【ライブレポ】#透色優色(2023年3月27日)
7人組アイドルグループ・透色ドロップをヘッドライナーとし、馴染み深かったり系統の似ているグループが出演した「 #透色優色 」。
不定期に開催されていますが2023年3月27日のこの日は、透色ドロップのオリジナルメンバー・橘花みなみさんの卒業前最後の対バンライブ(卒業公演は3/30)でした。
ライブのMCでは各グループのメンバーが揃って「ちばな(橘花さんの愛称)さんのラスト対バンということで!」と強調し、他の対バン以上にトリの透色に向かっていくタイムテーブルをもり立てるような雰囲気がありました。
生誕祭がたまに複数グループによる対バン・フェス形式で開催されることがありますが、それに似た雰囲気です。
とりわけ個人的に仲のいいメンバーなどはときに涙したり感じ入っているように見えることもあり、対バンそのものが可愛らしさと儚さを両手に抱えた透色ドロップらしいイベントになっていた気がしました。
アイドル好きの橘花さんが挙げていた各グループの推し曲は、前半のグループはどうかわかりませんが後半組では何曲か披露され、逆に他グループのメンバーが「聴きたい」とちばなさんにリプしていた曲はお返しにとばかりに透色ドロップの出番でかかるという、エール交換のようなセットリストとなっていました。
出演した全6組の持ち時間は25分間で統一、さらにはこれほどの組数やイベント時間では当たり前の並行物販もなく、すべてが平等でした。
駆け込んだ自分はラスト2組しか見られず、個人的に最後になる橘花さんのアイドル姿を見届けてお別れの言葉が言えればいいなくらいに思っていたこともあり、はじめはレポを書くつもりではいなかったのですが、対バンがあまりに温かいイベントだったので何かしらに残さなければという圧力に駆られ、ここに書き残していきます。
思えば、ライブレポを書こうという色気なしにライブにのぞみ、ことのほか良かったから記憶にのみとどめるのはもったいないと、焦りに近い感覚をエンジンにして書き進めるのは久しぶりな気がします。
まずは5組目(自分にとっては1組目ですが)、可憐なアイボリー。
可憐なアイボリー
2月の3マンライブで初めて観たときから、「カレアイ」には一本の道が開けていました。
その時はどこに続くのか分かっていませんでしたが、6月3日に向かう道だと後で知りました。
現在開催中のツアー「青春リベンジ!」最終日の東京公演です。
ワンマンライブで観なければという思いを、3マンの30分で痛く感じたのでした。
現在10人という大所帯からなるカレアイの魅力は、気持ちの良さ。
ここに集約されるかなと思っています。
ぱっと花が咲くような輝きと、伝わりやすさを第一に考えたアイドル目線の歌詞、そしてけれんみのない真っ直ぐなサウンド。
もとはカレアイ向けの曲ではないものもありますが、一家相伝のハニワの曲づくりが見事に桜色とアイボリー色の混ざったグループに合っています。
パフォーマンスに目をやれば、人数の多さでさぞばらついて見えるのかと思いきや、そう思われることを意識してなのか、角を揃えたようにまとまって綺麗です。
以前には、端から端まで長い一本の棒を抱えながらみんなで並走しているようだと書きました。
速すぎてもいけないし、ましてや転んだりすることはもってのほかです。
呼吸と気持ちを合わせていないと出来ないであろうことをやってのけているように見えました。
では10人が感情や個性を抜き取られ、最低限のものを備えた制御可能な人形になっているかというとそんなことはなく、(言い表せるかは別として)一人一人違った匂いを肌に感じますし、枠にはめられて窮屈そうにしている様子も受けません。
正反対ばかりを寄せ集めしたという雰囲気もなく、なにがしかのコンセプトに沿って選ばれたのだろうなという統一された空気感は残しています。
メンバーの個性とは言いつつも、生で観ると全員の顔と名前がまだ若干怪しい自分が書くのは説得力に欠けるのですが...
ありそうでなかったグループ像を、具体的な形で示してくれるという点でカレアイはツボを抑えてきたなという印象でしたし、見ていて胸のすく思いがしたからこその「気持ちの良さ」でした。
この日は月曜日。
土日にツアーで福岡と広島を経てあくる日に東京に戻って対バンという、かなりハードなスケジュールでした。
学生の春休みに合わせているのか、特に3月下旬のこの時期はタイトな日程になりがちです。
タフだなと思ってしまいますが、ステージ上のメンバーは長旅の疲れをものともしてないように見えました。
最近カレアイバージョンのMVを出した「#超絶かわいい」では大人しかったフロアから声が飛び交い、なかでも有名な「推し変なんて許さない!」では歓声が挙がっていました。
「この曲はちばなちゃんに捧げます」
正確な言い回しは忘れましたが、神妙な顔つきで始まったのが4曲目の「アイドルでよかった」。
横一列に並び、パートとともに一歩前に出て語っていくという、ライブ途中のMC風のヴァースがあります。
アイドルを定義する曲で広く認知されているハニワらしい曲です。
サビではしんみりとした語りから打って変わり、スケールの大きなダンスを
踊りだすのですが、目の前が明るくなりだすこのパートで洗い流される感覚を覚えました。
橘花さんとはプライベートでも親交のある名切みあさんの表情が切なげでした。
自分は「僕らはきっとすごくない」が一番好きなのですが、輪になって手を重ねた冒頭のシーンだけではそれとわかりませんでした。
「アイドルでよかった」とともに、橘花さんが推している曲です。
念じてくれたおかげなのか、期待通り聴くことが出来ました。
僕らはすごくないし、特別でもないけど、最高の仲間がいて最高の夢を追いかけているといういさぎのいい曲。
弱さや出来ないことを出来ないことをきっぱりと認め、でも前向きで居続けるという、気持ちの良さをこの上なく表現した曲だと思います。
Cメロで「りえちゃん」コールと伴奏が混ざった急流の中、寺本理絵さんが「汗で〜〜」と歌う姿には貫禄が漂っていました。
透色ドロップ
くしくも、現体制最後の単独公演となった3月18日の「風光る頃」と同じ新宿BLAZEでした。グループにとっても対バンや単独で何度も立った思い入れ深い会場。
現体制の初お披露目もここでした。
橘花さんがこの会場に残してきた思いも相当のようです。
そんな会場が単独と対バンのラストの舞台になったというのは偶然でしょうか。
3年前、グループが誕生したときからあらかじめ決められていたかのような縁を感じずにはいられません。
単独で解禁した、橘花さんにとっては最後の2週間限定の新衣装は、セーラーさんのようなデザイン。
藍色の色合いが重めの印象を与え、それが程よい落ち着きを生んでいます。
新衣装とはいっても、透色ドロップはいくつもある衣装をローテーションのごとく着回していて、その時の最新衣装を毎回着てくるわけでもないのですが、この日は新衣装にお目にかかることができました。
これといったグループのポーズがない中で、ピースサイン2つでハッシュタグポーズを作る「教えてよHashtag」はポーズの新たな候補になるかもしれません。
1曲目。
とにかく耳に残ります。
パジャマ姿が印象的なMVに観られる可愛さに振り切ったつくりは、これまでの透色ドロップには”意外と”なかった色であり、新たな発見・発明の趣があります。
「恋の予感!?」や「キュンと。」なども大まかに見れば似たカラーですが、「教えてよHashtag」はMVがあるだけにより真新しいものとして映りました。
「放課後ストーリーにアップしてるマックのポテトフライ誰かと寄り道かい?」なんてフレーズに、佐倉さんがフライドポテトを食べる動作があるなど親しみやすくスルッと入っていきます。
プラスな言葉をひたすら発していると自然と顔も上に向いてくるものだなと、「いいね」を繰り返すサビを聴いて感じました。
そこにメロディーが加わると、ひとこすりでははがせないほど頭に刷り込まれます。
バズるノウハウを自分は知りませんが、「いいね」連呼のサビ1フレーズ目かラストの「Hashtag #好き」を切り取ればどこからか火が付くのではないでしょうか。
単独でも一番最初の曲でした。
耳から離れないフレーズは、これからの対バンの目玉になっていくかもしれません。
今日が自分にとって最後の姿となる橘花さんは、点検をするかのようにフロアの一人一人とアイコンタクトを取っていました。
このあたり、というぼんやりとした見方ではなく、ここではこの人、とはっきり目標を定めています。
卒業が決まってからの橘花さんは、ちばな推しが思い残すことのないよう配信や特典会など、会える機会と環境を出来る限り整えていました。
特に”その人だけ”に向けたメッセージ付き画像/動画を送るサービスの5限ことonly fiveの供給はすさまじく、毎日のように複数枠で更新していました。
特典会などで話してTwitterも見てパーソナリティーを分かった上で”この人”と出す5限は、書く内容もその人仕様になるわけで、顔がはっきりとしない”ファンのみんな”に送るツイートやブログとはまた別の脳みそを使って大変だと思います。
橘花みなみという存在がいなくなったあとも、その残り香をファンの中で長いこととどめておけるように徹底していました。
1年以上前から頭にはあり、あとはいつ言うかのタイミング待ちだった卒業だからこそ発表後には腹も決まり、供給を大幅に増やしているのだと思いますが、改めて頭が下がる思いです。
卒業の実感は、単独公演の時にはそうした演出を極力避けたこともありあまり感じなかったのですが、「Hashtag」の後からじんわりとやってきました。
「きみは六等星」「君色クラゲ」。
透色ドロップらしい透明感のある可愛らしい曲で、悲しくなるところなんて何もないはずなのですが、現体制で聴くのはもう最後なのかと思うと、ため息が出てしまいます。
Hashtagと同じタイミングで出された新曲の「君と夢と桜と恋と」にも同様の詞がありましたが、楽しいはずなのになぜだか苦しくなってきました。
極めつけはラスト2曲の「夜明けカンパネラ」「だけど夏なんて嫌いで」。
伴奏の音が、いつもとは違って聴こえました。
「カンパネラ」は時々この現象が起こるのですが、裏で聴こえる楽器が妙に悲しげに響くのです。
ライブを離れ、イヤホンを通したときとは明らかに鳴りが違います。
梅野心春さんや瀬川奏音さんが振りまく笑顔の中、橘花さんとのカウントダウンも意識しながらこの音に泣かされそうになりました。
ただ、強調しておきたいのは卒業という、ファン以外の方にとっては個人的なことがらを除いたとしても良いライブだったということです。
佐倉さんの通り一遍でない表情のつくり方、見並里穂さんの跳ねるようなステージングなど、現体制で1年近くかけて積み上げてきたものが大輪を咲かせていました。
このレポを出す3月30日には、橘花さんの卒業公演「アイドルをやらないと死ねない」が開催されます。
これが橘花さんが我々の前に姿を見せる最後の舞台になります。
告知の時、見並里穂さんが口を挟みました。
「私ごとですけど(ちばなとは)唯一の同期なので、みんなで同期の卒業を見届けてほしいです。」
他のオリジナルメンバーが居ない今、これは見並さんにしか言えないメッセージでした。
付かず離れずの2人の関係性を改めて感じ、ここにもまた浸ってしまいます。
まとまったライブレポにする気はなく、Twitterで簡単な感想に収めようと思ったものの、文字数が少ないと逆に書けないことやこっぱずかしさを感じ、秘密基地感のあるnoteでならと思って書き進めていったわけですが、気が付けばこんなに分厚くなってしまいました。
こうするつもりはありませんでしたが、結果としては橘花さんの最後を少しでも文字に残すことができたので良かったのかもしれません。
これは、橘花さんが書かせてくれたレポだと思っています。
その分、いよいよ今日で最後なのか、という寂寥の念も広がっていくのですが...
橘花みなみさん、長い間お疲れ様でした。
これからも幸せでいてください。
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