【1分小説】17# 強くなれた物 :恋愛
「結局、伝えられなかったなぁ」
下校中の少女は、一輪の花に向かって語り掛けていた。
「いっぱい練習したのに」
「向き合ったのに」
「自身が無くて言えなかった」
「もう一生出逢わないかもしれない…」
「でも、いいや」
「これを貰ったから…」
少女は胸元のコサージュに触れる。
それから数十年後。
「それじゃあ、あなた行ってくるわね!」
「今日は同窓会だったか」
「帰りは迎えに行くよ」
「えぇ、お願い」
「遅くなるのか?」
「早めに帰るわよ」
「今日は“えいた”が10歳になる誕生日だもの」
「そうだったな」
「あの“コサージュ”はいいのか?」
「当時好きだった人から貰った大事な物なんだろ?」
「大事な物だけど、付けないわ」
「でも捨てる事もないって言ってたな」
「そうね、悲しかった過去だけど」
「私が強くなれた証だから」
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