持ち主の手を離れた着物は生まれ変わる
20代後半、香司(こうし=和の香りの調香師)として
お香の仕事を始めたことがきっかけで
着物を着るようになった。
着るだけで気持ちが華やぐのはもちろん、
その日の気分で、色や柄を合わせるのも好きだ。
そんな姿を知られるようになり、
いつしか方々から、
自分1人では着きれないほどの
着物を譲っていただくこととなる。
着るには耐えられない着物や、
有り余ってしまった着物をを解いて、
香り袋などのお香製品に加工することや
洋服や小物として生まれ変わらせることにも、
少しばかりだが、携わっている。
今日もまた1件、大切な着物を譲っていただいた。
地元の文化祭で声をかけてくださった
70代に差し掛かるご夫婦。
亡くなられたお母様がお召しになり、
娘・息子や孫に仕立ててた着物たち。
1つ1つ大切に、たとう紙や風呂敷に包んで残されていた。
おそらく半世紀、もっと前に仕立てたものかもしれない。
奥様は、使わないけれども活かすこともできず
捨てるにも忍びないと、着物の行く末を気にされていたそう。
大切に仕立ててある着物。
袖も通されないままの品もある。
着道楽だったとおっしゃっていたので、
着物を仕立てるのも、着るのもお好きだったのだろう。
手に取るたびに、お洒落で粋なお母様の人柄も伝わってくるようだった。
そんな大切な着物を譲り受けて
ありがたい反面、活かせるかどうかふと考える。
(今はまだ活かせていない着物がたくさんあるのも事実)
ただ、着物を譲り受けるときには、
1つだけ心に決めていることがある。
一度、持ち主の手を離れた着物は生まれ変わっているから
次の持ち主が思うように使えば良い。
どこかの本の受け売りだが、
それでいいんだと腑に落ちたのを今でもよく覚えている。
想いを受け取りすぎると、譲り受けることが辛くなる。
活かせるものは活かす。
次の方に譲れるものは譲る。
それで少しでも、着物が活かせたなら、それでいい。
<追伸>
先日、和の香りのプロの視点から、
気軽に始められるお香の楽しみ方や、
おすすめのお香について記事を書いたので、
新年をより一層心地よく迎えたい方は是非ご一読ください。