④/⑤(2) 『世界インフレと戦争 恒久戦時経済への道』
④/⑤(2) 中野剛志氏著『世界インフレと戦争 恒久戦時経済への道』再読了。
構成は以下の通りです。
①グローバリゼーションの終焉
②二つのインフレーション
③よみがえったスタグフレーション
④インフレの経済学
⑤恒久戦時経済
今回は④の感想を書きます。今回はその2回目です。
④インフレの経済
今回は、ポスト・ケインズ派経済学の理論の一つである「貨幣循環理論」を紹介します。
民間部門における貨幣循環理論
まず、民間部門に目を向けると、最初に企業の資金需要があり、そこで信用創造が行われ、そこから企業の支出が行われ、民間(企業+家計)に貨幣が流通します。企業は収益を得て、借りてたお金を返して、ここにおいて貨幣が消滅します。
政府部門における貨幣循環理論
では、政府と中央銀行を入れてマクロで見た時にはどうなるか。まず、政府に資金需要があります。そして、中央銀行は政府に対して信用創造を行います。政府には徴税権があり、いつでも債務の返済ができるため、中央銀行は政府に対していくらでも貸し出しを行うことができるということになります。(ここは異議ありですが先に進めましょう。)そして、政府は民間に支出をし、貨幣を供給する。民間は政府に対して税金を納め、その税金で政府は中央銀行に対する負債の返済をして、貨幣が消滅する。正直、この理論は違うなと思いました。もしこれが本当なら、中央銀行から政府への貸出は民間の納税力に制約されてしまうからです。しかも、ここでは国債というものが登場しません。しかし、次の3点は確認できるでしょう。
①政府の支出(貨幣供給)が先で、納税は後。(スペンディングファースト)。→財源確保のための徴税は必要ない。
②政府が債務を負う(中央銀行から借りる)ことで、貨幣が誕生し、政府が民間に課税し、債務を返済すると貨幣が消滅する。つまり、政府の赤字は民間の黒字(逆も真なり)。
③民間に貨幣が流通するためには、政府が債務を負って貨幣を供給するか、企業が債務を負って貨幣を供給するしかない。→全主体が負債を返済すると貨幣がこの世から消えてしまう。
これが「貨幣循環理論」です。
次回は、2つ目の「現代貨幣理論(MMT)」について説明します。
以上