
読んだ気になっているが読んでいない本シリーズ1.「ガリヴァー旅行記」
『ガリヴァー旅行記』ジョナサン・スウィフト, 訳:山田 蘭 角川文庫
読んだ気になっていながら読んでいない、という本があるものですねえ。すっかり忘れてそんなことも考えて見ませんでした。
というのは恥ずかしながら「ガリヴァー旅行記」のこと。
ガリヴァーといえば、巨人の代名詞になっていて、小人の国に入った巨人の話や、逆に巨人の国に入った小人の話でよく知られています。
当然ほとんどの人が知っているはず。読んだ気になっているでしょう。
私も知っているつもりで、当然読んだはずと思っていましたが、実は読んでいなかったことを知りました。
で、読んでみました。
作者のスウィフトはアイルランド生まれで、物語はイギリス出身の船医・船乗りのガリヴァーが、1700年~1750年ころの航海で体験したことを紹介した物語で、船で渡航する途中難破して行きついた各地での物語を紹介したものだ。
そもそも巨人の話以外に、はどんな話が?と聞かれると次が出てきません。
小人の国に迷い込んだ巨人の話、巨人の国に迷い込んだ小人の話、この2つの話でガリヴァー旅行記を知っているような気がしていたんですねえ。
読んでみると、へー、こんな話だったのか、と改めて目からウロコの思いでした。
読み終わって振り返ってみても、まったく記憶がない。
忘れたのではなく、知らなかったというべきでしょう。
内容も驚きでした。
とても子供が読めるような、自動向きの文学ではないことも知りました。相当なレベルがないと読みこなせません。
文庫本でも450ページを超える大著です。
内容は以下の4つの話から構成されています。
第1話 リリパット渡航記
第2話 プロブディンナグ渡航記
第3話 ラピュタ、バルニバービ、ラグラグ、グラブダブドリブ、そして日本渡航記
第4話 フウイヌム渡航記
「第1話 リリパット渡航記」はおなじみの、サイズが中指ほどの大きさしかない小人たちの国リリパットでの物語。ガリヴァー旅行記の代名詞にもなっているガリヴァーがガリヴァー(巨人)になるはなしです。
「第2話 プロブディンナグ渡航記」は、逆に巨人たちの国への旅。ガリヴァーが小人になってしまう12倍の大きさの巨人が住む国でも顛末が紹介されています。
「第3話 ラピュタ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリブ、そして日本渡航記」は、同じサイズの人間が住む、さまざまな国での物語です。
空中に浮かぶ島ラピュタなどがあったり、不死の人種がいる島があったり、いろいろと変わった趣向が出てきます。
不老長寿を希求する人たちに対して、不死と言っても放縦に生きられるわけではなく、老化が来るなかでは決して喜ばしい状態ではないと訴えています。
「第4話 フウイヌム渡航記」は、高度に洗練された馬フウイヌムが国政をリードしイニシャティブを取っている島の話、そこでは人間がヤフーと呼ばれ畜獣化・野生化しています。
英国の話などをすると、理性もあり、文明が発達していると言いながら殺し合うなどなんと野蛮なことをしているのか、と人間の文明に対する風刺が縦横に語られます。
ガリヴァー各地では当時のイギリスについて説明させられたりするが、当時の時代背景で政府携帯や社会の在り方を紹介するが、説明しようとするといかんともしがたく風刺や批評などが入ってしまうところが、作者の創造力だろう。