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【ライブレポ】MyDearDarlin' 3rdワンマンLIVE~僕らの詩~

9月20日(火)、8人組アイドルグループ・MyDrarDarlin’(通称マイディア)の3rdワンマンライブ「僕らの詩」が開催されました。

季節は9月の下旬に入ろうかというところ。
夏の終わりを告げるかのように発生した台風は週末から日本列島に上陸し、西では相次いで飛行機の欠航や電車の運休が起こっていました。
月曜含めた三連休が終わる週明けにかけて関東にも進んできそうです。
進路によっては直撃となる可能性があったため、メンバーは都内会場にも関わらずホテルに前泊したそうです。
前日19日の段階でも怪しかったのですが、当日20日になるとメンバーの「どっかいけ」ツイートの甲斐あってか進路は都内から外れ、開場時間は小降りになっていました。
一方で気温は大幅に下がり、「台風がゆく頃は涼しくなる」という名曲の歌詞通り、長袖を考えたくなるような涼しさになっています。
翌日からはさらに下がるようです。

会場は、東京国際フォーラム ホールC
カーペット敷きの床も、座面が跳ね上がる固定式の椅子も、いつものライブハウスにはありません。
見渡す景色全てに目新しさがありました。
チケットのもぎりをするスタッフの方が背広を着ているというのもなかなか珍しいです。
ホール会場自体は対バンライブなどで行くこともあって無縁ではないのですが、それらは平屋タイプのつくりが多く、それに対し2階席もしっかりとあり、両サイドにウイング席まで作られていて果てしなく高い国際フォーラムは格式高さで明らかに一線を画していました。
これぞコンサート会場というつくりです。

入場すると、開演前のステージには紗幕がかかっていました。
向こうの様子は一切見ることができません。

整理番号もさほど悪いところではないので前から数列目の通路側に場所を取ることができたのですが、開演直前にふと思い立って場所を変えてみることにしました。
フロアは傾斜がついていて、基本的にどこの位置からでも見通しが良いです。
角度は緩めなので、後ろの方にいても見下ろす感じにもならず、ステージ上のメンバーとそこまで遠くなる感じでもありません。
どこからでも見られるのならせっかくだしと、ぎっしりと埋まっていた前方からは抜け出してまだ余裕のある後方に行ってみました。

マイディアのライブの魅力の一つは飛び交うサイリウムの光線です。
アイドル現場に行く回数を重ねると、行きたての頃のようなドキドキしながらサイリウムをかばんに入れるなんていう機会はすっかりなくなり、そもそもメンバーカラーが決まっておらずサイリウムの文化がないグループも昨今珍しくないのですが、マイディアだと持っていないことの方が珍しいかもしれません。
メンバーが8人もいるので、後ろから見ると花火のような色彩に圧倒されます。
これを見れば、人気の理由が分かります。
数えきれないほどのサイリウムが、メンバーの動きに合わせてフリコピで揺れているのです。
初見で目にしたとき、そこで何かただならぬことが起こっているのだと思わない人はいないでしょう。
そして、いずれそこに混ざりたいなと思うようになっていきます。
行列に引き寄せられる心理と似ているのかもしれません。
そうしてまた一つ、二つとサイリウムの光量が増していったのが今のライブです。

しかもマイディアに集まったサイリウムは光に誘われた単なる行列でなく、パフォーマンスの強度という実体をしっかり伴っています。
だからこそ、数少ないライブアイドルしか立てなかったフォーラムに立てているのでしょう。
一度しかない機会、どの角度から観ればいいのかは選択肢がいくつも残されていただけに迷いました。
しかしマイディアの場合はサイリウムもライブの重要なワンピースです。
メンバーのアップはのちのDVDで観ればいいかと思いながら、後ろの方に行きました。

2020年頭の結成からメンバーの入れ替えを経てここまでやってきたマイディア、1stワンマンはO-EAST,2022年2月に行われた2ndワンマンではZepp Hanedaと、会場の規模をワンマンライブのたびに大きくしていき、そのたびに何かしらの試みを用意してきたようです。
3rdワンマンを迎えるにあたってもそれは同じで、カウントダウンブログなどではメンバー揃って「新たな挑戦」をすると書いていました。
水城梓さんに言わせれば「クリエイティブさ」がマイディアの強みであり、新曲披露や多少の振り付け変更は「ありきたりのこと」とまで東條ゆりあさんは言い切ります。
さらに驚くような仕掛けがあるのだと堂々と宣言しました。

誰もが驚くそのチャレンジの中身は、ライブが始まって早々に知ることになります。
定刻を少し過ぎたころ、流れてきたのは耳なじみのないメロディーでした。
特別な一日のためにその日限りのSEが流れるのはよくあることです。
しかし、どうもあらかじめ作られた音源を流している感じではなさそうです。
今まさに、目の前のステージから出されている音のようでした。
紗幕の向こうに、音の出所はありました。
中央に真っ白な階段が伸び、二段に特設されたステージの両端にバンドメンバーが立っていたのです。
下手にギターとベース、階段を挟んで上手側にはギターとキーボードだったと思います。

メンバー総意でやりたかったことは、グループ初の試みである生バンドを従えてのライブでした。
全編通してではなくスポットでの出演ですが、当然予告は全くありませんでした。
普通、バンドセットライブをするなら前もって告知はするはずです。
今年バンド付きでワンマンを開催したグループはいくつかありましたが、どのグループもあえて隠してはいません。
バンドセットその事だけで、大々的に宣伝したくなるくらい重大なのです。
ところがマイディアはこの事実をジョーカーとして隠していました。

実はマイディアは10月に新宿BLAZEでバンドセット付の4マンライブを予定していました。
本来ならば3rdワンマンは7月11日に開催のはずがコロナの影響で2カ月以上伸びてしまったため、ワンマン開催に先だって発表された10月の対バンを2回目だということも出来ず、サプライズを貫き通すために「初めて」だと嘘を言うしかなかったのでした。
MCでも触れていたように、マイディアの曲はオーソドックスな編成のバンドサウンド(+時々ストリングス)が多いので、勢いのいいメロディもあって生バンドとの相性はピッタリだとは思っていました。
それだけに、初めての機会が単独ライブでなく4マンライブというのはどうももったいない気がしていたのですが、嬉しい形で裏切られました。
恐らく、マイディアのワンマンがあった上での4マン開催だったのでしょう。

バンドの登場は完全なサプライズだったわけですが、今にして思えば予兆はありました。
本番前のことですが、見えない紗幕の向こうから何か音が聴こえてきたのです。
客入れをしている段階のステージには基本は誰もおらず、もぬけの殻のはずです。
開演1時間を切って慌てて設営をしているわけでもないでしょうし、そもそもそういう動きの中で出てきた音でないことはすぐに分かります。

ただ、アイドルのライブはステージはからっぽが当たり前で、音が出てくることなどないのですが、これが例えばバンドとなると話は別です。
整然と楽器が並び、スタッフが音を出してチューニングを確認していたり、バスドラのフットペダルを踏む音が聴こえて来ることもあります。
無音ではなく、音出しが心地いいBGMかのように思えてくる、そういう時間があります。
座って開演を待つ間、ほんの一瞬でしたが、その時に近い音の匂いがふわっと漂ってきた気がしました。
いつもであれば大っぴらに音合わせが出来るのでしょうが、今回は特別にサプライズなので控えめです。
もしかしたらこの後のライブには、メンバー以外の音の発信源があるのかもしれない。
メンバーの誰かが演奏するなんてことも含め、頭をよぎりました。
ただこうしたことは後にバンドセットだったから言えることで、単なる気のせいだったら点と点はつながりませんでした。
始めはそれぞれの楽器から散らばって出されていた音が、幹音を鳴らすキーボードの音で収束していきました。
音が規則性を持ち、やがて聴きなれたメロディーに変わっていきます。

My Dear」のメロディーだと分かるころは、いつの間にかステージの4隅や階段の上に散らばって立っていたメンバーに薄い青のスポットライトが当たったあとで、既にステージ中央の階段を使って1列を作っていました(少し記憶違いがあるかもしれません)。
紗幕が上がり、静かに「My Dear」が始まります。
こうして書いてみると実にあっさりとした感じになってしまいますが、当時は冒頭のワンシーンからイントロがかかるまでの数分間の演出は、次の展開が気になって仕方がなくなるような丁寧な構成でした。
ステージはこの日のために作られた2段構えの特設ステージでした。
2階席と同じ目線だという高い段を支える土台部分の、こちらから見える側は波打った模様をしていて、ホールという会場の雰囲気も手伝ってパイプオルガンの連なりのようにも見えます。

メンバーが着ていたのは、この日からお披露目の新衣装です。
こちらも白がメインで、キラキラとした中に黒の装飾やブーツが光ります。
全員でシルエットが統一されていたこれまでの衣装からは一変し、メンバーごとに見た目がバラバラでした。
ターンした時に広がりそうなレースを従えているメンバーもいればパンツスタイルのメンバーもいますし、スラっとしたアウトラインのメンバーもいます。
お腹を出して腹筋が見えるセパレートタイプは相変わらずですが、なんだか一つも二つもアイドルとしてのステージを上がった感じがしました。
白を難なく着こなせるのも、やはりマイディアの凄いところです。
この日何度となく、ショーケースの向こう側の人形を観ているような気分にさせられました。
東京国際フォーラムというのもベストマッチで、この会場で魅せるための衣装でしたし、この衣装を輝かせるための会場でした。

始まって早々陶酔してしまい、しばらく記憶が飛び気味です。
時間を遡って丁寧に書くのはここまでで、ここからはライブレポの体をなしていませんが全体的な感想を書いていこうと思います。
一曲ずつの振り返りはライブ翌日に丁寧なレポが上がっているので、これだけで十分だとしてこの記事では逃げます。

後ろから観るという選択をしたのが正解だったのかは今でも分かりませんが、少なくとも後ろからだとサイリウムの波は一目瞭然でした。
ライブ後に公式アカウントが上げる映像以上に、肉眼で観る光景はすさまじいです。
ユニゾンでは7色に光っているのですが、見どころは誰か一人のメンバーの色にスイッチするソロパートです。
ここの切り替えがとても速い。
DD気質の人がソロのたびに忙しく色を変えているのではなく(それもあるのかもしれませんが)、単推しの人が自分の推しのパートでここぞとばかりに一斉に突き立てていたのですが、他の色が引っ込んでソロのメンバー推しの人の色が前に出てくるという光景が、固定椅子付きで席間の移動が出来ない状況でも見られるのだなと驚きました。
特にメンバーごとに偏りがないようにも見え、歌割の切り替えとともに光量が落ちずに等しく光っているさまは、ごくまれにライブで見かける無線制御システムによって、ファンの意思とは無関係に開場側で強制的に色を変えているのではないかと思ってしまうほどです。

全てを書けませんが、この日オンステージの7人それぞれで光り方は様々でした。
東條ゆりあさんが歌うときは、フロアが燃えているように見えました。
サイリウムカラーは、オレンジです。
ステージの足元から焚かれている情熱的な色は、いくぶんフロアの温度を上げていたような気もします。

篠崎麗さんのソロパートでは、ピンク色が振り下ろされるまでにごくごくわずかなためらいがあったように思いました。
篠崎さんは3rdワンマンから1週間後にグループからの卒業を発表していて、これが最後のワンマンライブです。
フロアから観てきた3年弱に想いを馳せる時間が、空白となって表れていたのかもしれません。
しかし、いざ振り下ろされた時の勢いは格別でした。

水城梓さんカラーのアクアブルーは、ライブ前の本人の要望に忠実にパートの多めな下手側に固まっていましたし、是枝優美さんの時は前方中央に列を成した、是枝軍団とも言うべきオタクが画用紙や緑色に光る大きな輪っかのようなものを掲げてアピールしていました。
こういったサイリウムの一つ一つがマイディアをフォーラムまで連れて行ったのだと思うと、自分はまだ半年程度ですが感慨があります。

フォーラムに立ち、混然としているライブアイドル界で一歩抜けた印象があるマイディアですが、遠くに行ってしまったのではなく今までと変わらない距離感のまま箱の規模が大きくなっていったようなライブでした。
どぎついレーザー光や、まさか用意されているとは思わなかったCO2ガスの特効は、クラシックや演劇のイメージが強いフォーラムには似つかわしくないのですが、登場してしまえばマイディアの土俵です。

印象的なシーンがあります。
二段に作られたステージよりさらに高いところには、モニターが掲げられていました。
クレーンカメラで撮ったライブの模様がここに映し出されています。
ここに、時々アップで抜かれたメンバーの顔が現れるのですが、ステージから目線を上げてモニターを観たとき、どのタイミングでも表情が画になっていました。
センターではなく、少し後ろのフォーメーションにいても関係ありません。
クレーンの首が自在に動くので、踊りながらだとカメラに狙いを定めるのが難しいと思いますし、メンバーも端からそんなつもりはなかったと思うのですが、間近のフロアから見上げられるいつものライブハウスのように、表情管理にも隙がありません。

モニターを通した一方通行の表示だけでなく、生での対話も積極的でした。
フォーラムはホールなだけあって最前列とステージとの間の通路が広く、演者とフロアとの間に明確な空間として境界線が引かれています。
O-EASTのような、大きいけれどもステージ距離はさほどない会場とは大違いの距離感です。しかしメンバーは、その間を埋めるかのようにフロアと会話を交わしていました。
自分の色のサイリウムを視力の限界まで探してレスを送り、それに気が付いたフロアが応えてまた一段と揺れるという連鎖反応が生まれていました。

個人的にハイライトだったのは「アイスクリーム」でした。
身体がぞくぞくするような感覚は、今でも少し残っています。

アットジャムのメインステージに2回も立つなど、マイディアの存在感は日ごとに増しています。
夢実あすかさんの言葉を借りれば、活動の規模を大きくしていった末の「火星ライブへの通過点」として重大なこの舞台でしたが、ついに来たというしみじみとした感情よりも刹那的なライブの楽しさのほうがよほど勝っていました。
アンコール後に解禁された、「2023年2月27日、4thワンマンを中野サンプラザにて開催」というお知らせを秘めていたからというのもあるのでしょう。
たどり着いたというにはまだ早いのだという匂いが漂っていました。
モニターにたびたび現れた筆記体の「MyDearDarlin’」の文字も、自信ありげに見えてきます。
上がっていく未来しか見えないときに生まれてくる自信です。
VJなどモニター付きのライブでは、以前にもグループ名のみデカデカと表示されたことがありました。
歌詞ではなく、グループ名だけが大写しになっているのです。
堂々と看板を掲げられるくらい、マイディアというグループが多くの人に価値を残しているということなのでしょう。

生バンドで披露した「FLOWER」のアウトロで、階段を駆け上がっていくメンバーに並ぶように紗幕が下りていきました。
下がりきった紗幕に隠されてメンバーがシルエットだけになります。
その向こうでポーズをとって本編が終わりました。
遊ぶだけ遊んだ人形が元の配置に戻っていくかのようです。
その間、アウトロの最後のフレーズが繰り返し演奏されていました。

アンコールで初披露となった新曲「君の声」は、延期となった7月からずっと温めていた曲でした。休養中の美咲優羽さんも含めた8人でそれぞれ言葉を持ち寄り、一つの歌詞に紡ぎあげたそうです。

「アイドルって人と比べられながら生きる日々で、弱気になって辞めようかと思うことは何度もあった」
トークでこんなことを言った東條さんのソロから始まる冒頭の歌詞を考えたのは、恐らく東條さん本人なのでしょう。

「今ここにいる僕は君にはどう見えるかな? 自信なんてないし内心、弱気な心だけど」

君の声

他のパートにも、自らで考えた歌詞を自らで歌っているメンバーはいたのだと思うのですが、ここが凄く印象に残りました。

アンコール3曲目の、ワンマンライブのタイトルにもなっている「僕らの詩」で紙テープが飛んでライブの幕が閉じました。
下りてくる紗幕と床との隙間が数十cmになろうかというギリギリまでメンバーがかがんで手を振っていました。

「ここまでたくさんの変化があって、そのたびに受け入れてきた」
リーダー・咲真ゆかさんの言葉です。3年近くも活動していれば多くのグループが経験するであろう卒業や加入に加え、コロナなどもありました。
コロナ禍のなか覚悟を決めて生まれたグループも多い中、2020年1月にデビューしたマイディアにとって降ってわいたような災難だったと思います。
デビューから2カ月で、走り出したもののまだグループの形が見えてこない時期に直面した災厄は、その後の活動や身の振り方に大きな影響を与えたことと思います。

曲名の「七転八起ドリーマー」ならぬ「百転百起」なんていう造語も飛び出しました。
コロナ禍以降のグループとは違い、フロアからの声がないことを前提としないままデビューし、グループとしてまだ熟してもいないうちにそんな状況に放り出されたのは大きなハンディキャップだったはずで、片腕を失ったような状態からよくここまで登りつめたという感銘しかないのですが、ハンデを背負ったのにここまで来たというのは、言い換えればまだまだ上がっていく余地があるということです。

かなり先に感じる2月末の4thワンマンの頃にはどんな状況になっているかわかりませんが、制約の多いこの世の中で新時代を築いたマイディアに欠けていた、コールという片腕がついたときにどんなライブになるのかが楽しみになってきました。


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