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楽園

 楽園の中にいた。楽園の中は音が声が微かに遠くから聞こえた。色は外側の世界より色褪せていた。楽園の中では一人ぼっちだった。それでも外側の世界よりは随分マシだった。気が楽だった。

 外側の世界では、がらくたな友人はいる。友情が存在せず、あるのはカーストだった。あの人が上でその人が下。無色無臭透明なカーストが外側の世界を支配していた。がらくたな友人が目を光らせて監視していた。カーストに従えない人がいるとずっといびられ、吊し上げられ続けた。心が抉られ続けた。排除されるよりも酷かった。辛かった。

 外側の世界の人は楽園の人を眺め続けた。哀れむ目で。同情する目で。楽園の近くまで来てくれる外側の世界の人もいた。腐敗した思い出を捨てることを手伝う人も来る。だけど、腐敗した思い出を捨て去る程度だったら一人で出来る。哀れむために同情するために来るのだったら来ないで。今は哀れみも同情もいらないから。

 

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