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鳥の翼の構造の1部は恐竜時代にすでに獲得されていたことが判明 東京大学

東京大学は2023年2月27日、鳥の翼の構造の一部である「前翼膜」が獣脚類恐竜の1種であるマニラプトル類において進化し鳥類に受け継がれたことがわかったと発表しました。

これまで、皮膚、筋肉等軟組織は化石として残りにくいために、前翼膜がどのように進化してきたのか、についてはよくわかっていませんでした。

今回の研究成果を基に作成されたマニラプトル類の復元図。画像:東京大学プレスリリースより引用。

恐竜から鳥へ


鳥類は恐竜から進化したということを知っている方も多いと思います。映画等で有名ですよね。

しかし、なぜそのように考えられているのか、詳しくは知らない方も多いと思います。そこで、なぜ鳥類は恐竜から進化したと考えられているのか、その根拠を簡単にみておくことにしましょう!

まず、恐竜の一部と鳥類は、手首、肩、骨盤等80ヵ所以上の骨格の特徴が共通しています。例えば、鳥類は叉骨(さこつ)と呼ばれる特徴的な骨を持っていますが、獣脚類恐竜の1種アロサウルスもこの叉骨を持っていたことがわかっています。

次に、恐竜の中には羽毛を持つものがいたことがわかっています。例えば、獣脚類恐竜の1種ミクロラプトルの4つの羽には羽毛が生えていて玉虫色に輝いていたと考えられています。

最後に、恐竜の一部と鳥類で共通にみられる行動もあります。例えば、獣脚類恐竜の1種オヴィラプトルは卵を抱いて温めていたことがわかっています。

以上のような骨格、羽毛、行動等の共通性から、現在では、鳥類は恐竜から進化したとする考え方が研究者の間で主流になっています。

マニラプトル類はすでに前翼膜を持っておりそれが鳥類に受け継がれた

現生鳥類の解剖図。前翼膜の中に前翼膜筋が通っている様子がわかります。画像:東京大学プレスリリースより引用

イラストから解るように、鳥類の前翼膜の中には前翼膜筋が通っています。そのため、鳥類化石は肘関節がある程度以上には開いていないことが予想されます。

そこで、研究チームは、爬虫類化石と鳥類化石の肘関節の角度を比較しました。すると、予想通り、鳥類化石の肘関節は、爬虫類化石の肘関節よりも開いておらず、その角度は111.0度を超えないことがわかりました。


画像:東京大学プレスリリースより引用

以上を踏まえ、研究チームは恐竜化石と初期鳥類化石について肘関節の角度を測定しました。すると、マニラプトル類では常に肘関節の角度が小さい範囲内に収まっていることがわかりました。

また、珍しく筋肉や皮膚等軟組織の痕跡が残っているマニラプトル類の化石2つについて、研究チームが詳しく再検査したところ、前翼膜筋と思われる軟組織の痕跡が確認されました。

以上から、研究チームは、マニラプトル類はすでに前翼膜を獲得しており、これが鳥類に受け継がれた可能性があると結論付けました。


今回の研究成果から考えられる前翼膜の進化の過程。画像:東京大学プレスリリースより引用

研究チームでは、今後、化石を対象とする古生物学的な研究だけではなく、現生鳥類や爬虫類の発生の過程を細胞レベル、遺伝子レベルで比較する発生学的な研究も合わせて進めていくことで、鳥類の体の構造の進化の過程について詳しく解明していきたいとしています。

【参考URL】

東京大学のプレスリリース Press Releases - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部 (u-tokyo.ac.jp)

恐竜から鳥へ 総説論文 _pdf (jst.go.jp)






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