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【ライブレポ】サンダルテレフォン定期公演「エス・ティー Vol.6」

3月12日(金)に4人組アイドルグループ・サンダルテレフォンの表題の定期公演が恵比寿CreAtoにて開催されました。
サンダルテレフォンは月一回ペースで定期公演を開催しており、今回は6回目の公演となります。

早速ライブレポに移ります。

トピックはこちらです。

・空気を変える夏芽ナツさんの歌声
・振り付けの打点の高さ
・「SYSTEMATIC」をきっかけに変わったライブの見方
・「バランサー」藤井エリカさん

空気を変える歌声

ライブ序盤というのは、会場の空気が暖まっていないことがままあります。
開演までフロアに漂っているある種異様な雰囲気だったり、何より演者であるアイドル自身の緊張感などが重なり、なんとも言えない空気がたちこめていることなどによるのでしょうか。

もっとも、そうした緊張感も2曲目、3曲目と曲目を経るにつれ楽しさに変わっていき、結局ライブが終わってみれば「楽しかったな」となるのですが。

ですが、今回のサンダルテレフォンのライブでは一曲目の「かくれんぼ」からそんな堅い空気は何処かに飛んでいったように思えました。

特にその感覚を覚えたのが、夏芽ナツさんの歌声を聴いたときでした。

開演直後から夏芽さんの歌声は強く、PAでマイクの音量を若干落としても全然良いのではないのか、というくらい分厚い音がこちらに届いてきました。

歌声の良さは単なる音圧ではかるものでもないことは承知していますが、それでもこの日の夏芽さんはいつにも増して声が出ているように思え、それが緊張感が残るはずの序盤の空気を激しくかき回しているような気がしました。

以前のライブレポで「夏芽さんの歌声は他のメンバーをうまく溶かしこむ」ということを書きました。
その繋がりで言うと、他のメンバーと溶け込みやすい夏芽さんの歌声だからこそ、いつもより音圧を増したその歌声はユニゾンやハモリのボリュームすらも大きくし、結果として全体の勢いを増すこととなったのかもしれません。

具体的な記憶として残っているのが、「真夏の匂い」という曲での

分からないふりをしてにやけてる

というソロパートです。

この日、夏芽さんの歌い終わりが心地よく揺れていました。
「にやけてる~~~」のこの「~~」部分が、ビブラートを超えてまるで「~」をメロディに起こしたかのようにうねって聴こえました。
ビブラートの激しい揺れからも、夏芽さん自信もかなり楽しい気分となっているのだろうなと伺えます。

「真夏の匂い」は夏の楽しさを感じつつ、それが永遠ではないことの寂しさもにじませるような夏曲なのですが、夏芽さんの歌い方は、その世界観を最もよく示しているような気がします。

ダンスの打点の高さ

また、緊張をほぐして楽しさを増幅させているもう一つの要因として、曲の振り付けでの打点の高さもあるのではないか、そう感じました。

ライブ会場の恵比寿CreAtoは、ステージが決して高くはありません。50cmくらいでしょうか。
かといって見やすいような工夫がなされているかというとそうでもなく、後方2,3列分が一段高くなっているのみで、満員の入りでは観づらいと言わざるを得ません。

僕はサンダルテレフォンの定期公演に行った3回とも、一段高くなっている段差の直前、一番観づらい位置に立っていました。
基本満員なので前にはたくさんのお客さんがいますし、先述したステージの低さもあってステージ上のメンバーは上半身、場合によっては首から上しか見えません。

今日に至っては下手側は全く見えず、MCの時に最下手に立ってMCを回している夏芽さんの姿を目で追うことができませんでした。

そうした状況でも、しかし3回が3回とも満足のままライブを終えました。

その理由としては、サンダルテレフォンの曲自体の良さ、メンバーの表情、歌声の綺麗さ、そしてステージとフロアが一体となった盛り上がりなど、多少景色が見えづらくともそれを補って余りあるくらい魅力的な見どころが多かったということは間違いなくありますし、これまでもライブレポにて書いてきたことです。

ですが、今回ふと認識したのが、上体の動きだけでもはっきりと分かる振り付けや、こうした観づらい会場の性質に合わせてでしょうか。心なしか振り付けの打点を普段よりも高めにしているようなメンバーの動きというのも、こちらがライブの流れに置いてけぼりにされずに楽しめる理由の一つなのではないかということです。

例えば「Follow You Follow Me」という曲のサビでは、フォローボタンを押すかのように指でタップする動作があるのですが、ここではメンバーみな身を乗り出すように、後方まで届くようにタップしてくれます。

このパートは、場合によってはメンバーと目が合ってこちらに向かってタップしてくれる、いわゆる「レス」が貰える可能性も高いパートです。

もちろんその楽しみもありますが、たとえ目が合わずとも、身を乗り出して振り付けをしてくれるメンバーを観るだけで、これを後ろまで届けようという姿勢が垣間見えます。

他の曲でも思い出すのは、例えば西脇朱音さんは、「Step by Step」でのサビ「いつだって本気で生きてきた」という歌詞の終わりに大の字にジャンプするパートにて、最も滞空時間長く跳んでいるように思えました。
高いから、長いからそれだけ良いと一概に言えるものでもありませんが、少ない隙間から見える景色として強く印象に残ります。

SYSTEMATICの世界をやっと理解した

今回のライブで披露された曲で最も刺さってきたのは、2021年1月にリリースされた1st EPの表題曲「SYSTEMATIC」でした。
刺さってきたというより、やっと曲を咀嚼することが出来たような気がします。

まだ回数も浅いのですが、サンダルテレフォンのライブに行って一貫して思うのは単純に「楽しい」ということです。

各曲メロディとしてのジャンルは様々ですが、どの曲にも共通して親しみやすいポップさがあり、「沸く」とは若干違うとは思うのですが、流れてくる音に身体を預けながら楽しむというイメージが一貫してあります。

ですが、「SYSTEMATIC」はこれらとは少々違います。例えば、サビの歌詞でもこんなフレーズが並びます。

システマチックな恋愛で スマートぶりを魅せても
中身のないハリボテじゃ めかし込んでも ダメダメだってもう
飾られた言葉なんて聞きたくないから さようなら

「システマチック」に物事を進める恋に愛想をつかした感情を歌ったような、一言でいえば大人っぽいテーマの曲です。

「SYSTEMATIC」については以前も紹介記事として書きましたし、その中で歌詞も読み込んだため、こうした曲だという認識は多少なりありました。

しかし、これまでのライブの中では、他の楽しい曲に挟まれることによってかなぜかその印象が薄まり、そこまで重いものとして聴いてはいませんでした。
歌詞というよりもむしろメロディー重視で、歌謡曲風のメロディにひたすら身体を任せていることが多かったです。

ですが、この日は何かが違っていました。
まずは曲への導入から。
いつも通りイントロから始まらず、2人ずつ背中合わせになったメンバーが若干テンポを落としてサビを歌い、若干の間を開けてやっとイントロへ移る、という凝った導入がなされました。

この、冒頭にメンバーのアカペラから始まるという演出は過去に一度なされたらしいのですが、初見の僕にとっては面食らうものでした。
過去に何度も「繋ぎや演出が凄い」と書いてきましたが、ここでもやられました。

いきなりの演出でゾクっとするような感覚を浴びたのですが、この演出はこちらに「いつもと違う特別感」を味わわせてくれた上に、曲の世界を味わうための一つの橋渡し的な役割となってくれていたように思いました。
そのおかげか、いつも以上に歌詞を反芻し、さらにその世界を4分間の曲中に詰め込んだメンバーの表情にも見入ってしまいました。

伴奏を排してアカペラに近い状態で一旦始まったことにより、真っすぐ歌詞が入ってきたのかもしれません。

一度「SYSTEMATIC」の世界に入ると、楽しいだけではなく、また違ったフィルターをかけてステージを眺めることができました。

他の曲でもメンバーの「憂いの表情」など色どり豊かな表情が目につき、サンダルテレフォンを観る新たな入口が広がったような感覚です。

例えば乗れるダンス曲である「Magic All Night」なども、イントロから1Aメロの歌いだしに移るまでの西脇朱音さんや夏芽ナツさんが見せる、まっすぐ前を見据えた表情には真っ先に惹きつけられました。

また、「SYSTEMATIC」の話に戻すと、もう一つ覚えているのがメンバー同士のコミュニケーションでした。

曲の1Aメロで小町さんが歌う主旋律のパートが終わり、続く夏芽ナツさんのパートに移るとき、二人はまるでバトンを受け渡すかのように、サッカーの選手交代の時かのように軽く手を触れあっていました。
後ろの見えにくい位置からでも分かる程度、それでいてさりげなく自然なタッチでしたが、ここにはパートを託し、それをしっかり受け取った、という二人の間での意思疎通がはっきりと見て取れました。

他の曲でも、特に夏芽さんは視線を横に送ってメンバーとアイコンタクトを取っていたりと、お客さんがいるフロアとだけでなくステージ内でも気持を通じ合わせているのが見られました。
ステージでのやり取りというのも、ライブの動的さを実感するところです。

さて、ライブレポももうこれで終わりですが、最後にこのメンバーを取り上げて締めくくろうかと思います。

藤井エリカさん

藤井エリカさんはときにグループの「バランサー」と称されます。
そこにはパフォーマンスの調整能力や普段の立ち回りなど様々な要素があるとは思うのですが、この日、それの一端を見た気がしました。

それが、高低の差が大きいソロパートでの歌声です。
例えば、「かくれんぼ」という曲で任されているソロパート「一体何のために遊び始めたのだっけ」は低いのに対し、前回定期公演でリミックスバージョンが初披露となった「Sleeping Beauty」での「君が待ってるから」というパートは高かったりします。

特に「かくれんぼ」の低音パートは歌いづらそうなのですが、ここでの藤井さんから出されるメロディーは見事にハマっていました。

サンダルテレフォンのメンバーの歌声を概観すると、ボーカルでメインを担う小町さんは落ち着いた、どちらかというと底から支えてくれるような感覚で、一方夏芽さんは先述した「真夏の匂い」のように鼻をつくハイトーンが大きな特徴かなと思っています。

西脇さんも高めの印象ですが、藤井さんの場合は高低どちらの声質も強く、そのくくりの何にも染まっていない印象があります。

そつなく高低の歌声を響かせることができるというのは、まさに藤井さんがバランサーたるにふさわしい所なのではないでしょうか。

ーーー

新しいお知らせが毎回発表されるというサンダルテレフォンの定期公演ですが、今回の内容は特に盛りだくさんでした。

大きな目玉は、この日初披露となった「ワンダーランド (Kenichi Chiba Remix)」も収録の2nd EP「碧い鏡 / It's Show Time!」が6月8日にリリースされるという発表です。
それに伴うインストアでのリリースイベントも、3月20日の大阪を皮切りに開催されることが明らかとなりました。

タイトルからもなんとなく察せますが、表題の2曲はそれぞれ雰囲気がまるで違う曲のようで、初披露が楽しみです。

また、第7回の定期公演が4月9日(金)に開催されることも発表されました。
サンダルテレフォンは4月21日(水)に2周年記念ワンマンライブ「在る」を渋谷WWWにて予定しています(前売り券完売)。
そのため、スケジュールの間隔などを考えると、次の定期公演はこのワンマンライブの後、したがって4月分を飛ばして5月開催かなと思っていたので意外でした。
あくまで月一ペースを守っています。

行けるかどうかはまた別の問題ですが、2ndワンマンという大舞台が控えている月ゆえ、無くても不思議ではないような状況でありながら、貪欲にライブの機会を作ってくれるというのはありがたいことです。

次観る時はどういう演出があるのか。
いい意味で期待を裏切られ続けると、初めからハードルを上げに上げていても良いような気がしてきます。

見出し画像:サンダルテレフォン公式ツイッター(@sandaltelephone)画像を改変


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