【ライブレポ】群青の世界 水野まゆ生誕祭
5月28日(土)にSpotify O-WESTにて「水野まゆ生誕祭」が開催されました。
5人組アイドルグループ・群青の世界の水野さんは、この日から2日後の5月30日に20回目の誕生日を迎えます。
5月にしては凄く暑く、演者のために強めに効かせられがちなライブハウスの空調が心地いい一日でした。
この日は土曜の夕方ということで、道玄坂のライブハウスエリアでは他にもライブがいくつも行われていました。
隣り合うO-nestやduoの外には、どれが目的のライブの待ちなのか一瞬分からなくなるほどに人がたまっています。
O-WESTでもちょっと前にライブが終わったばかりでした。
群青の世界と同じくらいの知名度のライブアイドルによる3マンが昼過ぎに開催されていました。
こちらは16時入場の16時45分開演。
番号が比較的若いこともあり、自分の入場は開場後滞りなく済みましたが、45分間と余裕をみた開場時間でも、会場いっぱいに入った人達をさばききるのには時間がかかります。
予定されていた開演時間を少し過ぎたころ、はじまりの合図が鳴らされました。
まず照明が落とされました。
場内は真っ暗になります。
いつも通り、開演前にはグループの曲のインストバージョンが延々流れています。
暗くなった場内をみて、いよいよ始まるのかと椅子席の方々は立ち上がりました。
いつもであれば、不自然に上がったBGMのボリュームの大きさで開演を知るのですが、この日の音量は暗転から少し経ったところで上がりだしました。
◆セットリスト
M1. カルミア
M2. アンノウンプラネット
M3. メロドラマ
M4. 大嫌いなはずだった / HoneyWorks(水野さんソロ)
M5. 心から... / 26時のマスカレイド
M6. 僕等のスーパーノヴァ
M7. コイントス
M8. 青空モーメント
M9. シンデレラエモーション
En1. 心拍数#0822 / 蝶々P(水野さんソロ)
En2. 未来シルエット
En3. 最終章のないストーリー
ピンクのラインが目立つ衣装を着て5人のメンバーが出てきます。
横一列になり、歌いだしたのは「カルミア」でした。
メンバーがその日の喉の調子と気持ち上ずったPAとのバランスを取りながら声を出し、次第に聴きなれたハーモニーへと変わっていきました。
「カルミア」も、続く「アンノウンプラネット」も、特段なにか普段のライブと違うところはありませんでした。
「アンノウンプラネット」ではいつものごとく水野さんがイントロのわずかな隙間からのぞくようにフロアに挨拶を投げかけています。
ごちゃついた場を綺麗にするのは工藤みかさんの澄んだ歌声ですし、横田ふみかさんの大きな笑顔は誰かと会話しなければ生まれてこないだろうというくらい自然です。
腕をちぎれんばかりに大きく振る場面もありました。
髪を切って入れたカラーが写真よりもだいぶ明るく見えた村崎ゆうなさんは、横田さんとはまた違ったタイプの笑みを浮かべながらのパフォーマンスです。
一宮ゆいさんはいつみても儚く感じます。
歌声や立ち姿、そのどれをとってもです。
いつも通りの、誰が目立ち過ぎるでもない5人での群青の世界のライブでした。
「いつも」と違う展開がやってきたのは、3曲目の冒頭でした。
「メロドラマ」はイントロ代わりにまず一宮さんが歌いだし、そのあとを工藤さんが歌い、そしてAメロに繋ぐ間奏、という流れです。
誰もとってかわることはできません。
しかしこの日、そのパートを歌う人だけが立つことの出来るセンターのポジションに立っていたのは一宮さんではありませんでした。
水野さんでした。
胸に手を置き、詰まったところにアクセントのある声質は、一宮さんに留まらず工藤さんパートすらも飲み込みました。
一人で二人分をまるまる歌い切ってしまったのでした。
生誕祭の演出を打合せするとき、せっかくだからここのパートは歌ってみたいと、水野さんが宣言したのでしょう。
驚きをもって迎えたフロアからも、やがて一宮さんの時と同じように手が伸びてきました。
ソロを支えます。
熱いスポットライトを一手に引き受ける、主役だけに与えられた特権を水野さんは味わっていました。
いつかの大阪で開催の大型フェスで、喉の不調によりマイクを通したパフォーマンスができない一宮さんにかわり、他のメンバーで一宮さんパートをカバーするということがありました。
一宮さんは歌いだしや落ちサビといった周囲の音が一旦止むパートを多く任されていて、代打のメンバーはかわるがわるその大事なパートを歌っていったということになります。
その時は大阪までは行っておらず、このことは後日談的に知りましたが、この日はそれに似た貴重な回でした。
何度もあるわけでもないレアな瞬間にようやく立ち会った気分です。
イレギュラーな、もうこの日限りだろうという展開は、アンコール後にもあったのでそれは後に書きます。
グループで3曲を終え、水野さんは下手袖に消えていきました。
生誕衣装のためのお着換えです。
その間他の4人は、あらかじめ用意した水野さんにまつわるいくつものお題の中からくじ引きで選んだ話題についてトークしていました。
お着替えの時間は短めで終わり、水野さんが出てきました。
そのビジュアルが、この写真になります。
直前のMCで村崎さんが評していた「清廉潔白」なイメージそのままです。
白などまさに純粋さそのものですし、淡い青色との調和からは、やはり群青の世界の得も言われぬ綺麗さは水野さんの存在が大きいのだと再認識させられました。
ソロカバーを、水野さんは歌いました。
「大嫌いなはずだった」
他メンバーのソロを特別に歌っていた先ほどよりも、歌声には自信がみなぎっている気がしました。
声に張りがあります。
一人だけのステージを一旦終え、少し喋ったあと、「おいで~」と我に返ってやや心細げになったような響きの水野さんの声をきっかけに4人が出てきました。
4人の衣装も、先ほどまでとは変わっています。
グッズ販売されている生誕Tシャツをダボっと着たスタイルです。
丈は恐らく最大サイズで、小柄な4人のシルエットは短めのワンピースのようになっていました。
さらにメンバーの頭には生誕衣装と同じ色合いと生地からなるヘッドドレスと猫耳がついていました。
水野さんの実家で飼っている猫への溺愛ぶりが、メンバーを猫に変身させたのでしょうか。
何にせよ、似合っています。
工藤さんのテンションが上がっていたように見え、歌う前に猫のポーズをする場面がありました。
全員でニジマスの「心から...」を披露したあと、後半戦になだれ込みました。
「僕等のスーパーノヴァ」のラストは、横一列となったメンバーがこちらに背を向けて両腕を羽のように下ろして終わります。
ここで初めて、メンバーのバックショットを捉えることができました。
生誕Tシャツの背中には、村崎さんが書き上げた、猫を抱いた水野さんのイラストが大きくプリントされています。
タッチは優しく、表情は穏やかで思い描く水野さんのキャラクターそのままです。
とにかくみんなに喜んで貰うことを第一に考えたセットリストにしたのかなと、特に本編ラストのブロックでは感じました。
「コイントス」「青空モーメント」「シンデレラエモーション」での、はじまりのフォーメーションを目にしたとき、あるいはイントロが流れてきたときに立て続けに上がった歓喜の声が、そこに込められた狙いを端的に物語っているような気がしました。
レア曲では決してありませんが、「僕等のスーパーノヴァ」や「最終章のないストーリー」のような、放っておいても自然とセットリストに入ってくるような曲ではなく、ここに入れようという明かな意図があってはじめて名前が打ち込まれる曲のはずです。
それに加え、夏の空気を感じるこれらの曲は季節外れの30℃越えを記録したこの日の天気ともマッチしていました。
本編の最後にチョイスされた「シンデレラエモーション」は、状況から何からまさにこの日の水野さんそのものでした。
特段ソロパートが多いわけでもないのですが、この曲にかんしてはなぜか水野さんの曲だというイメージが出来上がっていました。
生誕衣装を着ているとそのイメージはさらに固いものになっていきます。
シンデレラが歌い踊っているようにしか観えませんでした。
恐らくこの先しばらくの間、シンデレラエモーションを聴けばあの時の光景を思い出すのでしょう。
本編が終わり、拍手に連れられて水野さんだけが登場しました。
この日を迎えたことへの気持ちを伝えたいということです。
「こうして生誕祭が出来るようになったのは...」
会場に来られていた家族の方や友達などに感謝の言葉を紡ぎながら、時折目には光るものがありました。
「特典会とかでみんなが優しい言葉をかけてくれた」
グループ最年少ですが、水野さんは初見だとそう見えません。
スラっとしたスタイルや鷹揚さのある言動、パフォーマンスやSNSの投稿をみる限り大人びていて、育ちの良さみたいなものを感じさせます。
それでも気を許すと、例えばメンバーの前では「考えていることがいちばん顔に出やすい」くらい分かりやすいキャラだそうで、本来の水野さんの姿はこちらなのでしょう。
このことは、以前開催の「青の記録」という定期公演の感想でも書きました。
「まだまだ感情を抑えきれないこともあるけど」とスピーチで口にしたは、その自覚の表れでしょう。
素の自分はそうだったり、もっと活発なほうが性に合っているのだと思っていても、段の上ではおしとやかなアイドルを演じられる。
それが水野さんだと勝手に思っています。
ようやく20歳になるという年齢なのに早くもセルフコントロールをして、どう見えるかを第一に考えられるというのは素晴らしいです。
水野さんはここで、ソロカバー曲をもう一曲披露しました。
「心拍数#0822」。
暖色系の照明が、これでもかというくらいゆっくりとスイッチしていました。
アウトロで鼓動の音が聴こえるなか、4人のメンバーが出てきます。
「最終章のないストーリー」では、大サビを迎える前の落ちサビの歌割はたしかこのようになっています。
まず一宮さんが5角形のフォーメーションのセンターを突っ切って前に出ながら「僕たちはまた歩き出す...」から始まる長めのパートを歌います。
次いで横田さん、村崎さんの順に短いフレーズをリレーし、「最終章のないストーリー」と高らかに曲名をメロディーに乗せるのが工藤さん。
音源を聴いても、観られる直近のライブ映像でもこうでした。
しかしこの日、一宮さんのパートを歌ったのは水野さんでした。
「メロドラマ」に続く、この日限りのパートチェンジでした。
フォーメーションも、水野さんと横田さんのツートップという隊形になっていたような気がします。
「きょうもShowroomやろうと思ってる!」
あれは4月のGWを間近に控えた対バンライブでした。
生誕祭の告知が解禁となったある日、水野さんがShowroom配信をしたことがありました。
コショウがどうのとかいう雑談的な内容も多く面白かったのですが、配信をした大きな目的は一カ月後に控えた生誕祭の告知のためでした。
自分が知る限りでは、水野さんどころか群青の世界メンバーが配信をするなんて最近ではかなり珍しいことだったはずです。
そこから一週間経った頃の特典会で「観ましたよあれ」と配信のことに触れたとき、水野さんから言われたのが先の言葉でした。
この頃はちょうどチケット抽選の締切り日で、範囲での告知は出し尽くし、あとはリマインドするための配信というのが2回目の配信の目的だった気がします。
1カ月前のことですが、なにかそれ以上の時間のへだたりを感じてしまうのは、そこから間もなく発されたもう一つの「お知らせ」が頭の中に根を張り続けているからなのでしょうか。
生誕祭は誕生日を迎えるアイドルを祝うためのものですが、祝われる側も影で相当の準備をして臨んでいるようです。
大きい会場いっぱいに動員できるグループにいてもなお、自らにフォーカスした生誕祭となると来てくれるのだろうか、ゼロ人だってあり得るのではなかろうかと不安に思うアイドルは、それが本心かどうかはともかくとして多いようです。
だからこそ入念な準備をしています。
オタクにとってフックとなるための告知や、大抵の場合やってくるソロ曲披露のための振り入れなど。
衣装をあつらえる場合にはその調整もしなければなりません。
われわれの想像には及ばないような世界で、物事は進んでいます。
珍しくshowroomアプリを立ち上げたのは、それだけ来てほしいという願いが込められているのでしょう。
通常のライブ・イベントはスケジュールにぎっしりと詰め込まれていて、生誕祭のための時間はその合間に埋めていくしかありません。
生誕祭関係で降りかかってくるタスクの多さに瞼が重くなり、ほとんど寝言のような状態で連続配信の記録を守るためだけに15分間喋っているアイドルも、全然違うグループですが見かけたことがありました。
そのアイドルは大学と両立させていたためよりハードスケジュールだったのだと思うのですが、そうでなくともどれほど大変かは少しだけでも想像がつきました。
来場者には帰りがけ、ポストカードが配られました。
見るとこの日の生誕衣装を着た水野さんの画像と、横には水野さんからのお礼のメッセージがあります。
しかも全て手書きです。
200枚を優に超える数のポストカードに、文言をそれぞれで変えたていることもあとで知りました。
数日前のインスタで自らを奮い立たせていた「準備」の一端がここに詰まっています。
生誕祭が終わったときの心にわき出てくるのは幸福感が第一でしょう。
しかしそこに加え、準備してきたことが無駄に終わらなかったという安堵の気持ちが混ざっているはずです。
もしかしたら生誕祭というのは、「おめでとう」以上に「お疲れ様」「ありがとう」の言葉をかけるのが一番ふさわしいのかもしれません。
画像1(生誕T)非常に駆け足の、速記のようなライブレポとなってしまいました。
この記事を出した時点ではまだ生誕祭から24時間も経っていません。
長い時には1週間を要してしまう自分にとってはかなりの速さです。
早々に書き上げてしまうことは突発的なものではなく、前もって決めていました。
文法の間違いなど気になることはいくつもありますが、それに目をつぶって(いつももそうですが)こんなに急いだのかには理由があります。
それは、この日5月29日の夕方に行われるライブをもって群青の世界が大きな変化を迎えるからです。
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