神野直彦 財政と民主主義 岩波新書2024.02.20

最初は、とっつきにくい文章でしたが、読み進めると慣れてきます。著者の長年の研究・研鑽と願いを感じる重厚な文章に、近年増えている、軽すぎる新書との違いを感じます。まじめな著作が増えてほしいものです。「資産所得には、重く課税し、労働所得には軽く課税しなくてはならない。」には同感です。その資産を得るために大変な努力をした。この上の「」の言説には努力しない人の妬みを感じるという人がいます。そういった考えには反対です。その考えが蔓延する方向は、貧富の差が広がり、人生に絶望している人が多くなり、犯罪が蔓延して、歩けない町に日本もなっていく方向ではないかと懸念します。
テスラCEOイーロンマスクの年収が8兆円なる報道がありました。そのうち何割か、従業員の給料を挙げるのに回せばよいのにと思いました。
東京オリンピック選手村であった、横浜フラッグも、住む人よりも、投機的に買われている量が多く、問題ではないかとのNHKの報道がありました。東京都はなにもしていないようです。昭和の昔は、ちゃんと住むという証拠が必要だったそうです。投機は無責任に走り、住んでいる人のコミュニティーが生まれないでしょうし、維持管理だって大変になるでしょう。今回の都知事選の争点にしてほしいものですが、争点にはならないようです。
家の値段が高くて、よい家が見つからないことも少子化につながっていると思います。TVでも若い女性のコメンテーターが述べていました。支援・補助でなくて、根本から見直す必要があると思います。年収の5倍で家が買えるようにしようとの政策が語られたことがありました。
新築マンションの建設が鈍っているとの報道に、不動産屋さんは、困った話だと解説します。でも、資材が高騰しているし、建設会社も大阪万博はじめ、駅周辺の再開発など全国的に手広くいろんなことをしている。外国人労働者まで入れて、マンションを建設する必要はないと思います。一方で、9百万戸も空き家が生まれています。リニア新幹線の建設スピードが落ちたことは、日本全体にとって良いことに思えます。粗製乱造でなく、維持管理の費用やタイミングも考えて、慎重な作り方をしてもらいたいものです。

P16の、チリのアジェンデ大統領が殺された(1973年9月11日)と、同じようなことがそれ以前、1953年8月に、イランで起きた軍事クーデターで、イランの首相だった石油の国産化をはかろうとしたモハンマド・モサッデクが失脚させられたことと理解しています。これが、ホメイニ氏のイラン革命につながっていったと思います。
P173の図4-6は、注に書かれている通り、財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成30 年第2号(通巻第134 号)2018 年7月、格差と再分配をめぐる幾つかの論点、よりの図です。その論文がネットで入手可能なので読んでみました。示唆に富む論文です。1億円以上の所得がある人の税率が下がっていくことが説明されています。

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