【ライブレポ】東京アイドル劇場mini Fragrant Drive & PASTELL合同公演
今回は、7/11(日)に高田馬場BSホールにて開催された、5人組アイドルグループ・Fragrant Driveと3人組アイドルグループ・PASTELLの合同ライブレポです。
同じ事務所所属で、2018年結成のFragrant Driveに対し、先月ステージデビューしたばかりのPASTELLと、緩やかな「姉妹」関係にあるといえる2グループ。
この日、初めにPASTELLが15分、続いてFragrant Driveが30分の持ち時間で計45分間のライブを開催しました。
これまでのライブレポではFragrant Driveについては多々書いてきたものの、「妹分」のPASTELLについては初見です。
そこで、ライブレポに移る前に、デビューしたてのPASTELLについて、概略を簡単に触れていこうと思います。
PASTELLは千代田流季さん小日向美咲さん、七川叶憂 さんの3人からなるのですが、どうやら3人とも同じ高校出身の同級生だそうです。
今年3月、3人の高校卒業と期を同じくしてグループが結成、その後数カ月はSNSやYouTube上での活動をしながら先月6月のライブにてステージデビューを果たしました。
ここにはFragrant Driveもゲストとして出演しています。
PASTELLのメンバーカラーには、グループ名通りブルー、オレンジ、ピンク色の淡いパステルカラーが割り当てられ、衣装にも鮮明に色づいています。
この日のライブでは、衣装やグループカラーだけでなく、ステージにも個性が色濃く出ていることを感じました。
では、ライブレポに入ります。
デビューから日も浅く、オリジナル曲も少ないため、ライブの多くを別グループの継承曲でまわしているPASTELL。
この日も、Shine Fine Movementの名曲である「You」からライブが始まりました。
ちなみに、Shine Fine MovementはかつてFragrant Driveも所属していたレーベル「Label The Garden」(略称LTG)で2019年まで活動していたグループで、Shine Fine Movementの他にもかつて活動していた「Flower Notes」や「seeDream」といったグループの持ち曲は、Fragrant DriveやPASTELLといったLTGの流れを汲む現役グループに継承されています。
「斜め下 つないだ手だけが 世界のすべてのように思えてきた放課後に」
1Aメロの歌いだしは千代田流季さんでした。
この日は2グループの合同公演ということで、来ている人たちの全てがPASTELL目当てというわけではなかったと思います。
僕のようにあくまでFragrant Driveをメインで観に来たという人もいるであろう中で、出だしの一音目はこと緊張する瞬間だと思います。
こちらも身構えてしまうところもあるのですが、千代田さんの歌い方や歌声はこちらの身構えを氷解させていくかのように穏やかに広がっていきました。
続く2曲目。事前のMCでメンバーが曲名を「恋花」と告げたにも関わらず、流れたのはグループの数少ないオリジナル曲「ドリームパレット」のイントロでした。
「ドリームパレット」は本来3曲目に披露される予定で、どうやら2,3曲目の曲順が手違いによって逆転してしまったようでした。
叶わぬ恋を歌った「恋花」とはつらつとした「ドリームパレット」。
曲調がまるで違います。
メンバーにとっても、それぞれの曲に持ってくる感情や表情の流れや構成は前もって準備していたでしょう。
それに加え、メンバーは2曲目に入る直前のMCで「最後の曲(3曲目)のみ撮影可能です!」と告げていました。
予定としては本来「ドリームパレット」が3曲目で、ここでの笑顔たっぷりの表情を撮ってほしかったのだと思います。
そうした背景がありながら、しかしトラブルによって急遽撮影曲となってしまった「恋花」でも、PASTELLメンバーは撮影に耐えうるほどの表情のつくり方をしながらパフォーマンスを完成させていました。
この「恋花」。
先述したLTG所属の過去グループ・Flower Notesのオリジナル曲であり、「You」同様Fragrant Driveも頻繁にライブで披露している曲です。
初めてPASTELLの歌う「恋花」を聴き、聴きなれた曲でも違うグループを介することでここまで違って聴こえるのかという驚きを感じました。
その印象を強く打ち付けていたのが、七川叶憂さんの歌声でした。
七川さんは自身のキャッチコピーを「テンション高め、声は低め」とているくらい地声が低めなのですが、その声こそが「恋花」のメロディーとよく合っていました。
それがここのパートです。
「君の仕種のひとつひとつがミスリードになる
気づくと抜け出せなくなる」
出だしの高音からフレーズ終わりの高音にかけてじつにオクターブ分もの音の移動があるのですが、Flower Notesの音源を聴いたときやFragrant Driveのライブを観ている時には感じえなかった低音や底の深さが、低めで響く七川さんの歌声によってある種の新鮮さとともにこちらに届いてきました。
全体をみても、PASTELLのメンバーはこと「恋花」ではフレーズごとを区切るような歌い方をしていたのが特徴的でした。
恐らくあえてそうした歌い方をしているのかと思うのですが、いつも聴くFragrant Driveバージョンではどちらかというと曲の世界になぞらえて未練を残すような、フレーズの切れ目をあいまいにするような歌い方をしているように聴こえるので、その違いは歴然でした。
この日の全3曲を終えたPASTELLを観て感じるのが、それぞれのメンバーの個性の表出です。
七川さん、千代田さんから漂う雰囲気については先に書いた通りですが、千代田さん同様き緊張を和らげてくれる小日向美咲さんのいっぱいの笑顔も心に残りました。
メンバー数が3人と、グループアイドルでは最少人数ということもありますが、デビューからまだ日が浅いのに、それとわかる特色が既に各メンバーから出ているのが一つPASTELLの魅力と思います。
続いてFragrant Drive。
個人的には6/27に開催された60分間の単独公演以来でした。
Fragrant Driveからも個性がよく出ていることは感じましたが、それにとどまらず、各人の個性が要所では混じり合うけれども決して一緒にはならないという奥深さを観た気がします。
まずは各メンバーについてポイントを書いてみます。
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伊原佳奈美さん。
ここ最近のライブではとりわけ高音がよく出ています。
複数人でのコーラスの時よりも、そこから外れてソロで歌うときにそれが浮き出てくるのですが、伊原さんから出される高音は細い糸のように伸びていきます。
一方歌い終わりは対照的に、ピンと張り詰めた糸をほどいたようなほっとしたような笑顔をのぞかせており、ギャップを生むその表情も良かったです。
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片桐みほさん。
歌声が伴奏の音に忠実に合っています。
リズムやメロディーが正確ということだけでなく、なにより声量が伴奏との調和を保っています。
本人の中でどこまで意図してなのかは分かりませんが、伴奏あっての歌声という意識が強いように思います。
しかし、そうした調和も例えば「胸の奥のVermillion」となると明らかに崩れて声量が優位になるのですが、これもあくまでいつもの調和があるからこそ「おっ」と驚かされます。
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板橋加奈さんは、切ないシーンでの悩ましげな表情が、歌にも動きにも乗っています。
「先の試練のひとつひとつが血と肉になる このまま突き進んでゆく」
「恋花」での板橋さんソロパートです。
ここでのマイクに吸い込む息の音が乗るほど息継ぎを大きくとる歌い方は、板橋さんなりの独自のスタイルだと思うのですが、こちらのブレスまでも誘ってきます。
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ある曲では三田のえさんがセンターに立ち、他4人が左右対称に広がるように立つという、逆扇型のフォーメーションをとっていました。
他のメンバーがセンターだと見劣りするという意味ではないのですが、このフォーメーションで三田さんがセンターに立つことで、なんだか全体の画が締まって見えました。
三田さん本人としてはセンターに立つのは緊張するのかもしれませんが、これからも多く見ていきたいフォーメーションです。
また、先日の単独公演で初披露されたばかりの新曲「ふたりのストーリー」はこの日も披露されました。この曲では三田さんが冒頭ソロ、落ちサビ、最後のフレーズという重大なパートの多くを担当しているのですが、初披露のときよりも歌うときの肩の力が抜けており、観ているこちらとしてもリラックスした気分にさせてもらいました。
三田さんはグループや曲への思い入れが人一倍強いようで、時にそれが堅さとして映ることがあるのですが、リラックスして自信のある状態の三田さんは見違えるように良いです。
ところでこの「ふたりのストーリー」。
単独公演では本編とアンコール、合わせて2回披露されており、今回のライブではや3回目だったのですが、不思議とこの3回で歌詞はともかくメロディーをすっかり覚えてしまいました。
それだけ耳に入っていきやすく、心地いい曲なのだと思います。
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辻梨央さんは、素人である我々でも分かるように歌声のバリエーションをつくってくれるところが素晴らしいのですが、この日は「胸の奥のVermillion」の落ちサビの高音をファルセットを使わずチェストボイスで一息に歌っていました。
こうした辻さんの歌声の違いを発見することはライブの楽しみの一つになっています。
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このように、5人それぞれ見るべきところが多いのですが、そんな5人の個性も、グループ全体での動きや、コーラスとなると一つの色に溶け込んでいくのですから不思議です。
例えば、メンバーの歌唱パート切り替えはあまりにスムーズです。
スムーズなあまり、あたかも一人で全て歌っているかのように思ってしまいます。
これはフォーメーションチェンジにも反映されており、PASTELLとは対照的に赤で統一されたグループカラーの衣装を着たメンバーの動きは、目で追うにはあまりに忙しかったです。
この日は撮影可能タイムがあったため、ライブレポの足しになればと写真を撮ってみようかとスマホを出したはよかったのですが、ステージの流れを目線で追うことにとらわれてすっかりカメラを忘れてしまっていました。
アイドル劇場では毎度この繰り返しです。
また、全体の和が出ているという点で象徴的な曲を取り上げると、「Want Your Love」はメンバーが指をさし下ろす振り付けが随所にちりばめられており、メンバーとフロアで指を指し合うことで両者の距離がグッと縮まる、いわゆる「レス」曲です。
確かにサビではこれでもかというほど指を指しますし、事実この日もメンバーとそのタイミングで目が合ったような気が何度かしました。
しかし、この曲の芯はそれだけでなく、落ちサビに向かうところのメンバー全員でのコーラスにもあると思っています。
「魔法に惑わされて この恋心 消えてしまいそう」
以前書いたことの反芻にはなりますが、ここでは5人が絶妙なハモりをみせます。
ハモりといっても上下パートの境目がわかりづらく、5人それぞれの声の識別はできるはずなのに誰が主旋律を歌っているのかがここにくると判別できません。
それくらい自然な溶け込みです。
しかしながら、話がいったりきたりになってしまうのですが、このように一つの方向に溶け込んでいきながらも、5人それぞれの表現がここに埋もれて消えてしまうことはありません。
これがFragrant Driveのすごいところと思います。
それこそ「Want Your Love」だったかと思うのですが、ある曲では5人が横一列に並んでコーラスをしていましたが、あるメンバーは斜め上を向き、かたやあるメンバーは前を見据えてと、歌う姿勢一つとっても明確にそれぞれのスタイルが出ていました。
先に書いた5人それぞれの特色も、「自分が自分が」という感じで出ておらず、あくまで全体の和の中ではっきりと出ています。
協調を保ちながらも個を捨てないと言うのでしょうか。
孔子の言葉を借りて「和して同ぜず」と言うべきところかもしれません。
こうしたFragrant Driveメンバーのパフォーマンスを観ていると、そんな奥ゆかしさ、面白さを感じることができます。
それから、これは意図していたのでしょうか。
この日のセットリストには「Want Your Love」「恋花」「ガルスピ」という、普段のライブで聴く機会の多いものの、先日の60分単独公演のセットリストからはもれてしまった曲が並びました。
勝手ながら単独公演の補完をしてもらったような気分になりました。
以上がライブレポです。
この日は、Fragrant DriveとPASTELLが同じ時間の枠で「共演」する形となりました。
同事務所ということでこうした共演機会は今後も増えていくと思いますが、同じ曲を共有しているからこそそれぞれのグループから出てくるカラーの違いを明確に感ずることができ、充実した良いライブでした。
見出し画像:Fragrant Drive(@FD_LTG)、PASTELL(@PT_LTG)公式ツイッターアカウント画像を改変