
ボストン・リーガル ☆111
海外ドラマの事はあまり詳しくないけれど、むかし嵌ったのは『ボストン・リーガル』だ。
制作されたのはもう20年も前になるようだ。ボストンのお金持ち相手の法律事務所の物語で、そこの弁護士達はもちろん凄腕ばかり、クライアントの為なら法律ギリギリまで(時には飛び越えて)闘い、勝利する人達なのである。
その中でも異能なくらい優秀なのがアラン・ショア(ジェームズ・スペイダー)で、彼の澱みない弁舌の前には検事も裁判長もタジタジになってしまうのである。ほとんど勝ち目のない案件も(殺人事件でも)奇跡的に勝ってしまうのだ(汚い手も使うが)。
そしてもう1人、デニー・クレイン(ウィリアム・シャトナー)、法律事務所の共同代表であり看板弁護士なのだが、既に高齢でかなり耄碌している。若かりし頃からの名声と貫禄を武器に力業で裁判をねじ伏せてしまう。一通り弁論を述べた後に「デニー・クレイン」と自分の名前を言って締めてしまうと、訳が分からないけれど、なんだか説得力がついてしまうのである。
『ボストン・リーガル』は法廷コメディなので明るい色調のドラマだが、若くてやり手のアランと豪腕の老弁護士デニーはぜんぜん性格も信条も違うのに意気投合して名コンビになってしまう。
まるで無敵の2人のようだが、本当はそんな事はなくて、強者デニーも自身の認知症を自覚していて本当はボロボロの不安に苛まれており、アランもイザとなればデニーを頼りにしてしまう、裸になれば弱い存在で、
怖いものなしのアランもデニーの魅力にひかれ、いつしか依存してしまう、頭が良く功利的な男に見えるが、実は好きな人のためなら何でもやってしまうくらいのお人好しの部分も持っていて、自分を殺そうとした事もある元妻にも助けを請われれば全力で救う人なのだ。
法廷シーンはメインディッシュだが、それが終わった後のアランとデニーのバルコニーでの掛合はいつまでも観ていられるのである。
アランは頭が良く、理路整然としているが、その根底には人を救いたいという情熱がある、
その熱量に、法廷すら絆されて、動かされてしまうのだろうと思う。
そして、厳格な法律といっても、敏腕の弁護士が居れば判決は変わるし、優秀な弁護士も、ただ優秀なだけでは負けてしまう。同じ人でもギアチェンジすれば勝ちをもぎ取れるようになるのだ。
アメリカのような訴訟社会ならではのドラマだが、これもまた、1話から見直したい作品である。