光免疫療法で再発した乳がんが完全消失! 東大
東京大学先端科学技術研究センターは9月20日、光免疫療法を2回おこなうことで、マウスの再発した乳がんを完全に消失させることに成功したと発表しました。研究チームによれば、がんを手術せずにほとんど副作用なく治すことができる画期的な治療法の確立につながる可能性があるそうです。
光免疫療法とは?
光免疫療法とは読んで字のごとく「光」+「免疫」療法です。
まず光免疫療法では近赤外線などの健康な組織や細胞には影響を与えない、いわばやさしい「光」を使ってがん細胞だけを殺します。光免疫療法の「光」の部分ですね。
ところで、今、えっ、なんでそんなことができるのと思いませんでしたか?カギは「抗体」と「活性酸素(細胞に対して強烈な毒性がある)」にあります。
抗体とはコロナ過ですっかり有名になってしまったあの抗体です。で、この抗体には特定のウイルスや特定の細菌などにくっつく性質があります。もちろん特定のがん細胞にもくっつきます。
そこで、光をあてると活性酸素を発生させる物質を特定のがんにくっつく「人工」抗体に合体させます。すると、この人工抗体+活性酸素を発生させる物質は特定のがんの組織にあつまりますね。そうしてそこに光をあてると、その部分限定で活性酸素が発生し、がん細胞だけが死滅するというわけです。ちなみに、この人工抗体+活性酸素を発生させる物質を光免疫製剤といいます。
ところで、この時、がん細胞はいわば破裂するような形で死にその内容物が周辺に撒き散らされます。そのため、その内容物に私達の体の免疫が反応し、生き残ったがん細胞を攻撃すると共に、離れたところに存在する転移したがん細胞も攻撃します。これが光免疫療法の「免疫」の部分です。
一粒で二度美味しいどこかのキャラメルみたいですよね!
そして、ここまでの説明からもお解りのように光免疫療法はほとんど副作用がなく私達の体にとても優しいがんの治療法だと言われています。
2回の光免疫療法で再発した乳がん細胞が完全消滅!
では、以上を踏まえて、いよいよ今回の研究成果の内容を詳しくみていくことにしましょう!
まず、研究チームはこれまでの光免疫製剤よりも効果的な新しい光免疫製剤を開発しました。「FL2」です。
FL2は人工抗体「抗体ミメティクス薬剤」と光をあてると活性酸素を発生する物質「Ax-SiPc」から構成されています。
そして、研究チームは、10匹のマウスの皮膚にヒト乳がん細胞を移植し増殖させた後、FL2を使って光免疫療法をおこないました。
すると、1回目の光免疫療法でマウス10匹中5匹のがんが完全に消滅しました。しかし、残りの5匹はがんが再発してしまいました。そこで、研究チームは残りの5匹に2回目の光免疫療法をおこないました。すると、残った5匹全部のがんが完全に消滅しました(病理学的完全奏功)。
凄い!
研究チームによれば、今後、FL2を使った光免疫療法の皮膚のがんへの臨床応用が進めば、これまで治療が難しかった進行がんに対する新しい治療法の誕生につながるかもしれないそうです。
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【参考URL】
東京大学先端科学技術研究センターのプレスリリース 再発した乳がんを完全消失させる実験に成功 | 東京大学 先端科学技術研究センター (u-tokyo.ac.jp)
光免疫療法について 光免疫療法とは |関西医科大学 (kmu.ac.jp)