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【ライブレポ】8/21 東京アイドル劇場mini Fragrant Drive & PASTELL合同公演

8月21日に高田馬場BSホールで開催された、表題のライブレポです。

同事務所所属のアイドルグループ・Fragrant DrivePASTELLが、入れ替え形式でアイドルが出演する「東京アイドル劇場」にてFragrant Driveが30分、PASTELLが15分の持ち時間でライブを行いました。

ともに観るのは7月中旬の合同公演以来で、一カ月以上間が空きました。

PASTELL

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一カ月前と比べると、メンバー全員の歌の伸びを感じました。

数日前にツイッターにアップされた、ライブ映像の切り抜き動画があります。

映像越しに音を聴くと、全ての音を集められていないためか会場とのギャップを感じることもときたまあるのですが、頭の中で補正をかける必要もないほど声が出ています。

ユニゾンのパートはというと、3人それぞれの声が喧嘩せず調和がとれています。
声が混ざっていても聴きとりやすいです。
PASTELLメンバーは高校時代のクラスメイトだったということで、言わずとも通じ合うであろうところが歌声のバランスを生んでいるのかもしれません。

千代田流季さんの、ハスキーとは言わずとも少しだけ低音のエキスが入った歌声は心を落ち着かせてくれます。
壊さないよう、倒れないようにそっと置くようなさやきかける歌声は、放り投げる乱暴さとまるで対極にあります。

もっとも、丁寧な歌い方を意識すると、それにつられてテンポが落ちてしまいそうなところですが、千代田さんは歌い方のトーンと曲のリズムをきっちりと分けていました。

ところで、PASTELLは今年6月にステージデビューしたばかりのためオリジナル曲が少なく、ライブではレーベルの先輩グループの曲を継承しています。

同事務所・同レーベルの別グループの曲を受け継ぐことは、パステルに限らずライブアイドルではよく見かけます。
曲を引き継ぐアイドルにとって、すでに確立されている曲をどう表現するかは腐心するところでしょう。

オリジナルの歌い方をそのまま真似するのか。
それとも、自分なりに調味料を足してみるのか。
いっそ調味料どころかおおもとを捨て、まっさらから組み立て直してみるなんていうのも選択肢の一つかもしれません。
いずれにしても、オリジナルは意識せざるを得ないわけで、曲を聴きこむごとにちらつくオリジナルとどう付き合っていくかは難しいところだと思います。

それを踏まえ、注目したいのが、七川叶憂さんです。
この日披露された一曲は、現Fragrant Drive所属の板橋加奈さん、伊原佳奈美さんがかつて所属していたClef Leafというグループの「Evergreen」でした。

七川さんは、サビ前のソロパート「苦労の先に笑えるならば」というフレーズで、少しだけアレンジを加えた歌い方をしていたように聴こえました。
メロディーの間隔を詰め、あえて走り気味に歌っていたような気がします。

ただのコピーでは面白くないと思ったのでしょうか。
ここ以外には大きく歌い方を変えていなかったように聴こえましたが、Fragrant Driveも受け継いでいる「Evergreen」にまた一つ、七川さんの手によってスパイスが加えられました。

Fragrant Drive

フラドラメンバー紹介

Fragrant Driveはアイドル劇場に2週間に一回程度のペースで出演しており、さながら定期公演のようです。
ここには出来るだけ参加してきただけに、ライブを中断したこの一カ月超は長かったです。

この日特に書いておきたいのが、片桐みほさん。

歌声がとびぬけて良かったです。

出される音はもれなく反響し、「そよ風のソーダ」「Want Your Love」などでは、真四角の会場の隅を伝ってソロパートから少し遅れてこだまのように音のなごりが聴こえてきました。

何でも取り込んでしまいそうな会場の白い壁は、直角の四隅でもって片桐さんの歌声を少しの間だけ受け止め、そしてすぐに跳ね返しました。
イメージですが、そんな光景が頭に浮かんできます。

それだけでなく、片桐さんの好調に引っ張られるかと錯覚してしまうが如く他メンバーの歌声もよく響いていました。
例えば「胸の奥のVermillion」など、あくまで歌う本人の力だとは分かっていながらも、「強さは無垢だと自分には言い聞かせていた」という伊原佳奈美さんの高音も、「未来を拓く」三田のえさんのロングトーンも、片桐さんの無形の引きがあるような感じがありました。

辻梨央さんは、2番の頭ソロ「きっと花はもう枯れたと 懐かしき場所を寄り歩いて」にて、ステージ下手から中央に向かい、歌詞通り寄り歩きながら歌っていました。
歩きながら横顔を見せましたが、辻さんの横顔をライブ中しっかり見たのは存外少なかったなとこの時ふと思っていました。
単にこちらの観察不足なのかもしれませんが、辻さんは同じ曲であってもライブごとに歌い方、その姿勢、あるいは立ち位置などをステージ上の制約もある中で分かりやす変化をつけてくれ、こちらを飽きさせない工夫をしてくれている印象です。

気付かないうちに受けている「煽り」

どのグループにも大抵、アオリを頑張るメンバーがいます。
そのメンバーは多くの場合、MCでトークを回す役割もしており、一番ステージで喋るメンバーと言ってもいいでしょう。

Fragrant Driveにとっては、板橋加奈さんがその役割だと思うのですが、板橋さんの煽りはさりげなく、そのさりげなさが魅力です。

全く心当たりがないのに、何かにぶつけたようなあざが身体にできていることがあります。
記憶をたどってもまるで思い当たる節がありません。
けれど、皮膚の上にはくっきりと証拠が残っています。
だから、何もなかったわけはないのです。
だけどどうしても思い出せない。

気が付かないうちにスッと入ってくる板橋さんの煽りは、例えるのであればこんな無自覚のアザとすごく似ています。
ライブでその煽りが発された瞬間に「すごいな」と、反射的に口をついて出るというよりも、ライブ後会場から離れ、その日のことを振り返ったときに「あの盛り上がりを作っていたのってもしかして....」と、なんとなく理解するような感じです。

普通、言葉に出来るものかどうかはさておいて、パフォーマンスを観て受ける感覚はタイムリーです。
後々感じることも無いわけではありませんが、多くは歌声や伴奏の音が奏でられた瞬間、演者が動きを見せた瞬間、どこかにある感性のスイッチが押され、心が何かを感じます。
感知してからの時間には数秒も要しません。

しかし、板橋さんの煽りにはそうしたタイムリーさはありません。
煽りでは、長々とした文章を吐き出すわけでもないですし、意外な一言を添えるわけでもありません。
「ラストー!」「一緒にー!」「みんなでー!」
ごくごく短い単語に収まっています。
他の言葉はそぎ落とし、ここで目立とうなんて意識も感じません。

短くまとまっているからこそ、記憶のフィルターをすり抜けてしまいます。
すり抜けてしまうのですが、意識の水面下ではステージを見る姿勢を、その短いフレーズによって確かに後押ししてもらっています。

一例として、ライブでほぼ毎回披露されていて、一番よく耳に残っている「胸の奥のVermillion」という曲。

この曲は1,2番歌唱後、落ちサビ→ラスサビ→ラストというよくある構成からなっています。

落ちサビのソロパートを担当する辻梨央さんは、語りかけるように、一文字ずつ伝えていきます。
それまで奏でられていた音が止み、歌っている本人としてはしびれるようなひと時だそうです。

「胸の奥で薫り発つVermillion わたしの胸に希望灯してくれる」

このパートが終わるか終わらないかのうちに聴こえてくるのが、板橋さんによる「ラストー!」の煽りです。

「ラストー!」は、直前の辻さんの落ちサビを邪魔することなく、曲の中に綺麗に合流します。
しかし、長くは続きません。
ラスサビです。
板橋さんが口に出したそばから、待ちかねたかのように勢いよく続くユニゾンの波が押し寄せ、煽りの一言は飲まれて消えていきます。
板橋さん自身も数拍遅れてユニゾンに加わり、この時点で「ラストー!」の声はすっかり霧散してしまいます。

時間にして1秒程度のこのシーンをすこし掘り下げてみると、音数が少なくなってトーンが落ちる辻さんの「落ちサビ」から、メンバー全員で歌うラスサビへの高揚には大きな隔たりがあります。
板橋さんが煽りで添える一言には、このギャップを埋める役割がある気がします。

高めの地声から放たれる煽りには、際立つ歌声を逃すまいと聴き入る空気をいったん整理し、ラスサビですべてを開放するまでのスロープとなります。

音源ではもちろん煽りは収録されていません。
ですから、ライブで仮に「ラストー!」の一声が聴こえなかったとしても曲として成立はすると思います。
しかし、ラスサビでの盛り上がりには煽りの有無で差が出てきてしまうのではないでしょうか。
たった一言なのですが、思っているより重大です。
ライブで聴くたびにこの思いは確信めいたものになっていきました。

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最後に総論的な話を書こうかと思います。

何度書いても書きすぎとは思いませんが、Fragrant Driveのステージを観ていると揃っている動作に息を飲みます。

ターン一つとっても、タイミングやその速さなど息が合っていますし、その動きも明確です。

先日、「@JAM」が開催され、Fragrant Driveも出演しました。
毎年夏の終わりに横浜アリーナで行われる、大規模なアイドルフェスです。

大規模なだけに、普段の対バンライブで関わることが少ないグループも多く出演していたため、Fragrant Driveのステージには初見であったり、去年11月からの新体制を知らないお客さんが多く訪れたと聞きます。

ツイッターで検索してみるとそうした初見の、しかも前から気になっていたとかではなくその日ふと立ち寄ったとみられる何人かの方が、Fragrant Driveのステージを「良かった」とツイートしていました。
「優勝だった」というツイートも見かけました。

お目当てのアイドルの出番の直前だったからたまたま観たグループに、この日の「優勝」だと思うほど引き込まれてしまう。
僕自身、Fragrant Driveとの出会いは唐突かつ深みにはまるのも急だったためよくわかりますが、それだけの力がFragrant Driveにはあります。
その理由のいくつかが、こうして書いた細やかなパフォーマンスだったり、板橋さんの煽りの無意識下での魔力ではないでしょうか。

9月の日程を確認しました。
Fragrant Drive、9月は東京アイドル劇場に3回も出演予定です。
来週末から3週間連続です。

冒頭でアイドル劇場は「定期公演のようだ」と書きましたが、だとすると3週連続で開催してくれることのありがたみが強調されます。

3公演とも違ったライブになることでしょうし、楽しみです。


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