【ライブレポ】TOKYO GIRLS GIRLS (20230212)
2023年2月12日に、表題の対バンライブが開催されました。
メインストリームを走るグループが多数出演する「ガルガル」、今回の会場はZepp Divercity Tokyoです。
出演数は40組と、いつもより多め。
とりわけこの日は人気グループが勢ぞろいでした。
そのため各組の持ち時間が短めにはなってしまいましたが、朝から晩まで盛況のフェスだったようです。
だったようですと他人事のように言いましたが、自分は一応朝9時過ぎに入場して会場を後にしたのが21時過ぎと、見かけ上はたっぷり滞在していました。
ただ、その間長い中抜けなどありまともに観たのは10組程度。
新たな発見もありましたが、結局ここに書き残せるのは見知ったグループばかりになってしまいそうです。
ピックアップするのはこの4組。
出順にしたがって書いていきます。
MuMo°(ミュウモード)
多くのグループがそうであるように、MuMo°にとってZepp Divercity Tokyoは初めて立つステージでした。
ガルガルに初めて呼ばれたのが、自分が初めてライブを観た日でもある昨2022年4月。
こうしたイベントは動員がきわめて重要だと言いますが、恐らく大成功だったのでしょう。以降はコンスタントに呼ばれるようになり、横浜Zeppでのガルガル出演も経験しました。
さらには当初から目標として公言していたTIFに「ガルガル枠」として初出演。
その後事務所移籍や改名を経て今に至りますが、新たに付けられた「MuMo°(ミュウモード)」という名前の響きは、どこかスタイリッシュで落ち着いたメンバーの雰囲気ともマッチし、結成から3年以上変わらず相当の愛着が込められていたであろう前名義「タートルリリー」を手放した名残惜しさも忘れつつあるように思います。
MuMo°として初めて迎える年越しを経ても、なお上向きの気配を感じます。
ガルガルは規模感や開催曜日の違いから「番外編」「Extra」などサブタイトルが付くことがあるのですが、この日はサブタイトルがついていません。
無印は、本編ということを現しています。
出演者はさながらオールスター。
しかもZeppです。
今やZepp Divercity TokyoはTIFやNPPといった季節の一大イベントのメインステージにもなっていて、はるか遠くの憧憬の地というよりも現実的に手が届くかもしれないステップの一つになりつつあります。
その地に、フェスの15分枠とはいえど立てることが決まった。
メンバーによる出演告知からは、相当力を込めて文字を打ったのだろうなということが伝わってきました。
タイムテーブルはわかりやすい構成でした。
ライブアイドル界をリードするグループが昼過ぎから夕方にかけて固まって出演し、数年後を背負って立つ可能性のあるこれからのグループの配置はその前後。
MuMo°の出番は朝の9時20分で、午前の部の出演ということになります。
だいぶ早いな..と思ってしまいますが、これでもすでに5組がライブを終えた後。
本番、清藤恵さんの声が震えているような気がしました。
しかし震源地は緊張だけとも思えません。
特典会では本人も緊張したと確かに言ってはいましたが、それだけが震えの理由だとは思えないのです。
その姿は、あの時と重なって見えました。
昨年の生誕祭です。
得意の歌を活かした、ソロでのカバー曲プロジェクトを初解禁したあの瞬間がフラッシュバックしました。
これまで自らが手を挙げて「これをしたい!」と宣言することの少なかった清藤さんが、グループではなく自分のためだけに立ち上げたプロジェクトです。
あの時はさらに感極まっていた部分もあろうかと思いますが、何かを背負い、勇み立ったからこそ生まれた震えも含まれていたはずです。
「イチコイ」で上手のこちら側にやってきてソロパートを歌ったとき、清藤さんは何を思っていたのでしょうか。
今更この場にきて縮こまっているような人ではないはずです。
むしろその震えには頼もしさすら感じました。
清藤さんとはハロプロに熱を上げていた時期が近いこともあって、一緒にオタクトークをするのが楽しくて仕方ないのですが、聞けばファンとしてこの会場にもよく遊びにいっていたそう。
それだけに同じZeppでも、以前立ったKT Zepp yokohamaとはまた違う格別の喜びがあるといいます。
演者として楽屋が用意されているのも、関係者通路を通って出入りするのも初めて。
Zeppを神格化して大げさに書くならば、15分のステージを通してオタクが単なるオタクでなくなった場面に立ち会ったようで、なかなか身に染みるところがあります。
レーザーの光が飛び交うステージ上に目をやると、扁桃炎を抱えながらフォーメーションチェンジで走り回るきよりんさんを見て広さを実感します。
「空に青」では上手端のポジションはほとんど終始きよりんさんだったように思います。
ずっと正面に居ました。
清藤さんなどその逆で、序盤は全く見えませんでした。
意外とフォーメーションが固定されているようです。
こういうことも初めて知るのも、広い会場ならでは。
楽屋入りしても着替えずにプリキュアを観ていたという辻菜月さん。
この日は日曜でした。
頭にティアラの飾りを付けていたのは、インスパイアされてなのかと勘ぐってしまいますが、ステージに華を添えていたのは確かでした。
大規模フェスや対バンは、既に好きな人達よりもこれからそうした存在になりうる人達をどれだけ惹きつけられるかが大事だと言うのをしばし聞きますが、そのとっかかりとして視覚に訴えるのは非常に良かったと思います。
目につくところで言えば咲間羽衣さん。
自然体という言葉がありますが、上手側の正面に来たとき、まさしくその言葉が当てはまるように思いました。
あらゆる余分なものを剥ぎ取り、まるで素の姿でいるかのよう。
無機質なステージで、いつもとは違う精神状態になってしまいそうな不自然の塊のようなステージでも、本来を失っていないように見えました。
セットリストは「空に青」→「イチコイ」→「真夏の空とキミ」という流れ。
最近は新曲を出していないことから(2/18の辻さん生誕祭で久々の新曲お披露目がありました)その縛りもなく、他にいくつかパターンはあれどこの3曲が純粋な勝負セットリストなのかなと思います。
聴きなじみある曲というのもありますが、やはりこの3曲の安心感たるやなかなかのものです。
ライブ前はこちらも多少緊張するのですが、心を広げゆとりをもって構えるような「空に青」からほぐれていくのを感じていました。
3曲どれをとっても底抜けに高いテンションの曲ではありませんが、後ろを振り返ったら下り坂が轍にできていたという風に、気分は着実に上っていきます。
「真夏の空とキミ」では後半にかけてナチュラル気味に音が上がり、そこでもまた一層の高まりを感じます。
優先席の前方、初めは振り付けに合わせて小さく腕を振っているだけだった方が、「夏キミ」ではメンバーの煽りに乗って大きく手を掲げていました。
一人だけでなく、見える範囲でも何人かいたように思います。
どっちつかずだったオセロのコマが白にひっくり返る一瞬は、自分ごととして体験しても、他の人が変わっていくさまを見るのでも同じくらい痛快でした。
MyDearDarlin’
やや時間を開けて、昼前に登場したのが「マイディア」ことMyDearDarlin’。
まばらだったサイリウムが灯り始め、柵前だけでなく列目以降も埋まり始めてきたのがこのころです。
知名度は抜群のはずですが、それでもなお残らずフロアの心を掴みに行こうという姿勢を感じました。
自分は先程と変わらず上手側にいたのですが、フォーメーション上こちらに来ることが多かったのが咲真ゆかさんでした。
一人一人と目を合わせに行き、それを合図にサイリウムが咲真さんカラーの黄色に染まり出したかのようでした。
ステージに立てば、貫禄のオーラです。
マイディアを見るのは昨年9月20日以来。
東京国際フォーラムホールCで行われた3rdワンマンライブ「僕らの詩」ぶりでした。
前体制の区切りをつけたライブです。
この日を境に、メンバー構成が変わりました。
一週間後のライブで篠崎麗さんが卒業、長らく体調不良でお休みしていた美咲優羽さんはワンマン後から快方に向かい、一時は復帰直前まできたものの直前で叶わず。
療養から半年以上経過した12月14日に一夜限りの復帰をして、それがマイディアとしての生活にピリオドを打つステージになりました。
その間もそれ以降もオーディションなどの話は無く、今は2人が欠けた6人を完全体としてしばらく活動していくようです。
かつてのレポで、篠崎さんの歌声を美爆音だと表現したことがありました。
大きく圧倒的な音を放ちながら聴き惚れてしまう美しさも備えているところに、甲子園のスタンドを揺らした某高ブラバンの流行語が重なるように思えたのです。
誰かが体調不良で急遽お休みしても、残ったメンバーでフォーメーションを組み立て直してあたかも結成当初から過不足なくこの人数でやってきたかのように見せてしまえるのがマイディアというチームです。
とはいえアイドルIQが高いマイディアでも、歌声という組み合わせでどうこうできないものを取り戻すのは流石に難しいだろうと思っていました。
特に篠崎さんの声ともなればです。
オリジナルメンバーの篠崎さんパートの多くは、二期メンバーだった葉山かえでさんに引き継がれたようでした。
篠崎さんの卒業タイミングはわけあって予定より2カ月程度遅れたのですが、本来ならば卒業しているはずの夏フェスの時期は元々出る予定がなかったためか、籍だけ置いてあるけどライブイベントはほとんどお休みという状態でした。
このころ臨時でカバーにまわることの多かった葉山さんがそのまま歌割を受け継いだという流れです。
言ってしまえば、夏の時期は卒業後を想定した”試用期間”でもありました。
その時TIFで一回観たのですが、代役パートの時、他でもなく「葉山さんの声」だと感じました。
本人は「声が弱弱だった」と振り返っていましたが、良し悪しの次元ではなく、葉山さん独自の発声や歌い方にそっくり差し変わっているなと感じたのです。
そこにオリジナルの影はなく、恐らく葉山さんとしても篠崎さんの真似をするつもりは無かったのだと思います。
そもそも2人の歌い方や歌声にはさして共通点があるように見えません。
これまで咲真さんや東條ゆりあさんに偏り気味だった主要パートのパート割を思っても、新たにメインパートに食い込んでくるのが葉山さんであろうことは試用期間の歌割からして明らかでした。
でも、単なる代役ではありません。
全く持って新しい新しいパートです。
恐らく耳に触れる音もそれによってたち現れてくる感情も、10月の新体制からは変わってくるのでしょう。
篠崎さんのカラー・ピンクが青みがかっていき、葉山さんのパープルにグラデーションを描きつつある気配を感じつつ、それ以降はライブからはしばらくご無沙汰になってしまいました。
そしてこの日のゼップ。
耳にしたのは、もう聴くことは無いだろうと思っていたあの美爆音でした。
「本当はただ私の事 好きでいてくれたらいいんだ」
聴きどころだと思っているのが、「MDDシンドローム」ラスサビ前Cメロ。
喉を開いて音の跳ね返りを利用した、空間の奥行きを感じる歌声がよみがえっていました。
マイディアの良さは、全体的に圧をかけて攻勢に出ながらも、エモーショナルさというか情に触れる部分も欠かさず握りしめているところにあると思っています。
この曲では人差し指を立ててフロアとステージとで上下に指し合う振り付けに勢いとテンションの昂ぶりを感じますが、Cメロのソロパートでは感傷もやってきます。
「でも不器用で上手く言えなくて こんな私推して下さい」
他の誰かではなく私だけを見てよ、いや見なさいという強気なアイドル目線の歌ですが、Cメロで突如弱気に変わります。
そこにやられてしまうのです。
音の激しさや運動量から、熱量一辺倒で進んでいくグループと思われがちですが、それだけがマイディアではありません。
時につまづき、どこかでポロっと脆さをさらけ出してしまうところもまた一つの側面です。
そして声をもってその雰囲気を作っていたのが篠崎さんで、声質的に彼女でしか再現不可能だろうと思っていたところに聴こえてきたのが見事な葉山さんの歌声でした。
繰り返しますが、別に積極的に真似しようと思ってコピーに励んでいたわけではないと思うのです。
葉山さんなりに歌の強さをエモーショナルさを突き詰めていった結果、恐らくは前任者が身に着けた方法とは全く違うルートで美爆音を手に入れた。
こう思っています。
葉山さんの八面六臂ぷりは代役から始まったソロパートに留まりませんでした。
アイドルがオタクの心を掴みに行くこの「MDDシンドローム」という曲は、それを歌うメンバーの深層心理も突いているように思います。
メンバーはあてがわれた歌詞をなぞっているようでいて、本当に「アイドルじゃない私までみな愛すと誓え 全てを捧げよ」と願っているのではないかと感じてしまうのです。
横にいるメンバーはソウルメイトでありつつ、客を取り合うライバルでもあります。
咲真さんが自身の立つ付近のフロアを自らのカラーに染めてしまったのは、陣取り合戦の象徴でした。
上手側は咲真さんの領土。
客のほうを観る時だって、アイドルらしい表情をしながらもしかしたら獲物を見定める動物的な目つきになっているのかもしれません。
その表情を隠そうとしていなかったのが、葉山さんでした。
汗をダラダラと流して顔を光らせながら、目が鋭くなっています。
その顔のまま指してくるのを正面から受けたらどうなってしまうのか。
表情管理にも余念がないマイディア。
これまでもきりっとした顔つきをしていたのだと思いますが、その記憶を読み込もうとすればするほどダイバーシティで観た表情が蓋をしていって思い出せません。
そのくらい脳にめり込んでいました。
葉山さんの歌声を聴いても表情をみても消えなかった違和感がありました。
なんとなくいつもより空間があるような気がして人数を数え始めたのは後半のあたり。
そこで初めて気が付きました。
夢実あすかさんがいません。
どうやら交通機関の遅れで遅刻しているのだそうですが、アナウンスされたときは他グループのライブ中。
気付くはずもありませんでした。
SEが鳴ってマイディアメンバーが出てきたときも、それどころかパフォーマンス中も状況がすぐには分かりませんでした。
今日はお休みなのかなと思っているところに、突如夢実さんが合流したのが「ナノLOVE」のサビの時。
忘れ物を取りに帰ってきたくらいのさりげなさで上手からひょこっと現れました。
あまりのさりげなさにちょっと笑ってしまいました。
突然の登場に真っ先に気付いた水城梓さんも笑っています。
それを横目で見ながら、他のメンバーも最後のピースが加わったことに気付き始めたようでした。
ここからがマイディアの本領でした。
レアな5人バージョンのフォーメーションを解き、何事もなかったかのように本来の6人の形に戻したのです。
5人とも持ち場にすっと帰り、夢実さんが空いたところに収まります。
その流れはあまりにも自然でスムーズ。
どうしても車の移動が連想されてしまう「合流」なんていう人工物感溢れるイメージではなく、一粒の砂糖が拡散によって水の中に消えていくような、何の手も掛かっていない自然な感じがありました。
さらに言えば、先ほどまでの5人のフォーメーションでいびつさを感じさせなかったことへの感嘆もここで覚えるわけです。
「ここでやるんだっけ?」
MCで次の単独公演を告知していたとき、傍らで聞いていた東條さんが驚いたように言っていました。
2月16日にこの日と同じくZepp Divercity Tokyoにて3周年ライブが開催されます(ライブレポを後日出します)。
ガルガルに出演の後はZepp Hanedaにて対バン予定という”Zepp回し”だったことでごっちゃになっていたのかもしれませんが、良いようにみれば会場に関わらず自分たちのペースを守り続けているという風に見えました。
Zeppで単独公演が行えて、しかも2週間と経たずに中野サンプラザでワンマンライブ予定というのはごく限られたグループしかなし得ないことだと思います。
しかし、本人たちは箱の大きさを必要以上に重く感じていないようでした。
頓着もせず、自分たちの半径を崩さずにパフォーマンスで魅せる。
だからここまで大きいグループになっているのかなと感じました。
Pimm’s
マイディアからまた1時間程度空き、夏のTIF以来のPimm’sへ。
硬質なロックサウンドに、腕の曲げ伸ばしにも効果音が付きそうなバキバキのパフォーマンスが魅力ですが、いつもより明らかにゆるい空気が流れていたのは小山星奈さんがサングラスを付けていたからでした。
ただのサングラスではありません。
太めの白い縁の上の方にカラフルな風船のデコレーションがついた、見るからに「この日の主役」用だろうというサングラスです。
この日は小山さんの誕生日でした。
ガルガルの後は新宿に移動し、生誕祭を行っています。
一年に一度しか付けられなくてレアだけど積極的にはしようと思わない出オチのような格好には笑ってしまいましたが、見慣れてくると不思議なことにおかしさが消えていきました。
セパレートの衣装だとお腹に入った筋がよく見えます。
やせて筋肉質な上に金髪ショート。
その上にサングラスをかけると一気にミステリアスさが増します。
どこぞのハリウッド女優かのような雰囲気すら漂っていました。
その上のデコレーションでようやく我に返るのですが、ウケ狙いのはずが結構似合っています。
これからのライブでもその格好でたまに出てきたら結構引きがあるのではないかと思っていました。
個性派な役者が多いのもPimm’sの良さです。
ラップパートの多くを任されている立仙愛理さんはラップもさることながら節々を意識したダンスで硬さを表現し、6月7日に卒業する川崎優菜さんはしっかり止まるところと慣性の法則に従って動きを漂わせるところとで使い分けていたのが印象的でした。
身体の使い方がやはり精巧です。
髪を染めてからの早川渚紗さんを見たのは初めてでした。
安心感があふれる笑顔と、鼻を抜ける歌声を聴くと、Pimm'sの貴重なアイドル性を感じずにはいられません。
7人が玉突きのようにかわるがわるソロや前列でのパフォーマンスをこなし、脳にその存在が刻まれていったところで最後は小林智絵さん。
役者はまだいました。
透色ドロップ
時間は大分開き、夜になってしまいました。
人の流れも昼のピーク時間よりはやや落ち着いてきた時間帯です。
透色ドロップにとっては恐らく初めてのZepp Divercity Tokyoでしたが、あいにくグループとしては万全ではありませんでした。
年明けから花咲りんかさんがお休み中で、さらに佐倉なぎさんもダウン。
本来7人のところを5人でパフォーマンスしなければなりませんでした。
透色ドロップのスタンスは、誰かが離脱したときに急ごしらえのフォーメーションや振り付けを組みなおすわけではなく、フルメンバーのフォーメーションのまま本番に臨みます。
いなくなった人のぶんを残ったメンバーでカバーしあってフルかのように装うのではなく、空いた穴を隠すことなく見せるのです。
恐らく曲を限定すればマイナス1ぶんのフォーメーションを組みなおすことも出来るのかもしれませんが、それもしません。
自分はこれで良いと思っていますが。
誰かが抜けることを想定して組み替えるのは骨が折れますし、もとより透色ドロップは突貫工事でどうこうするグループではありません。
パフォーマンスの性質上全員でのコーラスや7人を前提としたフォーメーションが多く、それゆえ組み立て直すとまた別物になってしまうと思うのです。
それゆえ、欠けたものを欠けたまま提出せざるを得ない。
まだお休みが一人ならどうにかなっていたかもしれませんが、2人ともとなると大きな穴です。
もっともこう書いてはいるものの、観ているこちらはそれほど気になっていませんでした。
不在を感じることがあったとすれば、例えば「ネバーランドじゃない」の花咲さんの口上から夢の世界への魔法をかける振り付けなど居ないメンバー特有の動きくらいで、あとはほとんど目だったように思いません。
ただパフォーマンスする側は大いなる違和感を抱えていたようでした。
特典会で瀬川奏音さんがこう言ってくれました。
「私たちの曲は全員でのユニゾンが多いから、2人も減ると目に見えて弱くなる。
けど、だからといってマイクのボリュームを全員分上げちゃうとハウリングしたり不和が起こるからそれもできない」
パート割ではソロもほとんどありませんし、求められている歌声は腹から絞り出すような声ではありません。
どちらかといえば息を多く吐き出すような歌い方です。
人数の少なさに加えていつもの倍以上に広い会場で跳ね返りも少なく、声を補強することも出来ず違和感が積み重なっていった。
いっそ前かがみになって大声を張り上げてしまえたほうが楽なのかもしれませんが、そうしてしまうと曲の世界観が失われてしまいます。
歌に矜持のある瀬川さんは特にこのジレンマがもどかしかったと思います。
それを45秒の間にダッと喋ってくれました。
その間ほとんど自分は黙っていました。
橘花みなみさんも「悔しさが強い」みたいなことをインスタか何かで振り返っていました。
他グループのファンの方だと思うのですが、1,2曲聴いた後フロアから去る人が最前列に何人かいて、橘花さんがその様子を目ざとく視界に捉えたのがわかりました。
おそらくパフォーマンスの内容のみならず、結果も伴わなかったと感じたのだと思います。
もっとも、繰り返しにはなりますがこれらはすべてライブ後にわかったことです。
観ている間は非常に充実した、透色にあふれるライブでした。
セットリストは個人的にはベスト。
「予想図」「衝動」は一番好きな曲なのですが、対バンで行くたびに結構やってくれるような気がしています。
自分が透色目当てで行く対バンライブの多くが他よりやや規模が大きいイベントで、そのためあまり交わらないグループと前後に並ぶ機会が多いことから、他グループのファンに印象付ける曲としてこれらが選ばれているのだと、勝手に推測しています。
3曲目までは触ると崩れてしまいそうな砂の城を目の前で積み上げていくようなパフォーマンスで、ラスト4曲目に一変。
場が途端に華やぎます。
この日のラストを明るく飾ったのは「ネバーランドじゃない」でしたが、「だけど夏なんて嫌いで」のパターンもあります。
いずれにしても落として上げるパターン(その逆もあります)は透色の持ち味で、それが4たった4曲に凝縮してしまえるところは見事としか言いようがありません。
欠員のフォーメーションで一番しっくり来たのが、梅野心春さん一人でセンターに来たときでした。
本来は今いない二人のどちらかとツートップのフォーメーションだと思うのですが、一人最前列に飛び込んでくるときに何の迷いも見られません。
ワンマンライブ前の密着動画では、緊張しだす先輩メンバーがいる中でゆったりとしていて、表情からも決然とした印象がありました。
いつもどおり複数人だったら浮かび上がらなかったであろう一面が、はからずも一人になって明るみに出てきました。
梅野さんには大物感があります。
流されそうでいて、流されません。
大物で言えばもうひとりいました。
密着動画で緊張していなかった梅野さんですが、とはいえ場当たりして音を合わせて...と針が本番に向かって進んでいくにつれて流石にこわばっていくところも見られました。
他のメンバーもなおさらです。
ただ、どこか別の世界かのように緩い雰囲気を保ち続けていた人が一人いました。
天川美空さんです。
天川さんの存在はまさしく緩衝材で、梅野さんがステージデビューの時もツアーの緊張のひと時も、常にふわっとした空気をまとっていました。
緊張しているメンバーがいれば和ます天然な一言を言ったり、デビューを控えた後輩が弱気になっているところでは自分をいじらせるような雰囲気にもっていったり。
手に力が入っていく時にこんな存在がいてくれたら、だいぶ助かるように思います。
動画に切り取られた一部分だけでも、ステージ上だけでは見えない天川さんの価値が分かりました。
この日はメンバー2人が欠け、自然と天川さんパートの露出も増えていきます。
前回、横浜での対バンで観た時とはまた違う歌声で、工夫が見えました。
ところでラストの「ネバーランドじゃない」。
透色ドロップを見出して間もない頃の印象から、自分はこの曲を見並里穂さんの曲だと思っています。
イントロでフロアに向かって叫んだり、何より誰よりも楽しそうな姿がとにかく目立つのです。
そういえば初めて特典会で話したとき、自分は「アンサー」の表情に惹かれてレーンに並んだのですが、本人としては「ネバラン」の方が性格に合っていると口にしていました。
自分が透色ドロップを観る時に上手を選ぶことが多いのは、これまで無意識だと思っていました。
でも、意識しないところで「ネバラン」で上手側に来る見並さんを待っているところもあるのかもしれません。
この日目についたのは上手ではなく中央寄りに来たときでしたが、床の音が聞こえてきそうなほど見並さんが跳ねている姿がありました。
あのころと変わらず、それ以上だったかもしれません。
よーく見ると慢性的に痛めている足が辛そうなのをライブ中随所に感じるのですが、「ネバラン」は脳内麻薬が出るのかそんなことを気にしてい無さそうでした。
翌日はかなり痛かっただろうと思います。