偽装仮面舞踊劇、「雨中いでし遠くの山の月かも……。」
中世の頃、鎌倉期時代の山の夜もふけ、少しばかり小雨が降り始めていく。
夜空の雨雲も、ちれぢれになりほんの少しばかり新月がみえてきてしまう。
山あいの中伏になにやら人影達が、薄ぼんやりと多数揺らめいて見える事がわかって来る。
松明よりも弱々しいかがり火のような、いや、それよりもロウソクよりも弱よわしい光が線を引いてくねくねとあたりを周り周遊しているのが、なんとなくわかってきた……。
それはロウソクよりも弱い火、一本の藁に火をつけたものだった……。
だんだん、薄暗がりに目が慣れてくると……、
それは藁に火をつけたものを口にくわえた黒影であった……。
踊りのようなものを踊っていて……数人が、黒影が舞踊のようなものを暗闇のなかユックリと、舞っていた……
耳をすませば……かすかながらに横笛の音色と、鼓の音が聴こえてくる、拍子をうつ合いの手も響いてきた……。
それらは……かれらは、薄暗い崖の下の草むらの上で、舞のようなものを不気味に舞っていたのだった。
よくよく見てみると、狐のお面をかぶった女性らしき者と、鬼のようなお面をかぶった男らしいものがゆっくりと口に火をくわえ、両人とも仮面劇の舞のようなものを舞っていた。
近くのこちらの気配にも気づかず…。
両者の少し後ろに翁のお面を被ったものが、時に横笛を弱々しくふき、時に鼓を弱々しく、打ち鳴らしていた。
それは、男女の愛憎劇の物語物を演じ、舞を舞っているのようであった。
それは、薄くはかなくもあり、それでいて男と女の愛と憎しみを陰惨に演じているとも…とれるものであった。
その時だった。
狐の面を被った女が、目にも止まらぬ早業で、般若のお面につけかわり……、
鬼のお面に、爪をたてるような仕草で襲いかかり……、
鬼の男は木の棒で、それを打ち払い、それでいてなにかを祈願するように木の棒を天に捧げ、うち奮い始めた……
般若の女は地に伏せガタガタと震え始めた後に、
ふたりは翻り、背中を合わせ気が抜けたように崩れ落ちるさまを見せ……、
背中合わせのまま……雨に打たれたまま……そのまま疲れたように……ただ、そのままで、ずっと居続けたままだった…………………………。
そのまま、幾つかの時が経ったのであろう。
気づけば、私は満月がこうこうと光り輝く山の下に、ひとり立ち尽くしていた……。
あの三人は、どこへ行ったのであろう?
まるで私は暗闇のなか、ただ立ちすくんでいるだけであるようだった。
あれは、人をたぶらかす何かの、もののけの化身だったのか、何か、自然のなにかの精だったのか……
あの三人が、私の中を通り過ぎ、走り過ぎ去っていったように……、それでは、私はどうなるのだろう………、私のこころの居場所は……いずこへ………、どこへ…いけばいいのだろう……
……、
あの影たちは………何処へ………、
いずこへ……
鎌倉の世のとある夜であった……