縁側のように暖かい場所を作りたいー engawa代表・兼松明日佳さんが目指す場所
現代は、あらゆるものがシステム化されており、非常に便利な世の中となっています。その一方で効率性重視の風潮が広まり、ミスが許されないストレスからメンタルを崩してしまう人も少なくありません。
このような時代だからこそ、誰もが安らげる場所に価値を感じる人が増えています。任意団体「心の休憩処 engawa」は、代表の兼松 明日佳さんが「安心安全な場を通して、自分を生きる力を呼び覚ましてほしい」という思いを持って設立。定期的な交流イベントを通じて、参加者の心に安らぎを提供しているといいます。
今回は、engawaの代表を務めている、兼松 明日佳さんに、団体設立のきっかけや目的、活動内容・課題などを伺ってきました。
生きづらさを抱える人々のために立ち上げた「engawa」
ーーーまずはengawaを設立したきっかけを教えてください
兼松:私は昔から他の人と何か違うという自覚があり、人間関係に悩んだり生きづらさを感じたりしていました。また、自分の家族が精神疾患で苦しみ、結果的に亡くなってしまうという出来事もありました。
そのような経験をすることで、精神的に苦しんでいる人たちが安心して過ごせる場所があれば、救われる人がいるかもしれないとずっと考えており、engawaという団体を立ち上げることにしました。
ーーーengawaにはどんな目的があるんですか
兼松:engawaのミッションは「安心安全な場を通して、自分を生きる力を呼び覚ます」です。また、ビジョンは「生きづらさを抱えている若者が、一人ではないことを知り、自分のままで生きてみようと思える社会」を作ることです。
精神的な悩みを抱えている人は、自分だけではないから心配することはない。また、生き方も別に他の人に合わせることはなく、ありのままの自分の気持ちに従って生きれば良いという思いをこめました。
悩みを聞いて共感することが癒しの一歩
ーーーengawaでは、どのような活動をしているんですか
兼松:大きく分けて、無料イベントと有料イベントがあります。無料イベントがengawaのメインの活動になり、「オンラインお茶会」「engawaの日」があります。
オンラインお茶会は、月2回ZOOMを利用して全国の同じような境遇の人と繋がるイベントです。ここでは、お茶でも飲みながら、いろいろな話をしたり聞いたりして、参加者が安らげる場を提供しています。
engawaの日は、月に1回自宅の一室を開放して、読書や会話、軽食を楽しみながら、各自思い思いに過ごすことで、穏やかな気持ちになってもらう場です。
どちらのイベントも心が疲れたり悩み事がある人が参加し、悩み事を話したり聞いたりして共感を得ることで心が安らぐような空間になっています。
有料イベントでは、多くの人に参加してもらうレクレーションとして開催しています。例えば、ハンドメイド作品を作るワークショップを開催したり、森林浴をしたりしています。有料イベントの参加費を無料イベントの開催に役立てています。
参加者は圧倒的に女性が多いですね。参加者の9割は女性という感じです。年齢層は、40代の方が多いです。
ーーーengawaの活動はどのような体制で運営されているのですか
兼松:大きく分けると、運営メンバーとサポートメンバーの2種類がいます。運営メンバーは、engawaの運営方針を決定するメンバーです。engawaを設立する前から、engawaのような企画を考えているとSNSで発信していたのですが、その時から関心を持ち協力いただいている人たちです。サポートメンバーは、engawaのイベントを不定期にお手伝いしていただける方たちです。運営方針の決定には関わらずに、イベントへの参加をきっかけにサポート側に回ってくださる方が多いです。
運営メンバーもサポートメンバーも、過去に生きづらさを感じていたり、メンタル的な問題を抱えていたりした方が多く、同じような境遇の人たちの力になりたいという思いを持って参加されています。
ーーーengawaの活動に参加された方の反応はいかがですか
兼松:イベントの後に参加者の感想を共有する時間があるのですが、「(悩んでいるのは)自分だけじゃないんだなということがわかりました」という声が多いです。メンタルに関することは、まだまだ偏見があったり、家族にも相談できなかったりする人が多いため、engawaのイベントを通じて仲間が見つかり、心が楽になったという方が多いですね。
ーーーengawaの活動を通じて、何か得られた成果はありますか
兼松:engawaを立ち上げてから、いろいろな人との繋がりがとても増えました。イベントの参加者の方や講師の方との繋がりから、どんどん人の輪が広がっていくことを実感しています。engawaを設立してから1年以上経つのですが、繋がった人たちに助けられているなという実感があります。ここで繋がった人の輪をこれからも大事にしていきたいと思っています。そして、さらにこの人の輪を大きくしていければと考えています。
心の休憩処 engawaの課題
ーーーengawaの活動で課題に思われていることは何ですか
兼松:課題となる点は、4点あります。1点目は活動場所です。現在はイベントなどは、自宅の一室で開催しているため、参加者がいつでも立ち寄ってくれる場所にはできていません。自宅とはわけて、団体として活動できる場所を借りたいと考えています。
2点目は、無料イベントの参加者が少ない点です。有料イベントは盛況なのですが、無料イベントはengawa設立の本来の主旨である、悩み事を気軽に解消してもらう場所としたいので改善したいです。でもイベントに申し込むこと自体、メンタルが弱っている方には、ハードルが高いのかもしれません。
そのため、申し込みなしで常時開放してふらっと訪れることができるような場所の確保を考えています。また、イベントとなるとどうしても複数の人と顔を合わせることになるので抵抗があると考えており、定期的に一対一で話せるような時間を作ることも考えています。
3点目は、同じような活動を行っている団体との横の繋がりがないという点です。他の団体と交流することによって、活動におけるノウハウの共有が図れたり、小さな団体どうし相互に問題解決のサポートをしあえるようになるかもしれません。
4点目は、NPO法人化です。法人化することで税金の優遇措置や助成金給付といった援助を受けられるようになりますので、より活動内容を充実させやすくなります。法人化のためには構成員となる10人以上の賛同者を集める必要がありますので、現在運営メンバーを中心に賛同者を募っている最中です。
自分なりのスピードで歩き出せる場所へ
ーーー最後に、engawaの利用を考えている人にメッセージをお願いします
兼松:今の社会は、あまりにもみんな頑張りすぎてるっていう印象が私はあるんです。もちろん頑張ることはいいことなんですけど、頑張りすぎた結果メンタルを壊す人も多いので、あえて頑張らないことの方が私はとても大事なのではないかと思っています。
スピード感とか正確さとか、みなさんそんなことばかり求めているじゃないですか。でも私は、ちょっと休憩しながら自分のペースで無理なくやっていいと思うんです。疲れたら一回立ち止まって、自分なりのスピードで歩き出せばいい。engawaは、そんなことを伝える場所になっていけたらいいと思います。
心の休憩処 engawa
公式サイト:https://www.engawa9.com/
メール:moegi.engawa@gmail.com
X:@engawa_abiko