第3回「看護覚え書」のおぼえがき
私は障害のある方が利用するグループホーム(以下GH)に勤務しています。そこで行ったGH内研修での記録です。今回は2章の住居の健康を読んだ感想をメインに書きます。
2.住居の健康(前編)
著者(ナイチンゲール)は、健康であるためにはどうすべきか、健康を害するものをいかに省いていくかというアセスメント(アセスメントとは事象に対する客観的な評価のこと)する力を持つことの必要性を説いていると私は捉えました。この章での著者のアセスメント力に感服しました。
アセスメントにより著者には普通に見えてくる要因が、一般の人(著者は問題と捉えることを問題視しない人)には全く見えていないことへのいら立ちも文章から感じられますが、この著書を通じてヒントを与えているのだと思います。
また、1つの事象を多面的に見て、自分でよく考えて判断することの重要性を感じました。これはコロナパンデミックに当てはめて考えてみても同じだと思います。
以下で「2 住居の健康」についてどのような記述があるか具体的に見てみてください。まず、著者は住居の健康について5つを基本的要件として挙げていますが、2章の最初の5ページで簡潔に語っています。
※以下、私の要約も交えて書いていきます。
<住居の健康についての5つの基本的要点>
住居の健康を守るためには以下の5つの要点がある。
1.清浄な空気…住居の構造として外気が家のすみずみにまで容易に入ってくることが必要。建築構造に欠陥のある住居は健康な人間を害する。家の中の空気がよどむと病気が発生する。
2.清浄な水…下水と便所の排水とによって汚染された井戸水が家庭用水として使われている。ひとたび伝染病が発生すると汚染された水を使っている人々は確実にり患する。
3.効果的な排水…良い排水とは何かという考えは多くの人にない。下水溝とそれにつながる排水管があれば完全であると信じている。排水管に防臭弁と通気口とがなければ、そこから熱病や敗血病が蔓延することもあるということには思いが及ばない。
4.清潔…住居の内外の清潔が保たれていないとせっかくの換気もあまり役立たなくなる。ロンドンの不潔な地区に住む貧困者は不快な臭気が家に入り込んでくるという理由で窓や戸の開放を反対する。金持ちたちは馬小屋やゴミ捨て場などを住居の近くに置きたがる。
5.陽光…暗い家に住んでいる人々は健康を失い、ひとたび発病するとその家で暮らしている限りは回復は不可能である。
これらのどれを欠いても住居が健康であるはずがなく、これらに不備や不足があればそれに比例して住居は不衛生となる。
住居の健康管理についてよくある3つの誤り
私たちは、自分自身で行わない時も確実にそれが行われるようにしないといけない。これこそ「責任を持っている」ということの意味である。「しなければならないことが、あなたがいようといまいといつも行われるということを意味している。」これは次章の「小管理」にもつながります。
神はこれらのことを、それほど重大に考えておられるのか?
突然文章中に神が出てきて面食らいました。この時はキリスト教的な神と捉えるのだろうと感じました。
今、また読み返してみるとこの「神」もっと違う見方もできるような気がしています。その辺りのことについてはまた別の記事にできればと考え中です。
本文に戻ります。
上記で述べたことについて神は常に自分の方法の正当性を証明されるのだから、神がそれをどう捉えるのかに眼を向けようと著者は言います。
そこで、「神は常に自然の法則を、以前から教え続けている」という例として著者があげているたいそう立派な邸宅の住人の例(P.50 13段落)が出ています。
その例を私は支援計画を作成する事例として考えると面白いと思いました。そこで事例をアセスメントするつもりで読み進めました。
事例1 たいそう立派な邸宅
課題 住人が最悪の病院におけると同じくらい酷い病院敗血症にかかった原因を発見し改善する。
当事者の考え 患者は親指をひっかいて傷つけた。召使全員がひょうそにかかるとは珍しい。今年は色々なことが起こって家にはいつも病人がいる。病気がいつもそこにある。そこにあって当然。
著者のアセスメント P.50 14段落
・下水溜めが不適切な場所に設置されている。
・汚水はバケツに捨てられたまま。
・便器は1度もきちんとすすがれたことがなかった。
・寝室用の便器は汚れた水ですすがれていた。
・寝具類は敷きっぱなし。埃を払うことも、干すこともしない。
・寝具の交換はされない。
・敷物もカーテンもいつもかびている。
・家具には埃が溜まり、壁紙には汚れがしみこんでいる。
・床掃除はされたことがない。
・空き部屋は締め切りで陽が入らず、掃除も換気もされない。
・食器棚などは常時不潔な空気の貯蔵場であった。
・念入りに各室のドアをすべて開けて廊下の窓をすべて閉めていた。
・下水溜めを通し下水溝の空気が全ての部屋にくまなく流れこんでいた。
・夜には窓はすべて堅く閉ざされていた。
・日中も窓が決まった時間に開かれなかった。
・開いて当然の窓も開かなかった。
・召使たちは窓は開けてドアを閉めなさいとは教えられていなかった。
・召使たちは風通しのよい庭へ向いた窓ではなく高い壁に囲まれた湿っぽい狭間に向いた窓をあけている。
・換気のない広間や廊下に面したドアを開けている。
著者がアセスメントから導き出した原因 不潔な空気
以上のような著者によるアセスメントから、私たちが日ごろ作成し、利用者の支援に役立てている個別支援計画の項目(生活全般の解決すべき課題、支援目標、サービス内容)を思い浮かべてみると、このたいそう立派な邸宅の住人にどのような支援をするべきかが自ずと浮かび上がってきます。
なぜなら、「神は確とした自然の法則を定めている」からです。
また、私たちがGHの利用者の解決すべき課題を発見し、支援につなげていくためにはこのようなアセスメントを行って目標を立てることで、支援者(ケアにあたる者)が複数いても共通した認識で支援することができます。
つまり、「しなければならないことが、あなたがいようといまいといつも行われる」ということへつなげることができます。
常に自然の法則は正当である。
2章は住居の健康がテーマであるためもう1つP.53 17段落も2つめの事例として考えてみたいと思います。
事例2 召使いたちの部屋
課題 汚れた空気の巣窟と化した召使の部屋に住む、召使たちの健康を取り戻す。
当事者の考え 健康が蝕まれるのは全く「説明がつかない」不思議なこと、3人がそろってしょうこう熱にかかった場合もなんとよく伝染るのだろうと思っていた。
著者のアセスメント 部屋をひと目見て、ひと嗅ぎすればそれだけでわかる。それは「説明のつかない」ものではない。その部屋は小さくもないし、2階にあり大きな窓が2つあったが、今までに述べてきた要点がほとんどすべてないがしろにされていた。
それはまず第1に、直接的に新鮮な空気を呼吸することの不足によるものであり、第2に間接的に、怠惰、不健康な刺激を求める生活、不健全な食生活、興奮剤と緩下剤の濫用、その他生命力を消耗させるもろもろの習慣によるのである。
結論 以上から上記第1、第2に記述された反対のことをすれば、召使たちの健康はよみがえると言える。また「家全体を隅々まで清潔にし、普段にもまして換気を十分にすること。」とも著者は述べています。
データから見る住居の健康ということについて
ここまで看護覚え書を読んできて、新鮮な空気を取り入れることはこれほどまでに人間にとって重要で欠かせないことであるということが理解できました。
これらのことを私たちの日常に置き換えて考えてみた時マスクをすることで自ら出した二酸化炭素がたくさん含まれた空気を繰り返し吸っていることの不健康さについて改めて気づきました。自身の免疫力を下げない為にも、本来のあるべき姿についてもう一度、よく考えないといけないと思いました。
また今回、個別支援計画を作成するためのアセスメントをする視点で事例を読んでみたことで著者の客観的で冷静な洞察力を感じました。
この章に関して以下の奈津美さんと侑子さんの対談すごくお勧めです。軽快な語りで看護覚え書についてわかりやすく教えてくれています。
ここまで読んでくれてありがとうございます。引用が多くなってしまったので本当はもう少し簡単に読める方が良いですよね…。
次回は2.住居の健康(後編)について書いていきます。
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