14.おおるないと半吉せっしょん
8月9日
発症以来視界がぼやけていたので、外出してメガネを作った。
妻とららぽーとで昼ごはんを食べて幸せだった。
メガネ屋さんのサイトで、カメラで顔を写してメガネの似合い度を判定する機能があったが、0%のメガネがあった。
販売店としてどうなんだろう。僕がそのメガネを持って行ったらちゃんと止めてくれるのだろうか。
結果100%のメガネにしました。
8月10日
作業療法でピノを作った。
当然本物じゃないが、硬めの粘土で割と精巧にできていたと思う。OTさんがマドラーを持ってきてくれて、ピノを刺して食べるリハビリをした。
自分で食べるだけでは飽き足らず、机の真ん中に置いてあるアルコール除菌液のボトルを子供に見立てて、子供にピノをあげる練習をした。
この辺りで笑いが堪えきれず、もはや泣いていた。泣きながらアルコール除菌液にピノを差し出す沖縄顔の男。切り取って飾りたい。
僕の家でピノを買う時は個包装のファミリーパックだが、ぜひ爪楊枝で子供に食べさせたいと思う。
病院は18時食事で21時に消灯だった。30代男性だとかなり早いように思えるが、もともと仕事で早起きだったのと小さな子供がいるのもあり、病前と変わらなかった。
なので病棟の電気がつく6:30頃より1時間近く早く起きて動いていた。朝の何とも言えない静かな雰囲気が好きだった。
この頃固まってきた朝晩のルーティンは下記の通りだ。
とりあえず朝起きてルーティンをやって、時間があればXで教えてもらった、パーソナルトレーナー学校の講師の方のストレッチをやっていた。
退院までに家でもできる完成版を作る。
8月11日
傾斜付きのトレッドミルでのリハビリを行なった。以前からずーみーさんのおすすめでトレッドミルトレーニングはしていたが、それとは違う器具だ。かなりの傾斜をつけることができる。
病院は良い意味でも悪い意味でも段差と傾斜がないので、練習する場所がない。平地を歩くだけならかなりの距離歩けるので、傾斜をつけたり重りを付けたりして、負荷に慣れていきたい。
理学療法で、トランクソリューションなる姿勢の矯正器具を付けることがある。
僕は元々猫背でガニ股だ。猫背を直そうとすると反り腰になって体が痛くなる。
このトランクソリューションはどういう理屈か猫背を矯正して、正しい歩き方を教えてくれる。しかも外した後もしばらく効果が持続するらしい。これは本当にすごい器具だ。
猫背や反り腰の方はトランクソリューションと検索してみて欲しい。想像の10倍は簡単な作りだ。そして100倍ダサく、20倍高い。
よく理学療法の際に、この器具はダサい以外は完璧だとPTさんに言っていたが、値段もマイナスポイントの一つに加えておく。
この日の病院食が、日記をまとめている現在(9月10日)までのHFY(ホスピタルフーヅオブザイヤー)を総なめにしたので、載せておく。
8月12日
フェスを知ってるだろうか。
フェスティバルのアレである。病前は音楽好きだったこともあり、野外フェスに行っていた。退院して慣れたら来年の夏フェスに行きたいなーと思っていた。
場所によっては障害者ブースを設けているところもあり、モッシュやダイブに巻き込まれてにくい。その上結構良い席になっているところもある。
そんな時僕にぴったりのフェスがあるらしい。
その名は、
脳フェス。
脳卒中フェスティバル。なんそれ。
ずーみーさんやセカサマさんの動画を見て知っていたが、詳しい内容は知らない。どうやら今年も開催するらしい。
過去には名古屋の、しかも僕の新居から車で10分程度のららぽーとでやっていたらしいが、今回は東京らしい。
10月末だが、退院した翌月に遠出して行けるかどうか。そもそも何をするのか。などと考える前にクラファンに1万円出していた。
とりあえず楽しそうなんで、行ってみよう。
ということで家族にも協力してもらい、何か楽しそうな事を探しにフェスに参加することに。
SNSで知り合った先輩や同期の方々とも会えるはず。沖縄顔で東海っぽい感じなら僕。
8月13日
外泊日。
フランスで料理屋をやってる顔の濃い友人が、フランス人の彼女と九州旅行するとのことで、ついでに免許の更新に名古屋に寄るのでと、僕に会いにきてくれた。情報が渋滞するとはこのことだろう。
父と娘の誕生日パーティーをした。両親、姉夫婦、紅と虎之助みんなでお祝いをして、姉と両親の飼っている犬のTシャツを、みんなで着る。病気になってなかったら、100%起きていない。
脳出血になって良かったなど、1ミリも思っていないが、脳出血になったから起こった良い事はたくさんある。
8月14日
友人宅にて子供たちを遊ばせてもらった。今時の子供用プールがあんなに大きいとは。
ちなみにこの友人は5月4日、半吉となったあの日に一緒にいた彼である。ようやく昔みたいに子供を連れてヘラヘラできる。本当に感謝しかない。
お昼に妻が買ってきてくれたお弁当を、机無しで膝の上で食べるのがここ最近で一番難しいリハビリだった。
8月16日
STEFステフという上肢機能簡易検査を初めてやった。STEFとは日本でスタンダードな上肢つまり腕手指の試験だ。
これは10種類の物品を掴み、動かして、離すまでのタイムを測って、健常者のタイムとどれだけ違うか、という試験だ。特徴としては左右それぞれ行い、健側と麻痺側の差も見ることができる。
入院して今まで3ヶ月リハ室でよく見てきた。論文やリハビリに関する検査や試験などを調べる時にも目にしてきた。
それをなぜ今までやったことがないのが。できないからだ。僕の検査用紙には、STEFの欄に困難とだけ書いてあった。
普通入院時に測って、その後どのように改善してきたかを示す試験を、そもそもできなかったのだ。麻痺が重度だとは聞いていたが、やっぱり重度だったんだなと思い知った。
悲しいとか悔しいなど、微塵も思わなかった。ついに来たかと、誇らしかった。
パチンコ玉みたいな玉は運びきれず、金属の小さな棒は掴めず。結果は良くなかったが、この先何年かかっても更に回復して、もう一度STEFを受けてやろう。
続く。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?