【ライブレポ】Fragrant Drive 2/20 三田のえ生誕祭
2月20日(土)にお茶の水にあるYMCAスペースYホールにて行われた表題のライブに行ってきました。
Fragrant Driveは、前身グループの合併などを経て、2018年末に結成された、現在5人組のアイドルグループです。
今回は、2月13日に誕生日を迎えたばかりの新メンバー・三田のえさんの19歳の誕生日を祝した「特別編」でした。
ライブのセットリストは三田さん発案だそうです。
生誕委員の方に青のペンライトを頂いての入場でしたが、そういえばアイドルの生誕祭には久しく行っていなかったなと、使い捨てサイリウムの触感を覚えながら思い返していました。
このnoteでは、Fragrant Driveについて、以前に1stシングルの「胸の奥のVermillion」という曲のことで記事にしたのですが、生ではまだ観たことがありませんでした。
今回初めて観ることとなったわけなのですが、とりあえずライブ全体の雑感を書こうかと思います。
歌声の統一感
たった数カ月前に新体制となったばかりとは思えないほど、歌声にまとまりがあったように思えます。
特にサビで5人の声が揃うところはユニゾンでもハモリでも非常に綺麗でした。
メンバー個人個人としては、ソロでも活動しているという新メンバーの辻梨央さんの歌唱力が抜けているのかな?とは思ったものの、全体としての歌声のまとまりのほうが強く耳に残りました。
さながらセルロースの繊維が何層にも重なって一枚を成している和紙のように綺麗に薄く重なっているような感覚です。
例えばこの日披露された「Snow Dust」「Melt」「℃repuscolo」などはサビ前までは各メンバーのソロで繋がれ、サビで一層の盛り上がりを見せます。
これらの曲のABメロには抒情を古風な言い回しで表現したような歌詞が目立ち、そのメロディーと相まってかなり繊細です。
この繊細さはまるで触れたらいまにも落ちてしまいそうな枝や花弁かのようです。
なによりそれを演出しているのがそれらのソロパートを担当するメンバーの歌い方であり、高音でのファルセットなどが効果的に出ている印象でした。
そうしたABメロを伝い、サビではユニゾンなりハモリでメンバーの声が重なっていくのですが、こちらは統一された盛り上がりとなり、けれどもうるさくもなっておらず気持ちの良いバランスに聴こえました。
さらに2番サビも終わり続く落ちサビでは再びメンバーのソロパートとなるのですが、ここではABメロのソロとは異なり、パートをあてがわれたメンバーが見せ場を存分に使いつつ、歌詞をかみしめて歌っていることが伝わってきて、ここも素晴らしいです。
例えば「Melt」という曲の落ちサビでのこのパート。
冷たい雪が唄い融ける春 やがて背中を押すかのように咲いて
リーダーの板橋加奈さんがこのパートを担当しているのですが、歌い終わりに若干テンポを落しながらフェードアウトしていく歌い方、そしてそれにかぶさって聴こえてくる大サビによって、未練の気持ちが残る歌詞をいみじくもメロディーに投影しています。
この動画でもそれが見て取れます(動画内2分57秒)。
別の曲だと、「胸の奥のVermillion」は先述のように過去の記事でご紹介した曲で、記事を書くにあたって何十回も繰り返して聴いていました。
今年に入ってからは間違いなく一番聴いた曲であり、それだけ思いも強くなっていました。
そうしたこともあって、生で聴くことのハードルはかなり上がっていたような気がするのですが、それさえも超えられました。
サビまでのソロの流れと、サビで一気に色が広がるような響きあいは見事にホールを埋め尽くしていました。
また、歌声の統一感を証明するかのような場面はライブの最終盤にもやってきました、
ライブの最後の曲として「Growing Up」が披露されたのですが、2番サビあたりから急に伴奏の音が消えてしまいました。
これが音響のミスなのか意図してのものなのかよくわかりませんが、その後のメンバーは最後まで伴奏なしのアカペラで歌うこととなりました。
通常よりやや長めの尺のライブの最後、体力的に一番しんどいであろうところで、しかもアカペラというのは歌声のごまかしがききません。
トーンダウンしてもおかしくないようなところで、しかし歌声はさいごまで劣ることがありませんでした。
伴奏の勢いに乗っているだけではないんだなと分かります。
バレエにも通じる(?)しなやかさ
また、歌声だけでなく振り付けにおける手首から先のしなやかさという点も、Fragrant Driveの魅力として注目すべきポイントかなと思います。
今回披露された曲で顕著だったように思いますが、曲の振り付けでは大きく見せるような動作というより、手首より先を強調したような動作が多いように感じて、こちらに自然と目が行きます。
そのしなやかさや、腕をまっすぐ上げた先のピンと伸びた指先も綺麗です。
これは後述する三田のえさんのバレエとも大いにリンクするように思えます。
いずれは長尺のライブで
今回のFragrant Driveライブ時間は45分用意されていました。これは、20~30分くらいだという通常のライブよりも長く、まさに「特別編」です。
この間ノンストップで5曲連続のパフォーマンスも披露され、最終的には9曲も聴くことが出来ました。
かなりの充実ぶりです。
以前にメンバーの伊原佳奈美さんがこうつぶやいていましたが、長尺ライブを観たからこそ、もっとたっぷり時間をとったワンマンライブを観てみたいという気持ちも芽生えてきます。
45分で帰ってしまうにはもったいないほど、今回のライブの空間は心地よく感じました。
三田のえさんソロコーナー
さて、今回は三田のえさんの生誕祭ということで、通常のライブに加え、三田さんだけのための時間としてソロコーナーも設けられました。
三田さんはバレエ経験があるということで、セルバンテスの小説「ドン・キホーテ」を題材とした同名のバレエ作品から、主人公「キトリ」役としてヴァリエーションを披露していました。
僕はバレエに関しては全く分からないので詳述もできませんが、和と洋の綺麗な融合を観たような気分です。
三田さんがステージの端から端までスーッと移動し、両足を大きく開脚したジャンプをしている三田さんの姿は、全く知らずともまさにバレエの動きといったイメージでした。
メンバーも言っていましたが、身のこなしが軽く、ジャンプの滞空時間の長さに驚きました。
まさにバレエの「洋」たる部分です。
それに加えて、三田さんの肌の白さやおろした黒髪の綺麗さというのはどこか日本人形というか和の要素も残しているように思え、原作とはまた違う世界を映し出しているようにも感じました。
バレエの所作はしなやかさが一つのポイントとなるのかなという気がするのですが、先述したようにしなやかさが目立つFragrant Driveの曲の振り付けの中で、経験者である三田さんの存在は大きな武器なのかなと、初見ながら思っていました。
ところで、三田さんはソロコーナーこそ堂々たるヴァリエーションだったのですが、MCとなると一転、その場でなぜかステップを踏んでそわそわしだしたりと、とにかく慣れていない感が伝わってきました。
本来ソロコーナー中は撮影可能だったらしいのですが、ヴァリエーション披露の前にそのことを言い忘れており、MCを巻けばもう一回できるのかも!という話になっていたのですが、結局そのMCじたいが押し気味になってしまい、おかわりとはいきませんでした。
このように若干のグダグダさはあったのですが、慣れなさとバレエの立ち居振る舞いの大きな振れ幅というのも彼女の一つの魅力かもしれません。
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最後に、個人的な話で恐縮ですがFragrant Driveのライブにお邪魔する経緯を書いてこの記事を締めようかと思います。
僕がFragrant Driveを初めて知ったのは、元PASSPO☆のメンバーであり現コレオグラファーの槙田紗子さんが主催する「サコフェス」という対バンライブでした。
槙田さんが振り付けなどで関わっているグループが出演するという対バンライブだったのですが、「サコフェス Vol.3」にてFragrant Driveが出演していました。2020年11月のことです。
Fragrant Driveは2020年に所属事務所の移籍やメンバーの移籍などがあり、最終的にグループに残ったメンバー3人に新たに辻梨央さんと三田のえさんが加わり、11月に新体制となっていました。
サコフェスのときはちょうどその2人の初お披露目の場でもあったのですが、この時の2人の姿があまりに対照的でした。
もともと別グループでのアイドル経験があったためか初めてとは思えないほど堂々としていた辻さんに対し、アイドルが初の三田さんはMC中のあいさつで感極まって涙を流してしまっていました。
以下に貼った動画内ではそのサコフェスに向けた舞台裏映像がまとめられているのですが、三田さんはステージに上がる直前にも泣いていたようです。
でも、動画内の稽古の様子を見ても、どこか緊張の空気が漂っていることを画面越しに感じるので、当事者たるメンバーのそれは確かに相当なものだったのでしょう。
さて、サコフェスを観た目的としては別アイドル目当てだったのですが、結果としてトップバッターとして出演したFragrant Driveのパフォーマンスがいちばん目を引きました。
僕が観ていた媒体が配信だったということもあってでしょうか、歌としては「あれ?」と思うグループもあった中、Fragrant Driveの歌声が安定していたように思えたのです。
その中で特に印象的だったのが、先述した「胸の奥のVermillion」であり、これがライブに足を運ぶきっかけとなったのですが、今回生で観てもその印象に違わずといったところでした。
可能性がまだまだありそうな三田さんはじめ、今後どうなっていくのかは追いかけていきたいですし、必ずまた観に行きたいグループです。
見出し画像:東京アイドル劇場公式ツイッター(@tokyoidolgekijo)より