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077. 日本人の独創性

076 日本人の独創性
 ここまで日本人のものづくりに対する意識や考え方、働き方を見てきましたが、日本のものづくりという点で外すことができないテーマがあります。それは、ペリーの日本遠征記をはじめ、多くの外国人から指摘されてきた、「日本人は創造性に欠けるが、細工の精緻さには驚かされる」というフレーズにある、「日本人は創造性に欠ける」という課題です。
 江戸末期の日本を訪れた多くの外国人から、日本人は、創造性、独創性に欠けるが、緻密な加工をする力は目を見張るものがある、と言われてきました。
現在においても、製造業のQCD(品質/コスト/納期)の能力、つまり、緻密に加工し、組み立てた高品質な製品を低コスト・短納期で作るという能力は、他の国々と比較して日本の企業の顕著な特徴と言われます。
そして、日本人には、巧みに作り上げる技能はあるが、独創的なものをつくる創造力に欠けるという声もまた、海外・国内を問わず、というよりも、むしろ国内でも多く聞かれてきました。いま、模倣天国と非難されている中国の姿に、第2次大戦直後の1950-60年代の日本の姿を重ねる人もいます。
製造業にとって、
・「What」何を作るか(プロダクト、商品・商品企画)と、
・「How to」どのように作るか(プロセス、作り方・生産技術)
の2つは、いわば車の両輪です。
この両輪がスムーズに回転することでものづくりは未来に向かって前進しますが、商品開発やプロセス開発の原動力になるのが、「創造力」とQCDを実現する力=「生産技術力」です。
この創造性とQCD能力は、日本の特徴を語るときに、例えば、創造的なものを生み出す力はあまりあるとは言えないが、高品質、仕上がりのきれいさは他の追随を許さない日本の独擅場である……というように、対で語られることも多いようです。
戦後の高度成長期に、日本の研究者たちは、外国で生まれた研究成果を取り入れて応用してきました。そのため、一時期までは、日本の製品と言えば、「模倣」品といわれて、日本の研究者たちには独創的な研究をリードする力はないと言われ続けてきました。いまでも製造業の経営者に聞くと、日本人の課題は創造力、研究開発力にある、という人は多いようです。
かつてトランジスタの品質向上に貢献し、エサキダイオードを生み、トランジスイタラジオ、テープレコーダー、ウォークマンを開発し、日本の電子産業が先端技術で世界を席巻した時代もありました。果たしてほんとうに日本人に、創造力はないのでしょうか? この点を少し考えてみましょう。


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