【ママ・パパ必見】窒息 子どもの身近にひそむ危険

20210317 note表紙 窒息 子どもの身近にひそむ危険

まとめ

 ▶子どもの「窒息」は命に関わります。
 ▶子どものおもちゃも窒息の危険性があります。
 ▶窒息の対応策として…
  -おもちゃの安全基準「STマーク」
  -手の届くところに「4cm未満」の物を置かない
  -窒息が起こった際の救急処置を学ぼう
 ▶子どもには「本当の愛のあるおもちゃ」を

1.子どもの身近に潜んでいる危険

昨日こんなツイートを見かけました。

呼吸器内科医「キュート先生」こと田中希宇人です。

普段は市中病院で日々呼吸器疾患と戦う医師として、

家では3人の子どもを持つパパとして、

毎日楽しく過ごしています。

そんなわたくしですが「子ども」の

しかも「呼吸器」のこととなりますと、

とても関心があります(黙ってはいられません)。

小さな子どもを持つ多くのママ・パパに

読んで頂きたい医学的なことを

なるべくかみ砕いて分かりやすく書きますので、

ぜひお付き合い下さい。

上のツイートの内容を見てみますと、

 「生後11か月の子どもがおもちゃで遊んでいる際に

 おもちゃが壊れて飲み込みそうになった」

とのこと。

このような玩具が最近流行っているかは知りませんし、

そもそも「歯固め」なんて必要なの、

という議論はさておき、

日本全国どこにでもありそうなお話で、

子どもを持つ親として身の毛がよだつ思いでした。

調べると過去にもおもちゃによる窒息事故の事例が、

「消費者庁」から詳細に報告されています。

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[子どもの玩具による窒息事故の事例(消費者庁の報告より)]

上に示した「消費者庁」の報告書を読んでいきますと、

これまでにも玩具による心苦しい子どもの窒息事例が

数多く報告されていることが分かります。

アメリカFDA(食品医薬品局)からの報告では

今回話題に上がっている『歯固めジュエリー』に似たようなおもちゃで

部品を飲み込むことで窒息により病院に搬送されたとか、ヒモの部分で首がしまって死亡事故が起きたとかの報告があるようです。

このような事例から「アメリカ小児科学会」では

 -ネックレスは首がしまる危険性がある

 -部品のビーズが外れると窒息の危険性がある

として「赤ちゃんにつけることは推奨しない」としています。

親であればみんな知っていることですが、

小さい子どもは手に取ったモノを何でも口にしますので、のどを詰まらせてしまう窒息の危険は身近に潜んでいることが分かります。

2.子どもの窒息

全国で「子どもの窒息」がどのくらい発生しているのかを調べてみると、

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[窒息死・窒息事故 子どもの人数(日本小児呼吸器学会より)]

と、毎年日本全国で50人の子ども達が

口にモノを詰めて命を落としているという悲しい報告があります。

しかしこれはあくまで「死亡例の報告」であって、

口にモノが詰まったけど何とかして吐き出したとか、

窒息して低酸素で脳に障害が残ったけど死に至ってはいないとか、

そういった報告されていない数多くの「ヒヤリハット事例」が水面下に隠れていることを覚えておかなければいけません。

子どもが何か手に取ったモノを口にしたり、

ノドを詰まらせて子どもの背中をたたいたり、

というようなよく考えれば実は危なかったであろう出来事を、多くの方が経験しているのではないでしょうか。

3.そもそも「窒息」って

呼吸器疾患の診療に当たっている医師として、少し専門的なお話を。

人間は空気を吸ったり吐いたり、いわゆる呼吸をすることで

酸素を身体に取り込み、二酸化炭素を身体の外に出して生きています。

ノドの手前までは「鼻」と「口」の2つの空気の通り道がありますが、

ノドの奥からは「喉頭(こうとう)」「気管」と1本道になります。

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[空気の通り道(上気道)の構造(上記・消費者庁報告書より)]

この1本道に食べ物とかおもちゃとかがはまり込み、呼吸ができなくなると

いわゆる「窒息」と呼ばれる状態になります。

「窒息」になると

  5分程度で呼吸停止

  15分程度で脳死状態

になると言われています。

「窒息」は急に命に関わる緊急事態であり、

救急対応までの時間が勝負な病態であることを覚えておきましょう。

4.対応策は

①STマーク

皆さまは「日本玩具協会」が策定する「STマーク」をご存知でしょうか。

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▶ST基準は、玩具の安全基準で、機械的安全性、可燃安全性、化学的安全性からなっています。「STマーク」は、第三者検査機関によるST基準適合検査に合格したおもちゃに付けることができるマークです。
▶「STマーク」の付いている玩具は、「安全面について注意深く作られたおもちゃ」と業界が推奨するものです。

[日本玩具協会ホームページより抜粋]

この「STマーク」がついているおもちゃでは

 -おもちゃのカタチや強度を測る検査

 -燃えやすくないかをみる可燃性検査

 -材料に子どもに有毒な物質が含まれないか化学的特性検査

などの細かい検査を行い、検査に合格したおもちゃだけが

「安全性が十分に配慮されたおもちゃ」として認められています。

そして「STマーク」で認められているおもちゃには、

万が一の事故が起こってしまった際の損害賠償補償制度もあります。

子どものおもちゃを買う際にはこのような安全性に配慮された

「STマーク」がついているおもちゃを選ぶことが、

子どもの窒息を防ぐ一つの方法かもしれません。

②子どもの手の届くところに物を置かない

本当に当たり前のことで、取り上げるのが申し訳ないレベルですが、

「子どもの手の届くところに物を置かない」ことも大事です。

子どもの手の届く範囲とは下の図で示された範囲です。

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[子どもの手の届く範囲(非営利活動法人Safe Kids Japan「こどものやけどを予防するために」ホームページより)]

このような図を念頭に置いて家の中を見渡してみましょう。

子どもの手の届く範囲って結構たくさんあると思いますが、

言い換えれば「物を置くと危険な場所」と考えることもできます。

こういった場所に物を置かない工夫も、子どもの窒息を予防します。

③口に入る大きさは「4cm」

子どもの口の大きさは3歳児で「直径約4cm」と言われています。

これより小さいものは子どもの口にすっぽり入り、

窒息の原因になる危険性があります。

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[子どもの口の大きさと誤飲チェッカー(政府広報オンラインより)]

「政府広報オンライン」でも

直径4cm未満のものは子供の周りに置かないように

と推奨しています。

おもちゃなどが飲み込む危険がない大きさかどうかを確認する際は、

「誤飲チェッカー」や「誤飲ルーラー」を利用すると便利です。

④子どもの窒息 救急処置を覚えておこう

わたくしのインスタグラムやTwitterでも紹介したことがありますが

子どもの窒息はいつ・どこで起こるか分かりません。

しかも時間との勝負ですので、子どもの窒息の救急処置は覚えて置いたり、

取り出しやすいところにメモ・保存しておくことをおススメしています。

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[子どもの窒息 救急処置(日本小児呼吸器学会より)]

5.子どもには「本当の愛のあるおもちゃ」を

今回の「おもちゃで窒息しそうになった」ツイートを見て、

わたくしも医療者として… 3児のパパとして…

いろいろ思うところがありました。

愛する子どものことを思って、

 子どもの好きな色で、

 子どもに優しい自然の素材を使って、

 子どもの好きなカタチの、

愛のこもった自作のおもちゃを与える気持ちはとても理解できます。

しかし子どものことを第一に考えると、

  楽しく・おもしろく・成長に役立つ

おもちゃを渡したいですし、そして何よりも子どもにとって安全な

  「本当の愛のあるおもちゃ」

で遊んで欲しいと心から思っています。

もし内容に共感して頂けましたら、

『#キュートnote』のハッシュタグで感想お待ちしております!

まとめ(再掲)

 ▶子どもの「窒息」は命に関わります。
 ▶子どものおもちゃでも窒息の危険性があります。
 ▶窒息の対応策として…
  -STマークのあるおもちゃを
  -子どもの手の届くところに4cm未満の物を置かない
  -窒息が起こった際の救急処置を学ぼう
 ▶子どもには「本当の愛のあるおもちゃ」を

自己紹介

キュート先生 | 田中 希宇人(たなか きゅうと)

医学博士。

総合内科専門医。呼吸器専門医。呼吸器内視鏡専門医。

専門は肺がん、COPD、喘息、呼吸器感染症。

日常診療の傍ら「キュート先生」として

ブログ『肺癌勉強会』、Twitter、Instagramなど

多くのプラットフォームで正しい医療情報発信を行っています。

家では「3児のパパ」として奮闘中(のつもり)。

皆さまの健康寿命を延ばすアカウントを目指していますので、

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