②/⑧『入門シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才』

②/⑧中野剛志氏著『入門シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才』読了。


著者による解説動画は以下より。



今回は難しい本でしたので、各章ごと(全8章)にまとめていきたいと思います。


各章はこのようになっています。

①どんな人がイノベーションを起こすのか

②資本主義とは何か

③なぜ日本経済は成長しなくなったのか

④創造的破壊とは何か

⑤企業の成長戦略

⑥どんな企業がイノベーションを起こすのか

⑦シュンペーター的国家

⑧資本主義は生き延びることができるのか


今回は②を取り上げます。


②資本主義とは何か

シュンペーターは資本主義の3要件として以下の3つを取り上げています。

・物理的生産手段の私有(私有財産制)

・私的利益と私的損出責任(契約の自由)

・民間銀行による決済手段の創造

彼は2つ目までだけでは商業社会ではあるが、資本主義社会でないと言い切るなど、3つ目の要件を最重要視していました。これは俗に言う銀行による「信用創造」のことです。「信用創造」と言ってもぱっとしない人が大多数だと思います。この「信用創造」は英語にすると、"money creation"、つまり「お金を生むこと」となります。では、民間銀行はどのようにして「信用創造」つまり「お金を生んでいる」のでしょうか。実は簡単。例えば、新規事業のため10億円借りたい人がいるとします。銀行はその人に元本+利子を返す能力があるかを厳格に審査します(与信審査)。そして、借り手に返済能力があると判断すると、どこからもお金を調達せずに、借り手の口座に10億円というデータを入力するだけで、新たにお金が生まれます。そして、逆に借り手が元本+利子を返済すると、その10億円はこの世から消えてなくなります。つまり、お金というのは「誰かが借りると誕生し、誰かが返すと消えるもの」なのです。この「信用創造」の機能があったので、企業人は何もないところからお金を調達し、工場建設などイノベーションにつながる経済活動が可能となりました。


さらに、シュンペーターは一歩踏み込み、信用創造と、その反対の信用破壊(誰かがお金を返すことで世の中からお金が消えること)を元に、インフレ、デフレについて考察をしていました。まず、ある人が生産設備の増強をしたいと思い、資金を銀行から調達します。この時点では、生産設備は完成されていなく、お金が新たに誕生したので、「インフレ」圧力が生じることになります。しかし、生産設備が強化され、調達資金を返済すると、供給能力は上がり、お金が消えるので、「デフレ」圧力が生じると論じています。つまり、資本主義社会というものは常にデフレのリスクを伴っているということです。


今日扱った「信用創造」を理解することは、正しい貨幣観への第一歩です。この記事を読んでも分からなかった方は、以下の動画をご覧ください。




今日はここまで。


以上

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