⑥/⑧『入門シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才』

⑥/⑧中野剛志氏著『入門シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才』読了。



著者による解説動画は以下より。



今回は難しい本でしたので、各章ごと(全8章)にまとめていきたいと思います。


各章はこのようになっています。

①どんな人がイノベーションを起こすのか

②資本主義とは何か

③なぜ日本経済は成長しなくなったのか

④創造的破壊とは何か

⑤企業の成長戦略

⑥どんな企業がイノベーションを起こすのか

⑦シュンペーター的国家

⑧資本主義は生き延びることができるのか


今回は⑥を取り上げます。


⑥どんな企業がイノベーションを起こすのか

この章では、シュンペーターの流れをくむウィリアム・ラゾニックの研究を元にして論が展開されています。まず彼はイノベーションを生み出す「革新的企業」には「戦略的管理」「組織的統合」「資金調達コミットメント」が必要だと説きました。簡単に言うと、「頭脳」「組織」「金」です。また、イノベーションを起こすには革新的企業だけでなく、社会的条件も必要だと言います。特に重要な条件が「ガバナンス(生産資源の配分にかかわる)」「雇用」「投資(speculationではなくinvestmentのほう)」が重要で、この三要素を決定できるのは政府だとしています。つまり、政府の政策によってイノベーションが起こるか起こらないかが決まるというのです(この時点でもう嫌な予感がします)。ちなみに、主流派経済学は市場原理主義ですから政府の存在を邪魔なものだとしています。では、これらのことを踏まえてイノベーションが起こる企業にはどんな特徴があるのでしょうか。彼は「内部留保と投資」「終身雇用」を挙げています。再び「戦略的管理」「組織的統合」「資金調達コミットメント」に基づいて、「内部留保と投資」「終身雇用」を見てみましょう。「戦略的管理」について言えば、当時の米国の経営者は長期の利益を拡大させるため、資源を配分していきました。「組織的統合」としては、「終身雇用」によって、従業員の雇用の長期的な安定を確保し、従業員が累積的に学習し、時間をかけて能力を高めることができていました。「資金調達コミットメント」について、収益を内部留保として維持し、株主への配当ではなく、設備投資などの再投資に回したので、長期的で戦略的な投資ができました。これっていわゆる「日本的経営」ですよね。しかし、残念ながら、このような日本的経営の革新的企業は壊されることになります。それは株主資本主義のせいです。主流派経済学の考えでは市場で自由に競争させたら良い結果が得られるというものなので、株式市場も規制を取り払い、自由な競争をさせることで、良い企業の株価は上がり、悪い企業の株価は下がり、このメカニズムによって資源の最適配分が可能になる(理解できない人は正しい脳の持ち主です。)ということになっています。この考えのもと、株主への配当の最大化を推し進められることとなりました。それによって、企業は短期的な利益しか追求できず、労働者の賃金は抑制され、設備投資も減っていきました。「内部留保と投資」「終身雇用」から「削減と分配」の時代になったのです。これにより、米国経済は失速し、イノベーションも起こりにくくなっていきました。日本もそれに追随して、イノベーションが起こらないどころか、デフレで苦しむようになりました。ほんと、バカなのか日本。。。具体的な株主資本主義の政策や、株式市場の価値抜取化、スタートアップ企業の特徴の詳細を知りたい方はぜひ本書を手に取ってみてください。


米国がイノベーションを起こさなくなったとか言うけど、iPhoneとかイノベーションがバンバン起こっているイメージがあるという人は次回をお楽しみに。


今日はここまで。


以上

いいなと思ったら応援しよう!