴いたであろうかというチャイム音とともにやってきました。
天井からはシャボン玉が降ってきて盛り立てます。

この曲については、第二部でも披露されたので、思うところはそちらに詳述することとして、ここでは、一部でのみ見られた特殊な演出にだけ触れてみます。

間奏に入るとき、橘二葉さんと浜崎香帆さんの年少2人組がふと姿を消しました。
気付いたら、二人はステージ両サイドの階段を駆け上がり、3メートルほど高くなったステージ壇上に立っていました。
間奏は、柔らかなこれまでのメロディーからは打って変わり、中低音が目立つパートです。
下に残ったメンバー4人は縦一列に並び、壇上の二人も4人に重なるように一列を作りました。

平坦なステージであれば、通常6人で一列を成すところを分解し、4人+2人で立体的な一列を作り上げたのでした。
このパートではまた、最前に立つメンバーから順に、両腕を腰から曲げてサイドに倒れていくような振り付けがあります。
いつもの6人一列だと、正面から見ると1人ずつリズムよく消えていくのですが、離れていても呼吸は非常に合っていました。

脇あかりさんはこう言います。

「今日は、最強で最高の一日にしようね!」

M5. 逆光×礼賛

オリジナル音源にアレンジが加わっていたような気がしました。
低音は抑えられ、やけにツリーチャイムというか、キラキラ音が増えていたように思ったのですが、これは気のせいだったのでしょうか。
この曲に限らず、多くの曲はライブで聴くのがなまじ久しぶりだったため「こんな感じだったっけ?」と記憶との答え合わせをしながら見ているようなところはありました。

エレクトロなサウンドと、メンバーの手から延びるまばゆい光。
僕にとって新生TPDの初期の頃のイメージはこの曲でした。
レーザー光がどこまでも似合うグループだと実感します。

M6. It’s Up to Me

6人は3人ずつに分かれ、一旦袖に消えました。
やがて、各メンバーカラーに縁どられた六角形が6つ現れました。
大きさは隠し扉と同じくらい。
メンバーが一台ずつ押してやってきたのでした。

センターに集まった6人は、いつの間にか手にしていたサイリウムを白く点灯させます。
TPDメンバーにはそれぞれのメンバーカラーが決められていますが、それとは別に、グループカラーには白が設定されています。
ピンクやグリーン、オレンジなどカラフルに染まるステージが、この曲ばかりは白一色に統一されました。

「It’s Up to Me」でメンバーが持ってきた可動式の六角形は、見る角度によって透かしや鏡のように変化していて、ステージやフロアに光る白色や、電飾のカラフルな色を反射させて、再現不可能で幻想的な模様が次々と浮かび上がらせていました。

高嶋菜七さんを見ると、6曲を消化したこの時点で既に汗まみれになっています。

M7. DREAMIN’

ユニットコーナーに入る直前、前半パートのラストがこの曲でした。
「さぁみんな、一緒に踊るよ!せーの」
浜崎香帆さんがフロアを盛り立てる、優しいこの声に何度穏やかな気持ちにさせてもらったかわかりません。

この曲についても、これ以上のコメントは第二部に預けます。

ユニットコーナー(M.8~M.15)

2013年に結成された新生TPDは、9月26日のこの日をもって活動を休止します。
「解散」とまでは言い切っていないものの、6人が揃ってステージを作ることはこの先おそらくないでしょう。

しかし、グループに別れを告げても、もう会えなくなるわけではありません。
6人皆芸能界には残り、これからそれぞれのフィールドで活躍の場を求めていきます。
グループの中にいるときには果たせなかった夢を、これから叶えに動き出すわけです。
悲しいけれども、むしろここからという、前向きなお別れです。

一部の中盤には、メンバーのソロやデュエットなど、個人によりスポットライトを当てたユニットコーナーが設けられました。
ノンストップライブではたいていこの時間帯にやってくる、おなじみのコーナーです。

各ユニットがステージを独占したとき、それぞれのメンバーが個人活動から得た経験や、この先の道のりを垣間見たような気がしました。
ここからは、パフォーマンスの中身に触れるとともに、それぞれのメンバーのこれまでとこれからについて、順を追って書いていこうと思います。

M8. Be ready

トップバッターは、橘二葉さんでした。

ダンスに定評ある橘さんは白の細身のワンピースを着て、感情の細やかな揺れを所作に乗せていました。

今後のことを書いてみると、他5人のメンバーは、この先やりたいことがなんとなくでも決まっている一方で、橘さんは決めかねているそうです。
橘さんにはいろいろと選択肢があると思います。
得意のダンスだったり、グループにいる時も何度か経験したお芝居も好評だったと聞きます。
何にでもなれることは、それだけで魅力的です。

曲終わり、橘さんは一歩ずつゆっくりと、すり足に近い形で上手側へとむかいました。
まだ袖までだいぶ距離があるころ、次のメンバーが出てきました。

M9. はじまり。

流れ始めたのが「はじまり。」
浜崎香帆さんが作詞作曲を手がけた、今年初披露の新曲です。

名残惜しさを示さんばかりにステージ残った橘さんの姿は、下手の階段中ほどに立った浜崎さんに視線を奪われているうちにいつの間にか消えていました。

浜崎さんの歌声には、フロアに語りかけるような穏やかさがあります。
そのおかげか、ステージとの距離が近くなったように錯覚します。
遠いはずなのに、すぐそこにあるような感覚がどこかにあります。

浜崎さんのソロにはさらに、もう一人居ました。
階段の中ほどから平坦なフロアに下りてきた浜崎さんに対し、小高くなった壇上を独占し、白い衣装で踊る人がいます。

ワンピースを来たその人が誰なのか、初めは分かりませんでした。
あるはずもないことですが、TPDメンバーではなくバックダンサーとして誰かを呼んでいたのか、そんなことすらよぎりました。

ひときわ注目を浴びる場所で、コンテンポラリーダンスを魅せる姿は、これまで観てきたメンバーのイメージと重なる気がどうしてもしなかったのです。

白い影の正体は、櫻井紗季さんでした。

櫻井さんは、もともとお芝居をしたくて、芸能界に入ってきました。
一度、配信ですが櫻井さん出演の舞台を観劇したことがあります。

今年1月から2月にかけて公開されていた「追憶」。
恐らく十畳にも満たない真四角のスペースと、真ん中に立てられた4本の柱とレースのカーテン。
空間の4隅には椅子が置いてあります。
それが、「追憶」のセットでした。

そんな、ごくごくシンプルな空間の中を、登場人物たちが入れ替わり現れては会話を繰り広げていきます。
会話劇に近く、柱の対角線や隅の椅子が巧妙に活かされていました。
この舞台を一度見てしまうと、童謡「シャボン玉」が特別な意味をもって聴こえてきます。
同タイトルで2種類の公演が開催されており、櫻井さんはその片方で主演を務めました。

ここでの櫻井さんの演技は素晴らしかったです。
しくしく泣き出いていかと思えば、急に笑いだしたり、何か恐ろしいものに支配されたかのような表情の変化はすさまじく、TPDにいる時の「いさき」の影はどこにもありませんでした。
他の役者さんと対等に向き合う、俳優としての「櫻井紗季」がそこにありました。

ステージに目を戻すと、この日の櫻井さんが着ていた、いかようにも染まれそうな白のワンピースは、「追憶」のいでたちとどこか似ています。
一瞬誰が踊っているのか分からなくなるほど、個を消して表現者の役に染まっていった櫻井さんは、追憶の姿とダブります。
お芝居から得たものを、TPDとしての最後の舞台に還元したのが、「はじまり。」でのダンスだったように思います。

M10. 恋

櫻井さんが打ち立てた、これからの演技の道への答えをここで観たのであれば、モデルとしての道にそれを感じたのは上西星来さんでした。

上西さんは、TPDメンバーの中ではいま一番街角でよく見かける人かと思います。
例えば、コスメ売り場に行きます。
僕でも知っているようなモデルさんのポスターやパネルに混ざって、必ずといっていいほど「じょにー」はそこにいます。
あるいはルミネにでも行くとします。
アパレルブランドのWillselectionの実店舗を覗くと、そこにはコラボ商品とともに上西さんの姿を、ポスターではありますがみることが出来ます。

多数の美容雑誌にも、上西さんは登場しています。
若い女性に聞くと、TPDのことは知らなくとも、モデル・上西星来という名前やその顔だけは聞いたこと見たことがあるというケースが驚くほどあります。

上西さんが歌ったのは「恋」。
2ndアルバム収録の、上西さんがソロで歌声を吹き込んだ最初で最後の曲です。

暖色寄りのピンクのワンピースを着た上西さんの姿は、もうアイドルのそれとは見えませんでした。
何万人もの目を集めるTGCのランウェイを歩いた経験もある上西さん。
グループでステージに立つ時とはまた違ったオーラを一人身に着けているような感じがします。

「うまく伝えられない もどかしい夏の終わり」


ひと夏の恋愛ソング「恋」を歌う上西さんは、モデルのオーラがあまりにも濃く、等身大の恋愛ソングと微妙にミスマッチな感じを覚えます。
アンバランスさを強烈に感じる時、上西さんはここからどれだけ大きくなっていくのだろうと、期待を寄せる自分に気が付きます。

ラスサビに入る前、可動式の六角形パネルが3枚、動きだしました。
鏡のようでもあり、向こう側が透けるようにもなっているこのパネルの裏には、橘さん、脇さん、高嶋さんの姿がありました。

上西さんがパネルの一枚と向かい合い、鏡に映る自分をなぞるように右手を下ろしたとき、向かい側に立って表情を消した脇さんの左手が、鏡のように同時におりました。

M11. Shadow Dancer

続いてはそんな脇あかりさんのソロです。

ダークな衣装を着て臨む「Shadow Dancer」は、ここまで明るめの色で統一されてきたステージの景色を一変させました。

あくまで、この3年間遠くから観てきた者の個人的なイメージなのですが、脇さんには不思議な危うさを感じることがあります。

一人で泣きたいときもあるよね」「ひとり踊る スリルな街で」と歌うこの曲は、どことなく脇さんからにじみ出てくる雰囲気と合っている気がします。
これは、脇さんに元からある不思議な不安定さなのか、この8年で培った「Shadow Dancer」よりのスキルなのか。
そればかりはわかりません。

コーラス・ バックダンサー隊に高嶋さんと櫻井さんが支えていました。
いつもは脇さん一人なので、人数が増えて賑やかになったはずなのですが、脇さんはより闇に消えていくようでした。

一人だけでいる時よりも何人かといる時にの寂しさのほうが重いように、横に2人もいることでよりその寂しさが強調されるような印象です。

他のメンバーは、例えば先述した上西さんのモデル業のように、この先歌って踊るアイドルから一線を分かつ人が多い様ですが、脇さんの場合はこうです。

「やりたいのは歌とダンス」。

出身地の大分と、活動の拠点東京と、ひいては世界とを結んで活躍するアーティストになりたい。
脇さんはそう意気込んでいます。
今も活動とは別に取り組んでいるダンスであれば、言葉の壁はさほど高くないだろうと。
あくまで脇さんはグループでこれまでやってきたことを目の端に置きながら、未来を見据えているのでしょう。

「SHADOW DANCER」が終わるかころ、壇上にふたりのシルエットがありました。

M12. BURN ME OUT

橘さんと浜崎さん。
曲は「BURN ME OUT」です。
ゴリゴリのEDMで、大人っぽいという言葉だけでは収められないほどに挑発的な曲です。

この日、現地には行ったもののその記憶がかなりあやふやです。
一曲一曲が消化されていくにごとに、初めて聞いた時の思い出がよみがえってきたり、「これを聴くのももう最後なのか...」と寂しい気持ちが芽生えて抑えられなくなったりと、心のほうが頭より先に動かされていました。
そうなってしまうと、頭で記憶するほうにまでなかなか意識が向きません。
こうして書き出している内容も、アーカイブに残った映像が手掛かりになっています。

ですがいくつかは、鮮烈な感覚とともに覚えている光景があります。

その一つが、ここ「BURN ME OUT」のワンシーンでした。
間奏で、二人は壇上から階段を下りてきました。
下手側の階段からは浜崎さん、僕が座っていた上手側の階段からは橘さんが、ゆっくりと下りてきます。
間奏では四拍子の一拍目に、強く音が鳴らされる瞬間があります。
このタイミングに合わせて、二人は足を蹴り上げました。
距離はもちろん遠いですが、ちょうど橘さんが蹴り上げたところの延長線上が僕の位置でした。
不安定な階段の上で、手すりにつかまりながらではありますがノーステップでの強い蹴りを、上手側のゼロズレポジションから味わうことが出来ました。

映像を観ても、映っているのは俯瞰したステージの画だけで、どちらかの正面に入って蹴りを食らったシーンは残っていません。
大げさに言えば、正面から蹴られて頭を揺らされたような感覚です。

さて、「BURN ME OUT」が終わるころ、二人の間に割って入ったのが、スタンドマイクを斜めに抱えたリーダー・高嶋菜七さんでした。

M13. Darlin’

ここまで、各ユニットの終わりから続くユニットの登場までの繋ぎは非常にスムーズで、一見してその繋ぎ目が分かりませんでした。
さりげない切り替えです。
それぞれが独立したものではなく、一貫性をもったストーリーを構成しているという意味合いが、この演出に見えた気がしました。

しかし高嶋菜七さんは、流れをぶった切るかのようにステージ奥の隠し扉から堂々と出てきました。
登場の仕方は、野暮とも言えるほどに、潔いです。

高嶋さんが出てきたところで「Darlin’」へと、曲は移りました。

女心は時に雨のち晴れ 今日も泣いて泣いて苦しいだけ

歌声は正確でありながら情熱的で、鳴らすクラップがとても気持ちいいです。

高嶋さんの登場で、場内は一気に高嶋さんのメンバーカラー・オレンジ色に染まりました。
この日は6色のカラフルなサイリウムが掲げられましたが、その中でも「Darlin’」でのオレンジの光量が一番だったように思いました。
少なくとも、後ろから観ていたらそう感じました。

「これまで、どこかでグループを優先に考えてきた」

ライブ後、高嶋さんのブログにはこうありました。

TPDは歴史があるグループです。
自分が生まれる前に結成し、活動休止(自然消滅?)してしまったグループの屋号を継ぎ、しかもそのリーダーとなった高嶋さんの重圧ははかり知れません。

場合によっては、個人仕事もグループのためにセーブすることもあったかもしれません。
最終的には「自分なりにやろう」と決断したそうですが、リーダーとは?が分からなくなり本を読み漁ることもあったそうです。

パフォーマンスでは、フロントメンバーとしてグループを引っ張ってもきました。
とにかくグループの最前線に立って全てを受け止めないといけなかったのだろうと推察します。

帰国子女で英語も堪能、スタンド一つでフロアのテンションを変えられる高嶋さん。
関西弁で親しみやすさも随一です。
他のメンバーがどうこうではないですが、コロナ前の特典会では、なにせ話しやすいので高嶋さんのレーンに並ぶことが多かったです。

僕としては、大黒柱としてTPDを支え続けた高嶋さんにはぜひ幸せになってほしいと願ってやみません。
他5人のメンバーももちろんなのですが、高嶋さんについては一人特別な感情でみてしまいます。

M14. Move On!

今はただ前を見つめて Move on this story!

暗転後この二人が現れました。
脇あかりさんと上西星来さんによるユニット「赤の流星」。
赤の流星は、単独でフェス出演やワンマンライブ開催をするなど、TPDから独立した活躍も目立っていました。

それだけに、TPDは活動休止したとしても「流星」は続くのではないか、というかすかな期待もあったのですが、TPDの活動休止は6人全員がアイドル活動にピリオドを打つという意味なのでしょうし、デュオでならいいとかそういう話ではないのでしょう。

ライブ終了後には、赤の流星の公式ツイッターが、ユニットの活動終了をにおわせるツイートをしていました。
この日は、赤の流星にとっても最後の舞台でした。

間奏で、流星の二人は壇上に向けて階段を駆け上がりました。
ひと足先に登り切った上西さんは、感情が昂っていたようで、壇上で遅れてきた脇さんに抱き着いていました。
一部二部通して、6人の中では一番冷静だったように見えた上西さんですが、赤の流星への特別な思いだけはどうにも収まりつかなかったようです。
脇さんも同様に感極まっていて、フロアに手を上げるよう煽る場面では言葉に詰まり、出されたのは声にならない声でした。
笑おうとするとよぎる思い出に涙腺が刺激されてしまうのでしょうか。
こうした泣き笑いにも似たシーンは、特に二部ではあちこちで目にすることになります。

個人的には、一部で最もグッと来たシーンが、流星の涙でした。

M15. 世界はわたし中心にまわっている

ユニットコーナーのラストは、この曲でした。
櫻井紗季さんが「楽しんでますかー?」と呼びかけ、陽気なムードが広がりました。

この曲、元は櫻井紗季さんに加え、かつてTPDに在籍していた飯田桜子さんと神宮沙紀さんの3人からなる「ぐーちょきぱー」というユニットの曲でした。
ここで、少しこのグループについて語らせてください。

ぐーちょきぱーは2017年に結成後、杉本屋製菓の「まけんグミ」の公式アンバサダーに就任したり、「まけんグミ」主催のフェスに出演したり、アルバム発売やワンマンライブ開催など今後が期待される活躍をしていたのですが、2018年、飯田さんと神宮さんのTPD卒業によって、櫻井さんひとりが残さることとなりました。
存続の危機ですが、とはいえこのまま終わってしまってももったいないと、ふたりの卒業後は”本隊”のTPDメンバーが曲を引き継ぎ、ユニットコーナーでは櫻井さんと誰か二人が出てきて曲を披露するという形で「ぐーちょきぱー」の影が生き続けています。

そんなぐーちょきぱーの特徴を一言で言い表すなら、コミックユニットというのがしっくりくるでしょうか。
歌詞の面白さや曲調のノリの良さ、ラップの小気味よさは随一です。
音楽的にどう括るのかはわかりませんが、聴けば肩の力が自然と抜けてしまうようなところがあるのがぐーちょきぱーの曲でありパフォーマンスです。

そしてこの空気感は、TPDや赤の流星、あるいは他の人のソロとはまるで違うものです。

アイドルを越えてアスリートのパフォーマンスにも見えるTPDのライブで、コミックユニットの存在は一見異質ではあるのですが、圧倒的なダンスと歌を前に息が詰まりそうになるライブ中に挟まれると、ふっと心が軽くなります。
嫌なことを抱えていたとしても、どうでもいいことだとここではスッキリと忘れられます。

パフォーマンスするメンバーの楽しんでいる姿を観られるところも良いです。
櫻井さん、上西さん、高嶋さんによる年長3人組「ババ3」による「BIRI BIRI GIRL」だったり、櫻井さんが橘さん浜崎さんと組んだ「ハジケソーダ!」だったり。
時には照れも見せながら、時には誕生日サプライズでシュークリームをメンバーにぶつけたりと、遠慮のタガを外し心底楽しむだけに専念している姿を観ると、こちらまで幸せな気分になります。

ライブの「楽しかった!」という感覚の多くは「ぐーちょきぱー」によるものではないかと思うことすらありました。

気の抜けないノンストップライブの間に挟まれた、面白く楽しい時間であった「ぐーちょきぱー」もしかし、もうこれで見納めです。

ぐーちょきぱーの時には、すっかり当たり前のように衣装替えをした6人が揃っていました。
昨2020年の末に初お披露目になった、赤のタータンチェック柄の新衣装です。

後半戦(M.16~M.21)

M16. 東京ハッカーズ・ナイトグルーヴ

生では初めて観ました。
メンバーの目元は真っ黒なゴーグルで覆われていますが、少なくとも口は笑っておらず、無表情で演じていることだけはわかります。
意志を感じない表情の6人がぎこちなく関節を曲げ伸ばしする姿は、まるで機械仕掛けのロボットでした。

M17. TRICK U

TPDの曲には、特に白のナポレオンジャケットがトレードマークだった1stアルバム「WE ARE TPD」のころまで、人生訓を歌った曲が多いように思います。
2015年、初めてTPDを生で観たときに抱いた印象は、深くグループを観るようになった今でもさほど変わっていません。

先代のリアレンジバージョン含め、50曲が収録された1stアルバム以降、TPDは向かう進路を少しずつ変えていったように見えます。
例えばこの8カ月後にリリースされたミニアルバム「Summer Glitter」は、収録曲が軒並み夏の恋を歌った、いわゆるアイドルソングっぽい雰囲気になっています。
それだけでなくメンバーのビジュアルにも変化が見て取れます。
許可が下りたのか、方針なのか、髪を明るく染めだすメンバーも出てきて、これまで黒髪一色だったビジュアルにかなりの色がついてきました。

そんな、外側からでもわかる大きな変化を経て数カ月、6枚目のシングルとしてリリースされたのがこの「TRICK U」でした。

毒々しい紫色の衣装を着たメンバーの手首には、鎖で繋がれているかのように見えます。

すごく好きな曲ではあるですが、これが初披露されたとき、デビューからを知るTPDファンはどうこの妖しげで誘惑するようなメロディーを受け止めたのか、気になるところです。

ここでは、ステージ奥の六角形の隠し扉が意味ありげに半開きになっていました。


M18. BE BORN

イントロから規則正しく拍動を刻み続けるバスドラの音が聴こえ、縦ノリの波が倍々になって伝わってきます。

いま センセイションな未来が もうすぐそこまで来てる

ところで、「BE BORN」のあたりからなんとなく気が付いたのですが、かすかに「オイ!オイ!」と掛け声、コールのようなものがかすかに聴こえてきた気がしました。

誰かが声援禁止のルールを破っている感じでもありません。
あらかじめ収録したような声にも聴こえるのですが、音源にそんなコールがあったおぼえはありません。
となると、メンバーの力を引き出すためにこの日のために特別に入れ込んだのでしょうか。

アイドルと、フロアからの「コール」とはどうしても切り離ません。
それなのに、コロナがアイドルから奪った大きな障害が、「コール禁止」でした。
当然ながら、TPDでも例外ではありません。
TPDの場合は、MCがないノンストップライブのため、コールでもないと最初から最後まで客が盛り上がっているのかどうなのかが掴めないまま本編が終わってしまいます。
MCでコミュニケーションをとる機会がアンコールまで無いだけに、他以上にTPDのコールなしは痛手だったのでしょう。

実際、ライブに制約が生まれてしまったことは、TPDが活動を休止する理由の一つでもありました。
メンバーにとってはフロアの跳ね返りは、ノンストップライブで溜まりに溜まった乳酸を分解し、筋肉をほぐしてくれるような効果があったのかもしれません。
思い込みかもしれませんが。

でも、それほどコールが大事なものだと思わないと、空耳かもしれませんがこの日聴こえてきた合いの手の説明がつかないような気がするのです。

M19. Starship Flight

気が付けば最終盤に突入していました。
ここから、ぼうっとしている人を振り落とさんばかりにTPDはギアを上げていきます。

「Starship Flight」は、結果として最後のシングルとなった「SUPER DUPER」収録のカップリング曲です。
この曲はまた、初披露の時点でデビューから6周年という経験を重ねてきたメンバーですら「ダンスがきつい」とこぼしていた曲でもあります。
サビでの足使いや、微妙に主旋律とずれるターンや、メロディーのキーの高さなどが総合してこの曲をチャレンジングなものにしているのでしょう。
しかし、メンバーがつらいとこぼすのはあくまでMCの場でのみです。
実際のパフォーマンスではそんな素振りすらなく笑顔で終わらせてしまいます。
絶対しんどいはずなのに、です。

まだ二部だってあります。どこに体力が隠されているのでしょうか。

こんな声が聴こえてきそうです。
「ホントに今日で終わるグループなの?」
あるいは、これが今年に入ってからほとんどライブを出来ていないグループのライブなのかと疑ってもしまいたくなります。
こんなことを言っても身も蓋もありませんが、ここまですごいパフォーマンスをみせるグループが今日で終わってしまうのが、グループとのお別れとは別にしても惜しいです。

限界 超えてみよう

次に披露される曲の歌詞です。
この言葉を、誰より本人たちが真っ先に体現しているからライブに説得力が増します。

M20. SURVIVAL!!

導入は、これまで聴いた覚えのないイントロミックスでしたが、打ち込みのパーカッションの音を聴いて確信しました。
もう終盤、そろそろ来るぞと待ち構えていた自分も居ました。

この日、いつもなら持ち出すことのないサイリウムを一応持ってきていました。
数年ぶりのサイリウムでしたが、とはいってもなかなか光らせず、次々と展開されるステージを様々な思いで受け止めることに必死だったのですが、「SURVIVAL!!」を確信した時点でそれすらも忘れ点灯させていました。

「TPDの曲には人生訓を歌ったものが多い気がする」と、書きました。
そう思わせているのは、この曲の存在がかなり大きいのだと思っています。

誰も追いつけないフルスロットルで 絶対 駆け抜けよう
生き抜くんだ 感じるんだ 呼び覚ますんだ

そしてこのフレーズは、TPDのことを指してもいました。

僕が始めてTPDを観たのは2015年春の「アイドルお宝くじパーティーライブ」でした。
ここには6組ほどのグループが出演していましたが、当時期待されていたグループも、TPD以外は最終的にはずっと前に解散・あるいは構成メンバーの大幅入れ替えを余儀なくされました。
その中にあって、TPDは3人抜けてはしまったものの、グループはしっかりと残り、オリジナルメンバーのみの6人で頑張っています。

TPDが活躍したた2010年代は、アイドル戦国時代といわれた10年間でした。
果ては日本武道館を成功させると目標を掲げ、日々生まれては消えていくアイドルの中で突き抜けたいとライブを重ねてきたのが、この時代のアイドルでした。
今がそうではないと言いませんが。

簡単に図式化して、厳しいアイドル業界に残ったものを勝者、立ち退かざるを得なかったものを敗者としてしまうのは間違いだと思っています。
でも、TPDが先代から継いだノンストップライブを武器に、厳しい10年代のアイドル戦国時代をサバイブしてきたことに疑いの余地はありません。

「SURVIVAL!!」で、拳を掲げて天を指さす振り付けをしているときは、ステージからくる熱に押され、何にでも立ち向かえそうな気がしてきます。
仕事や学校で思うことがあって心が折れそうになっても、ライブで披露されるこの曲がプロテクターになってくれました。

脇さんと橘さんの、構成上は落ちサビですが、実際は暴れ出さんばかりの勢いとなっている落ちサビパート。
もう終わりかと思うと一秒一秒がたまらなく惜しく思えてきます。

M21. TALES

木漏れ日のような、おだやかな6色の光がフロアに向かって降り注ぎました。
事前に収録された、メンバーそれぞれのコメントが流れてきます。

「今の自分がいるのもみんなのおかげ」
「あの光へ。それぞれが輝くステージへ」

リズム隊が4拍刻んだ後、6人がユニゾンで歌い始めました。
「未来に会いたくて会いたくて会いたくて走った」。
新生TPDにとって最後の曲「TALES」で、一部は締めくくられました。

1Aパート、歌いだしは橘二葉さんです。
TPDの活動休止にあたり、心残りが一つあるとすれば、この1~2年で急速に歌が上手くなった橘さんの歌声を聴く機会がもうないであろうことはとても残念です。
これから完成に向かっていくであろうその歌声は、追いかけていくだけの価値があると思っています。
ミュージカルなどに出演して聴くことができればうれしいのですが。

冒頭で「無色透明」だった空は、最後には「あの日見た青空」に変わっていきます。

明るい未来を提示しながら、一部本編は終わりました。

歌い終えたメンバーは、ありがとうございました!と手短に挨拶をして捌けていきました。
と同時に、フロアからはアンコールを求める拍手が鳴り出しました。
手拍子のインターバルが徐々に短くなり、ほとんど拍手のようなリズムに変わるころ、TPDメンバーは再び出てきました。

アンコール(En.1~En.2)

En1. BRAND NEW STORY

夢見る旅人たちは 新しい道を拓くよ

これだけはご存じという方も多いかと思います。
アニメとのタイアップもしていました。

TPDのデビュー曲であり、特別な曲です。

どれだけ特別かは、この日のためにリメイクした「BRAND NEW STORY」のリリース当時の衣装でアンコールに現れたことからも見て取れます。

「BRAND NEW STORY」の後にはMCコーナーに移りました。
忘れずに触れておきたいのですが、これがこの日最初のMCだということです。
何も知らず初めてTPDのライブを観に来ると、ここで面喰います。
高嶋さんも初見の人に向け、「全然喋らへんやんと思ったと思う」言っていました。

「ここで初解禁したいことがあるんだよね」

浜崎さんのこの一言からはじまり、「言うのはリーダーでしょ」「ええの?」「何照れてんの」と譲り合いの末高嶋さんから告げられたのは、「実はデビューから4年間、メンバー9人で一緒に暮らしていた」ということでした。

言いたくてうずうずしていたような、うれしそうに伝えた「初公開」だったのですが、期待ほどの反応ではなかったらしく、「知ってたん?」とかふざけ初め、橘二葉さんの「みんな隠すん上手いな~」なんて一言も出てきます。

TPDメンバーの和やかなMCは結構面白いです。

「今日がラストライブなわけですよ」

まだ一部のため、こんなライトな言い方をしながら最後の曲に入っていきました。

En2. RAISE YOUR HANDS

時間は刹那

以前の投稿にも書きましたが、イントロを聴くと、頭の中で勝手にエンドロールの映像が目の前に流れていきます

「無情に過ぎて」いくときを、憂うのではなくそれもいいじゃないかと、この曲では教えてくれます。

でも 忘れないでいて
サヨナラの向こうでも 繋がっていること

メンバーは最後まで笑顔で、笑顔を保ったまま、90分を超えるライブの幕は閉じました。
ユニットコーナーで各人の個性もはっきり出されていましたし、構成含めてTPDらしさが出たライブでした。
ライブを迎えるまでに感じていた悲しさはどこへやら、終わってみれば悲しさよりも楽しさが勝っていました。
この日セッティングされたライブはなにもファンを悲しませるためではなく、楽しい思い出を最後に刻んでほしいがためのものだと、ここでようやくまともに受け取ることが出来たように思います。

とはいえ時間は間違いなく過ぎていくもので、あとはもう二部しか残されていません。
これが本当のラストです。

▼第二部

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一部セットリスト

210926TPDラストライブ_セトリ一部


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