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【ライブレポ】10/16 TOKYO GIRLS GIRLS (透色ドロップ/群青の世界/MyDearDarlin')

2022年10月16日(日)に、品川インターシティホールにて「TOKYO GIRLS GIRLS」が開催されました。毎週末のように開催されている「TGG」あるいは「ガルガル」と呼ばれるイベントですが、最近2周年を迎えてからは東京に留まらず大阪や福岡などでも開催されており、平日に行われることも増えてきました。
規模が大きくなっていくに伴って出演するグループも増え、動員も多いので週末の目玉イベントに定着している感があります。

特にこの日は、TGG常連のグループだけでなく、これまで出演したことがなかった人気グループの出演も目立つなど、ラインナップは総集編の様相でした。
名前くらいしか知らないグループの方が多いですが、漏れ伝わってくるライブの様子や名前を連ねる他イベント等を観るに、恐らく朝から晩まで耐久レースをしたとしても削り取られる体力以上に得るものは多いはずです。
気になるグループは増えるはずですし、特典会に行かずともライブだけで満足させてくれるグループばかりです。
TGGはレギュラーのみならず番外編でも良いグループが結構出演している印象があり、わりと信頼あるイベントだと思っていますが、この日はその中でも厳選されたグループの出演でした。

そう言っておきながら、自分が見ていたのは3組だけなのですが、全37組のたった3組、合計して1時間10分くらいの時間でも十分すぎるくらいの収穫を得たなと思っています。
その3組について、魅力が少しでも伝わるように書ければと思います。

◆透色ドロップ

前日のイベントを梅野心春さんが体調不良により欠席し、加入から半年以上経ったこれまでに学業以外で穴を空けることが(恐らく)なかっただけに心配していたのですが、この日は大丈夫なようでした。
体調が戻った梅野さんから一列になってSEとともに下手から登場してきました。
7人が3,2,2に分かれて縦3列に並ぶフォーメーションのパターンは複数あります。
どの曲かなと思っているところに、軽いタッチの鍵盤の音が流れ込んできました。
自分嫌いな日々にサヨナラを」。
9月から始まった全国7箇所をめぐるツアーの直前にリリースされた新曲です。

直前の出番だった「ベイビークレヨン」が、ギターやドラムなどバンドのあらゆる音を使ってこちらを押してきたのに対し(初見でしたがここもかなり良かったです)、透色ドロップは懐に入っていくような曲からのスタートでした。
動静で単純に図式化するなら静に分けられ、タイトルが言うように「自分を愛そう」と、ともすれば下がりがちな自己肯定感などのマイナスな感情を優しく引き上げてくれるような曲なのですが、言葉を積み重ねながらもこちらを構えさせるような重々しさはありません。
一曲目、それも対バンだと効果的に働くなと思ったのがこの曲の優しさで、知らない人もいる中出てきてグイっと空気を変えてしまうのではなく、知っている人も知らない人も混ざって時間をかけてほぐしていくような優しさがこの曲にはあります。

「時に躓いて つらいはずだろう それなのにどこか何かが違って見えた」

前後がハモリで、「それなのに」はユニゾンになるはずなのですが、同じ音を出しているのに前後の音に引っ張られるのか、微妙に違った音のようにも聴こえてきます。
幅の広いユニゾンは、不ぞろいでも良いのだと生き方を教えてくれるような気がしました。
ブレスするとき、見並里穂さんは水中から顔を上げるかのように大きく息をしました。
表情は晴れやかです。
ただ一つだけ妙に引っかかったのが、梅野さんがやや厳し気な目つきをしていた時がありました。
それは緊張や、表情と表情の中間でたまたま目に映ったものとも違う、どこか意味ありげなものに見えました。

歌詞に大きなくぼみも山もなく、穏やかに通り過ぎていく「自分嫌い」に続く2曲目の始まりもこれと似たようなフォーメーションでした。
君が描く未来予想図に僕が居なくても」です。

照明はオレンジ色で、秋めいてきたこの時期を金木犀の香りが漂ってきそうなその色で再現しました。
最近髪色を変えたメンバーが何人かいて、見並さんはブルーグレージュを混ぜた黒色に染め(コリアンブラックという色使いそうです)、佐倉なぎさんは元々明るめだった髪をさらに明るいミルクティー色に染めたばかりでした。

ずっと黒髪の瀬川奏音さん、天川美空さん、そして梅野さんに加え、ここ最近は髪色が落ち着いてきた橘花みなみさんと花咲りんかさんと、メンバー内でのカラーバリエーションが豊かになりました。
少し経てば、染めたてのメンバーも色落ちしてまた違った色になっていくでしょうし、これから訪れるツアー後半戦に向けて染め直す人もでてくるかもしれません。

さらにこの日は、示し合わせたわけではなく偶然にも皆髪を下ろすというヘアースタイルで統一されていました。
「乃木坂っぽい」というワードが特典会で何人かから出てきたのは、メンバーが共通して好きなグループに寄せたというだけでなく、透色ドロップ自信がこれから目指していく道の延長線を展望しているかのようでした。
さて7人の変わりゆく鮮やかな髪色は、最低気温が2桁を割りだした時期の、日の経過とともに色合いを変えてみせる紅葉のようで、切なく儚い「予想図」は秋の郷愁に似ていました。
この曲は、聴くときと場面によって胸が締め付けられそうになるほど苦しい想いが沸き上がってきたりするのですが、「自分嫌い」で多少は安らいだところもあったのか、この日は優しい染み込み方でした。
アウトロが鳴り終わってからの無音の時間は5秒もないくらいですが、計測上の時間以上に深く、何かを語り掛けるような時間がそこに存在しました。

瞬間、吸い込むような音に続いて浮遊したメロディーが流れてきました。
会場には、次以降のお目当ての出番を座って待つ方がそれなりにいました。
流れてきたのは「ネバーランドじゃない」のSEでしたが、そうした方にも、ここまでで穏やかなブロックは一区切りで、陽気な時間が始まりそうだという雰囲気くらいはなんとなくでも伝わっていたと思います。
ここで切り替えますと、分かりやすい目印になってくれるのが透色ドロップ特有のSEです。
次の曲の一部分を拝借してメロディーにしていて、その間フォーメーションも移動しているはずなのですが、目より耳で感じる音のほうがいつも先行していました。
この「ネバラン」そして「夜明けカンパネラ」ともに、フリコピの波が広がり、賑やかになってきました。
ラストは「だけど夏なんて嫌いで」。
序盤に感じた秋めいた雰囲気はすっかり消え、一周近く回って夏がやってきました。

ーーー

ライブの内容はこれくらいで、少し総論みたいなものを書きたいのですが、自分が透色ドロップのライブに行き始めて20回くらいになります。
ここ最近、透色ドロップののライブレポに苦戦というか、難しいなと感じています。
何がというと、メンバー一人ずつをくまなく取り上げるのに結構難儀しています。
ダンスや歌割、あるいはフォーメーションが、誰か一人だけを立たせるようなものになっておらず、前後列が生まれても大体ペアか3トリオかというパターンがほとんどという独自のステージ構成もあるのでしょうが、それ以上にメンバーの動きが関節の曲げ具合まできっちりと揃っていて、自分の拙い引き出しだとそれを見て「揃っている」以上にどう書いたら良いものか分からないのです。
トリオになっても、7人全員で同じ動きをするでも誰かが目立つということがありません。
歌声についても全く同じです。
やや瀬川さんがしっかり聞こえるかなという程度で、抑制された歌声は綺麗に重なっていて誰かが主張しすぎるわけでもありません。

もっとも個人を切り取って取り上げにくいというのはこちらの勝手な都合の話で、グループの在り方としては非常に素晴らしいことだと思っています。
素人目にも分かるくらい個人が目立つ場面があるのは、書きやすかったり違いが見えやすいのですがその一方で、致命的なまとまりの無さとも捉えられます。
声がよく出る。動きが大きい。
凸凹があるほうが、確かに書きやすいです。
何人もメンバーがいるグループアイドルだと、細部まで全員で杓子定規に合わせるより、個人で目だってフックを作るほうが良く見えるという考えもあるのかもしれません。
でも、本当はもう少し目立ちたいけどという自分を抑え、傍らにいるメンバーと協同して全体の見栄えに貢献しようという思いから生まれる統一感は、自己犠牲という言葉を使うと古臭くてしっくりきませんが、はるかに美しさを感じます。
演じている本人たちは、もしかしたら個人をことさらにピックアップしないこの見せ方のせいで苦悩する人もいるのかもしんれません。
でも、これこそ透色ドロップが透色ドロップたる所以だと思いますし、そして、個を書くのに困ってしまうというのは塊として成熟している何よりもの証拠ではないでしょうか。
感想をエゴサしては、自分だけフィーチャーされていないことに寂しさを感じてしまうこともあるそうですが、魅力に劣るというよりも、グループアイドルとして最大の武器を持っているということの現れでもあるのではないかなと思います。

◆群青の世界

透色ドロップの直後は、青セカこと群青の世界。
こちらもライブは20回ほど、かなりお世話になっているグループです。
ライブの内容については、翌日開催の定期公演「青の記録」で重めに書いていて、いくぶん重なるところもあるのでこの日については簡単にまとめるつもりです。
セットリストはこうでした。

群青の世界 セットリスト
M1. BLUE OVER
M2. 青空モーメント
M3. RIBBON
M4. カルミア
M5. 未来シルエット

BLUE OVER」はガルガルで高頻度でかかっている気がして、やはりこの曲が群青の世界を物語っているのだと思います。

「明日またね と手を振る 声だけが響く」

工藤みかさんが顎を上げきってロングブレスで歌うサビ終わり、この直後から時を止めたコンテンポラリーダンスのターンに入っていくのですが、工藤さんは口からマイクを離していくことによって遠ざかっていく音を演出していました。
集音されていないけれども音は続いているという状態です。

水野まゆさんの歌での見せ場が多いのが、「RIBBON」という曲。

勢いが良くて、とても爽やかな曲です。
新曲として夏にリリースされたとき、工藤さんは「音は高いけど出たって気分になる」と、レコーディングでの感想を口にしていました。
確かにグループの中では音域が高く、簡単な曲とも思えないのですが、それすらも勢いでカバーしてしまっています。
工藤さんのコメントは、後を振り返らず前だけ見てえいやと走り続けていたら、実はそこは両側に谷底をそなえた細い一本道だったというようなニュアンスが読み取れます。
強拍で、勢いとともに駆け抜けていくイメージがとにかく根を張っていますが、しかしそのワードだけでは十分咀嚼しきれないところもあります。
例えばサビの「君へ届けたいの」で、手のひらをこちらに向けて2回押しだすシーン。
疾走感という第一印象で共通項のある「僕等のスーパーノヴァ」のサビにも似たような振りがあるのですが、目の前の壁に手を叩きつけるような動作の「スーパーノヴァ」に対し、「RIBBON」の2拍目など、非常にゆっくりとした下ろし方です。
一宮ゆいさんを見てみれば、うなだれているようにも映ります。

あるいは他のヴァースにて、2人で腕を絡ませるところ。
下を向いて小刻みに息を吐きながら、何か考え事をしているのでしょうか。
何かを思わせるような所作がいくつかあり、勢いだけの曲とも言えません。
どこかで立ち止まる瞬間があるのです。
恐らくこの曲は、プラスな感情をベースとしつつも、痛みや苦しみも包んでいるのでしょう。
悶々としている感情が伝わってくると、前f後で見える景色も変わっていきます。

ラスト「未来シルエット」では、青い照明が広がってスモークにぶつかり、青の波がさざめき立っていました。
腕を斜め45°上に掲げた公式MVのサムネイルが象徴するように、澄んだ空がイメージされる曲ではありますが、確かに青は空だけの色ではありませんでした。
この記事にも書きましたが、青にまつわるものを一手に引き受けているのが群青の世界というグループです。書いておきながら、照明に気づかされました。

◆MyDearDarlin’

時刻は一気に飛んで21時。
KissBeeもなんキニもまねきケチャの出番も終わりました。
そうそうたるグループが出演したこの日のラストに控えるのは、MyDearDarlin’。通称マイディアです。
次に出てくる演者がいないということで、フロアに集まっているのはマイディアに対してなにがしかの興味を抱いている人達ばかりのはずでした。
例外的に、直前の演者の特典会町で、それまでに足を休めたいとイスを求めていた人もいたかもしれませんが、基本的には皆立ち上がっていたはずです。
そんな光景は朝8時すぎから始まったこの対バンで初めてだったのではないでしょうか。
音響がよく、平屋ながらサイドの2階席部分がわずかに膨らんでいるという構造のインターシティホールは、瞬間マイディアのためのワンマンライブの舞台へと変わりました。

夢実あすかさんによれば「アチルンルンヨシャー」というこの日のセットリスト、1曲目は「ナノLOVE」からでした。

金色にキラキラと光るこの曲、MVのダンスシーンにある、カーペット敷きで階段付きのセットがとてもに合っていて、絢爛豪華なイメージがあります。
登場してくる楽器もキラキラしていて、ホールだとシンフォニックな雰囲気が増します。
マイディアのビジュアルを活かし、かつ「MyDearDarlin’」というグループ名を反映させた可愛らしい曲なのですが、ゴージャスさとは相反して葉山かえでさんは煽りを積極的に入れて振りコピを促します。
サビ前、サビ終わり...かける言葉は小刻みで、それに引っ張られてごく当たり前のように振りを真似してしまうのですが、他のグループだったらこの曲でこんなにフリコピを煽ってくることはないのではないでしょうか。
シンプルで無駄をそぎ落とした、遠くから見ても分かりやすい振り付けを基本としており、しかもそれを積極的に真似させてフロアを温めていくというマイディアのアプローチだからこんなフリコピ過多のステージになるのでしょう。
それでいながら特定の周波数か音域かを強調して響かせていた音響のおかげで、オーケストラの雰囲気もやはり感じます。
そんなことを考えていたら、次に流れてきたのは「Symphony #5」。

管弦楽というよりシンセの音が激しく主張してくる令和の交響曲5番に、是枝優美さんの高音が合っていました。
水城梓さんに対する印象は一貫していて、角がついた動きをするというイメージなのですが、腕の曲げ伸ばしなどをあえてカクつかせることで、滑らかに動かしたときより動作を大きく見せるという狙いがあるのかもしれません。

「knock knock knock 閉じたドアを knock knock knock 開ける時さ」

裏拳で叩くサビの振り付けは1サビ、2サビ、大サビと3回やってくるのですが、強さは明らかにラストが一番でした。
ただアグレッシブなだけではなく、その中に強弱をつけてくるのがマイディアのステージです。
だから一本調子になりません。

9月20日に3rdワンマンを成功に収めたマイディア。
会場の東京国際フォーラムホールCでは、数えきれないほどのサイリウムの色がパートチェンジのたびに切り替わる光景に目を奪われました。
一方この日はフォーラムよりも距離が近い分、ステージからダイレクトで届いてくる熱にやられました。
憂鬱なんて吹き飛ばせ」これがマイディアの主題であり、真似しやすくあるものの運動量の多い動きで引っ張ってきます。
一生涯オリジナリティ」の中ほどで自分は少しばててきたのですが、一息すらつかせてくれません。

ラスト2曲は「FLOWER」と「SAYONARA」。
互いに交差するメッセージの、エモーショナルな曲です。是枝さんは「SAYONARA」に入る前、「この曲で今日一日を締めたいと思います」と告げました。
この2曲、非常に情緒あふれる曲で思わずじんとなってしまうのですが、いわゆるバラードのようなおとなしいテンポではなく、その速さで心を激しく揺さぶってくるような感じがします。
この日はそのスピードに乗りすぎたのか、東條ゆりあさんと咲真ゆかさんが一部珍しく走り気味でした。
汗をぬぐうような、なんてことない仕草も絵になっています。
「SAYONARA」の落ちサビでは東條さんが、サイリウムの海の上に立ち歌っていました。
オレンジ一色に染まったフォーラムの景色とはまた違った景色です。

マイディアセットリスト
M1. ナノLOVE
M2. Symphony #5
M3. 一生涯オリジナリティ
M4. FLOWER
M5. SAYONARA

程よい疲労感を残し、この日は締めくくられました。
夏以降この3組+もう一組のライブしか見ておらず、結構偏っているのですが、4組ともそれくらいの価値があるグループだと思っています。
似ているところもありながら根幹が違う。
同じ日に同じ会場、だいたい同じ位置から見るからこそ分かってくるものもあります。
それぞれの特色を感じた一日でした。


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