【ライブレポ】塩川莉世 SHUGAR ワンマンライブ(210731)
7月31日(土)に渋谷・SPACEODDにて開催された表題のライブに行ってきました。
アイドルグループ・転校少女*の塩川莉世さんのソロ名義「SHUGAR」の生バンドライブです。
二部構成でしたが、二部のみ行ったのでそちらのレポになります。
SPACEODDは外観や中のつくりがレンガ風で、少し古びた感じが味を出しています。
地下二階のメインフロアに降りると、多めにたかれたスモークがステージを満たし、間を縫うように青と黄色の照明が光っていました。
ぼうっと霞がかったステージの背景には「SHUGAR」の文字が、「S」の文字が画面のほとんどを占めて映しだされていました。
見出し画像の、奥の方に見える垂れ幕がそれです。
「S」の周りには、その書き始めと書き終わりの両端に塗りつぶされた丸とそれを囲う点々が描かれており、太陽を表現しているようにも見えます。
いよいよ開演時間となり、暗転したステージの上にバンドメンバーが登場、センターでマイク位置を調整する塩川さんのシルエットも見えました。
第二部の幕は、aikoの「milk」から開けました。
一音目。
鳴りだしたドラムの音を聴き、バンドのボリュームが思っていたより大きいことを予感しました。
いつものカラオケとは違って、流石の塩川さんの歌声をもってしても、生バンドの音の中に埋もれてしまうのではないかと思っていましたが、そんな心配は不要でした。
暴れんばかりの音に負けじと、塩川さんの歌声はひびきわたっていました。
既に一部の公演を終えていたことから、緊張感も置いてきたのでしょうか。
滑るように音符の上を流れる歌声の伸びは、感激の鳥肌を立たせるには十分でした。
それでも本人にして物足りなさはあったのでしょうか、直後のMCでは「マイクの音量上げてもらっていいですか?」とPAの人にお願いしていましたが、その必要すらないのではと思うほどでした。
この日はかなり後ろから観ていましたが、ふと塩川さんの姿が迫ってくるように感じた瞬間もあったほど、歌声の存在感は強かったです。
ここからは、披露された曲や具体的なシーンについて、観たこと感じたことを書いてみます。
あいみょんの「生きていたんだよな」。
この曲、序盤はほぼセリフのようなパートになっています。
テンポが速いため、ともするとリズムを追うだけでのっぺりとした聴き心地になってしまいそうなものなのですが、塩川さんのリズム感はピッタリでしたし、文字に起こすと生々しくて戦慄するような歌詞の光景も、塩川さんを通すことでどこかさわやかさを受けます。
また、どの曲だったか確かな記憶がないのですが、ある曲の終わりに差し掛かった時のこと。
結末に向かって先細っていくアウトロ、手許の楽譜に目を落とす塩川さんの真剣な目つき、そしてこちらを向いたかと想ったらすぐ暗転、という一連の流れが一つの作品のようで非常に綺麗でした。
偶然の産物とは思うのですが、だからこそ貴重なものを観たような感覚です。
この日はステージの明暗の切り替えパターンが通り一遍ではなく、例えば曲振りを塩川さんがしている時に早くも暗転したりと予想外の動きを見せていたのですが、照明効果で印象深くなったワンシーンでした。
ところで、前回SHUGARのワンマンライブが開催されたのは半年前、2021年の1月でした。
当時塩川さんは20歳だったため、公演サブタイトルには「成人式公演」と銘打たれていたのですが、大人になる一つの節目ということで、その日塩川さんは山梨のお母さんに向けてAIの「ママへ」を歌っていました。
この日も、中盤に曲振りをするとき、「いつも応援してくれる・・」という前回と同様の切り出しから始まったので、またこの曲なのかなと安直にも考えていたのですが、次いだのは「ファンのみんなへ」というコメントでした。
披露されたのはファンモンの「ありがとう」。
意外でしたが、塩川さんの思いが垣間見えました。
MCコーナーでは、レポの冒頭にも書いたステージ上の「SHUGAR」の文字について語られました。
このデザインは、今回のライブにあたって作られたグッズTシャツにもプリントされているのですが、手書き感がありながらも特に「R」の字などに意匠が凝らされているように感じていて、てっきりデザイナーに頼んだと思っていたのですが、どうやらとんだ思い違いでした。
この字を書きあげたのは塩川さんだそうです。
もっとも、本人の記憶がかなりあやふやで、「太陽みたいだ」とレポの冒頭で言い表した「S」の両端の印については本人をしてもよくわからないそうです。
ドラム担当の山本まきさんからは、二つの印の位置が違うのは、日の入りと日の出を表現しているためらしいというコメントもあったのですが、当の本人がそのことすらも分かっていなさそうだったのが面白かったです。
そんな一幕がありつつ、この日の掉尾を飾った曲は、SHUGARオリジナル曲の「IRIS」。
「最後の曲です」という塩川さんのコメントを合図に、バンドメンバーより前奏が鳴らされたのですが、間もなく停電したかのように全ての音が「バチン!」と止まりました。
突然です。
誰より塩川さんが驚く中、バンドより再度鳴らされたのが「ハッピーバースデー」。
何を隠そう、このライブ当日は塩川さんの21回目の誕生日でした。
サプライズはこれだけで終わりませんでした。
ハッピーバースデーを歌いながら、転校少女*メンバーの松井さやかさんと佐藤かれんさんが登壇してきたのでした。
両手にはひまわりの大きな花束と、バンドメンバーからのプレゼントが握られています。
転校少女*メンバーの誰かしらは見に来ているだろうとは思っていましたが、ステージへの登場は予期していませんでした。
「泣くつもりなかったのに」
21歳にもなったということで、ステージでは「大人」感を出して泣かないようにしたかったとは本人の言ですが、一部、そして二部の最後までこらえていたものがここにきて決壊しました。
嬉しさと驚きが混ざったひと時だったと思います。
松井さんと佐藤さんは塩川さんにプレゼントを渡し、ひとくさりあった後「サプライズなのでマイクもありませーん!」と言いながら、余韻も残さぬまま去っていきました。
仕切り直して再び「IRIS」へ、となりましたが、ここで塩川さんが「改めて」と言いたかったのでしょうか「気を取り直して」と微妙にワードチョイスを間違え、バンドメンバーから総ツッコミにあう、なんてシーンもありました。
ツッコミどころでもう一つ言うと、サプライズから遡って一発目の「IRIS」披露時、塩川さんが考案したという振り付けがレクチャーされたのですが、塩川「先生」の教える動作は順番が逆になっていたりグチャグチャっとなっていた、というひとくだりもありました。
「私らしく歩んでいく」
歌詞が分からないのであくまでニュアンスまでとお断りしておきますが、「IRIS」のサビにはこんなフレーズがあります。
このようなMCでの奔放さや、バンドメンバーから突っ込まれる姿などを観ていると、このフレーズはまさに塩川さんのキャラクターを言い表しているように思えます。
曲調も明るくそんな印象を高めてくれ、手にした花束はそうした像とラップします。
バンドメンバーからプレゼントされたピンクのギターストラップを首にかけ、途中気になるのか何度か触りながらも無事「IRIS」を歌い終わり、この日のSHUGARの幕は閉じました。
以上がライブレポです。
今回披露された曲の中には知らない曲もあり、かつ「しっとり系」で固められたセットリストだったのですが、それでも十分すぎるほど楽しめたのは、塩川さんが曲のストーリーを再現することに長けているからだと思っています。
曲の一番の聴かせどころであるサビまでの展開の仕方、そしてサビの表現が図抜けています。
それはいわゆる音の強弱としてのみ語られることではありません。
サビまでのABメロではトーンやテンションを落とし、サビ直前ではもうすぐ待ち構える昂ぶりへの下地を募り、サビで全てを開放する。
塩川さんはこの流れを作るのが本当に上手いです。
だからこそ、知らない曲でも伝わってくるものがひとしおなのでしょう。
塩川さんは、グループにおける個人活動の一環として、その歌唱力を活かし「カラオケ95点超え」企画にチャレンジしています。
その模様はYouTubeにアップされているのですが、出す音出す音が画面に表示された音程バーにピタリとハマり、軒並み95点以上の点数を叩きだす姿は観ていて非常に気持ちがいいです。
カラオケはときに否定的な見方をされ、点数の高さと歌の上手さは必ずしも結びつかないと言われることもありますが、塩川さんの前では詭弁でしょう。
カラオケで高得点を連発し、生のライブでは曲の表情を再現して観る者の心を震わせる。
塩川さんの歌声はそのどちらも備えています。
むしろ転校少女*のライブでその歌声を数多く味わってきた身としては、カラオケ動画での高得点を観て、「やはり本物だったんだ」と、疑っていたわけではありませんが再確認したような感覚でした。
ライブアイドルの世界では日々ライブの告知がなされていて追うのも大変なのですが、この「SHUGARワンマンライブ」、こればかりは開催発表された日から外せないと準備していました。
期待度は高かったですがそれも超えられ、とても満足のライブでした。
見出し画像:転校少女*ツイッターアカウント画像(@tenkoushoujo)を改変