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【ライブレポ】群青の世界 全国ツアーREBORN 大阪公演

終わって時計を見たとき、目を疑いました。
17時38分。
始まったのは16時半なので、ほぼ1時間にライブが収まったことになります。
たった1時間しか経っていないとは。
時間の感覚も失われてしまうくらい、濃いライブでした。

11月27日、4人組アイドルグループ・群青の世界が、全国ツアー「REBORN」大阪公演をあべのROCKTOWNにて開催しました。
10月1日の名古屋から始まり、地方6都市を巡るツアーです。
ファイナルは12月13日
O-EASTで、結成4周年記念ライブを兼ねて豪華バンドセットにて開催予定です。
ここ大阪は、ツアー最後の地方公演でした。


ツアー名に「REBORN」とあるのは、この直前に発表された新曲「RIBBON」に音が近い単語だからという単純な理由にとどまらず、新たな挑戦を繰り返して文字通りグループとして脱皮していくという意味合いも込められているようです。
その宣言通り、これまで各公演では会場ごとに違う挑戦を試みてきました。

数曲を繋げたメドレーや歌一本でのカバー曲披露、あるいはファン投票によるセットリスト決定など…
当然大阪公演でもあるのだとは思うのですが、予想がつきません。
ファイナルを直前に控えた大阪でどんな試みが生まれるのか…

16時30分。
いつもより鍵盤の音が響いたSEから、PAとの相性の良さを予感しました。
照明は昼間の部屋に差し込む太陽のようなオレンジがかった白色。
いつもより少し早めに一宮ゆいさん、工藤みかさん、村崎ゆうなさん、水野まゆさんと出てきた時、空気が動いて埃がわずかに舞いました。

4人は間隔を十分に空け、横一列で下を向き、我々と同じようにSEに耳を傾けていました。やがて中央へ集まって1曲目のフォーメーションへ。

前後列で互い違いになったフォーメーションに既視感を覚えつつ、何だったろうかと頭の中のパタパタをめくっている時にはもう「青い光」のイントロが流れていました。
フロアに手を差し出したり、指を指したり、この曲にはこちら側と向こう側とのコミュニケーションが多いです。
コロナにかかって静岡公演に行けなかったこともあり、期せずしてグループを観るのが1ヶ月以上空いてしまいました。
だからなのかやや緊張気味で開演を待っていたのですが、手を回したり掲げたりと腕から上の動作を真似していくうちにブランクは消え、群青の世界の空間にいることに違和感がなくなってきました。

2曲目は「Nonstop」。
なぜか名古屋や大阪など遠征先でしか披露されないレア曲です。
大阪まで足を運んだ理由の数パーセントはこの曲への期待だったのですが、前回のツアー宮城公演で披露されたり、最近のライブでもセットリストに入っていたようなので、頻度的に厳しいだろうと少々諦め気味でした。
生で見るのはこれで2回目で、あの時のうっすらとした記憶と違うのは意外とダンスメインの曲ではないということ。
工藤さんと一宮さんのソリなど、特定の振りをつけず立ち止まったまま歌っていました。
「青い光」とは打って変わって表情が真剣です。
ダンスメインではなくとも、間奏などでいざソロが始まると手を繰る速さやそのまわり方に圧倒され、魅入られたように観てしまいました。

雑談の多かったフロアから声が漏れてきたのは「シンデレラエモーション」でした。3曲目。
これもまた「青い光」同様観るというより振りコピメインの曲です。
群青の世界特有の、ABメロでの手持ち無沙汰を埋めるフロアからのクラップが活き活きとしてきました。
自分はボーカルにおいて群青の世界のバロメーターは、工藤さんの出す金属音のような高音をPAが上手く拾えているかどうかだと思っているのですが、その点で言えばこの日の相性はばっちりでした。

楽しい雰囲気も束の間、場面は再び真っ暗に転換します。
4曲目は「ロールプレイ」。
次の「最終章のないストーリー」で再び明るくなっていったのですが、序盤5曲は曲ごとに雰囲気の違う、起伏の大きなセクションでした。

群青の世界の魅力って何だろうと考えてみると、親密さと深刻さを行き来している。
いくつもありますが、一つはここにあるのではないかと思っています。
青い光」「シンデレラエモーション」では後述する一宮さんを筆頭に顔がパッと晴れて心の距離があたかも縮まったかのように感じるのですが、一方で「ロールプレイ」「Nonstop」では寄せ付けないパフォーマンスで急に遠ざかります。
ダーティーなイメージからはほど遠いものの、親密さとは反対に殴られるような感覚を覚えるのが群青の世界のライブです。
何回も通ったことで生まれるはずの親しみやすさを突然失い、自分が全くゆかりのないよそ者であるかのように思えてくるときがあるのですが、ここ5曲はまさしくその典型でした。

「最終章」で終わったこともあり、ここまでのセットリストをそっくり対バンライブに持っていけそうだなと、似たような序盤の構成だったツアー埼玉公演を思い出したのですが、その時と違うのはここで一区切りではないということでした。
続けて6曲目に移っていったのです。

予兆は確か「ロールプレイ」と「最終章」の間にありました。
群青の世界のライブでは、いつもステージ後方に人数分の水が固めて置いてあります。
曲を終えてMCをし、「盛り上がっていきましょう!」などと村崎さんが言い、それからいそいそと全員が後ろに走って水を飲み、ひと呼吸置いてから次のブロックへ...という流れが通例です。
ところが、この日の給水タイムは曲間でした。
曲が終わり、暗転したままの舞台で4人が水を飲みに行っています。
その間、誰も言葉を発しません。
いつもより急いでいるようにも見えました。

どうやらまだ区切りではなく、ブロックはこの先も続いていくようです。
これまでノンストップで披露するにしても大抵は5曲。
過去に10曲連続をやったことがあるらしいですが、6曲も続けるなんて驚きました。
「もしかしてこれは...」
よぎった考えの答え合わせは終演後にすることとなります。
そのわずかな可能性を考えながら「Starry Dance」を耳にしました。
自分が行くはずだった静岡公演でお披露目された新曲です。
早速ダンス動画が上がっていて、行きしなに急いで振り付けを頭に入れました。

生で観てみると、イメージ通りといった感じの曲でした。
グループでは珍しいダンス動画は、これを観てフロアの皆で真似をしてねというメッセージから来ているのだと思いますが、クラップや難易度低めな振り付けなどこちらに歩みよってくれていて、初お披露目からひと月も経っていないにも関わらずステージとフロアとがまとまっているように見えました。
ところでこの曲、サビのメロディーにどこかで聴いたようななつかしさを覚えました。具体的に近しい曲があるような気がするのですが出てきません。

曲名にある星からきているのか、周囲に白の水玉模様が光り出したこの曲で、すごいなと思ったのが一宮ゆいさんでした。
行きの新幹線でダンスショット動画を観ているときに気付き、数時間後生で観て確信的になったのが、上背があるわけではない一宮さんは、身体を大きく見せるような工夫をしているのではないかということです。
一宮さんをじっくり見ていると、動きがとてもキビキビとしていて、かつ「0.5拍」の動作がどの振りにも加わっているように見えます。
例えば4拍子の1拍目に腕を上げる振り付けがあるとき、一宮さんは動き出しを1拍目ではなくその直前、いわば0.5拍目から始動しているような風に見えるのです。
腕を出す振りであれば、助走をつけるためにここで少し引っ込めるようなイメージです。
他のメンバー、特に工藤さんを見ていてもそんな動きはしておらず、恐らくオリジナルなのかなと思うのですが、想像するにこのひと手間が身長差をうめているのでしょうか。

加えて一宮さん、笑顔がものすごく良いです。
くすんだところのない、まさに無邪気というべき笑顔を観ていると自然とこちらも顔がゆるんできますし、そんなつもりはないのですが、ステージに集中しすぎていつの間にか顔がこわばっていた自分に気付かされます。

さて「強がりな正義」「カルミア」と続いたライブは、8曲目に差し掛かっているのにまだ止まる気配がありません。
ショッピングモール4階にある会場が揺れるほど多くの人が跳んだ「カルミア」の後、またしても無言の給水タイムに入りました。
このまま止まらずに終わってしまうのではないか。
当初よぎった予感が、徐々に現実味を帯びてきました。
水を飲んでいるそばから、メンバーを急かすように「アイ・ワナ・ビー」の鍵盤のイントロが流れ出しました。

この曲でのパフォーマンスのことを激情型と、自分は呼んでいます。
村崎さんの目は光り、動きからはめらめらと何かが立ち込めています。
BLUE OVER」が続いたのも、自分としては理想的な流れでした。
昨年の3周年記念ワンマンライブ「Blue Symphony」を思い出します。
高めをしっかりと尖らせたボーカルはもはや刺してくるようであり、呆然とするしかありません。
このあたりから、誰というわけではなく全員の歌声が等しく強く聴こえてきました。
「ボルテージが上がっているのを感じた」
ライブ終わりのMCでの村崎さんのコメントは、このあたりを実感してのことではないでしょうか。
グループ史上最長にならぶ10曲も連続で披露し、疲れていないはずがありません。
しかし、そんな様子は一向に感じられませんでした。
一宮さんは、髪の毛の束がダンスで乱れて顔にへばりついていましたが全く気にする様子もなくソロを歌い続けています。
照明は主張しすぎることもせずに、開演からほぼ一貫して薄いオレンジの光でしたが、後半にかけてややその色を濃くしていったように感じました。

そして11曲目は「BEST FRIEND」。
ついにノンストップの最長記録をこえました。
もうここからは覚悟を決めます。
どうやらこのライブ、ノンストップで最後まで行ってしまうようです。
水野まゆさんは上手端に立った時、君だよ君、と言わんばかりに目の前を指さし、親しげに歌っていました(このライブから日を置かず、水野さんはボブカットになりました。似合っています)。

止まらずここまで走り続けたことの影響を少しだけ感じたのは、続く「However long」での工藤さんでした。
高音を出すとき、わずかに苦しそうに見えます。
常に安定感のある工藤さんにしては珍しいシーンでした。
ただ、既に総力戦の様相だった歌声は、ほんの少しの不安をかすめ取りました。
村崎さんの歌声は足りない部分を補い、かなり頼もしいです。

開幕時と同じく、横並びのフォーメーションを取ったメンバーが今度は後ろを向きました。
ハイハットが4回鳴らされ、振り返ったとき、一宮さんがこういいました。
「ツアー大阪、これでラストの曲です!」
驚くことに、メンバーは自身の名前を一回も名乗らないまま最後の「僕等のスーパーノヴァ」まで来てしまいました。
恐ろしい話です。
ぶっ通しで曲を浴び続け、すっかり深夜テンションのごとくとなった空間は「スーパーノヴァ」でさらに燃え上がりました。
サビでは珍しくフロアに照明が当たりました。
フロアの面々がどういう表情をしているのかを、恐らくメンバーは見ることが出来たはずです。
拳を握り、天井に指を指す。
文字通りあっという間のライブを惜しむ気持ちも出てきています。
ラストでは、床に拳を下ろした村崎さんが立ち上がるまで、少しばかり時間が止まった気がしました。

こうして全13曲に渡る、長編のノンストップライブは幕を閉じました。

最後にようやくMCとなったわけなのですが、ここは実にあっさりとしていました。
「なんてたってツアーが『REBORN』だからね!」と音を止めず走り続けたライブを振り返って工藤さんがこともなげに言えば、一宮さんの「セトリ覚えるの大変だった」のコメントで4人がステージ後ろのペットボトル置き場に置かれたセトリ表に触れました。
よく見たら、黒地に白だったとおもうのですが水とは別に何かがあります。
暗がりの照明で10数秒、いつも以上に時間に追われる給水タイムの間に確認したのだと思うと、尊敬の念を強めてしまいます。
まるで音楽プレイリストを再生するかのごとくぶっ通しでライブをしたので、13曲といえど1時間ちょっとで終わるのは必然でした。
ただそれを実現させてしまえることが素晴らしい。

12月13日のツアーファイナルの告知をした後、4人は涼しい顔で捌けていきました。
ほのかに残ったアンコールの予感をかき消す追い出しのアナウンスを聴きながら、1時間10分もかからずに終わってしまった濃密なライブを後にしました。


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