ルネ・デカルト 小泉義之訳 方法叙説、講談社学術文庫、2022.1.11、からの訳者解説と本文よりのメモです。

若きルネ・デカルトは、「遺言」をテーマに法学の卒論を仕上げるや、文献による学問を無益と断じて書を捨てた。そして、フランスを飛び出て、オランダで兵士となり、『音楽提要』 を書いてから、ドイツでの戦争にも赴いたが、冬季宿営地の炉部屋で思索した後、「世界という書物」に学ぶために、9年間の流浪の生活を送る。その後、オランダに隠棲し、数学や自然学の研究に打ち込んで、『世界論』(1633年執筆)の刊行を企てるが、ガリレイ事件の報を聞いて断念。 この約20年間の「精神の歴史」を綴ったのが、本書『方法叙説』 (1637年)である。

第一部 書を捨てるに至った経緯。
デカルトは子供時代から「文献 によって育てられた」。「文献」を通してこそ、「人生で有用なすべてについて明晰で確かな 認識」を獲得できると信じていた。しかし、学院と大学を終える頃には、「多くの疑い」に とりつかれるようになった。学校の書物も在野の書物も、生きていくのに有用な認識をもたらしてはくれないとわかったからである。こうしてデカルトは、「教師への服従を脱することが許される年齢になるとすぐに」、「文献の研究から全面的に離れた」。その代わりに、「自己自身」か「世界という大きな書物」のうちに発見できるはずの「学知(知識)」を追い求めた。そうして、「旅」に明け暮れ、「宮廷と軍隊」を調べ、戦場で命がけの行動に打って出ることによって、「書斎」では発見できない「真理」を発見することを追い求めた。しかし、生きていくのに有用な知識や真理が戦場に転がっているはずもない。デカルトは反省を強いられることになる。

第二部 真理の認識においてできるだけ前進するための、四つの準則。
明証性の規則、分割ないし分析の規則、総合の規則、枚挙の規則、この方法で、理性をよく使っていると確信した。

第三部 幸福に生きるための、4つの格律。
法律と習慣に服する。自らの行動にできる限り確固として果断であり、決めたことは移り気しない。運命より自己に打ち勝つように務める。最善の職務を選ぼうと務める。

第四部 私は思考する、故に、私は存在する。
真理の探求だけに従事しようとしていたので、少しでも懐疑を想像しうるものはすべて虚偽だとして捨てなければならないと考えた。そう思考する私が何者かであることは必然的であることに至った。<私は思考する、故に、私は存在する>。思考するためには、存在する必要があるが、私の存在は完全でない。わたしより完全なものを思考することを思いついた。私より完全な存在者は、完全な自然本性であり、それは神である。

第五部、世界についての自然学

第六部、世界論を公表する理由

神や夢、医学のことは、読み飛ばしたい思いです。同時代にガリレオ裁判があり、天体のことについては、口が重くなっています。17世紀は、異端審問がまだ激しかったことがわかります。

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