(補)中国にもない漢字・漢文の大系が日本で出版されているわけ
「新釈漢文大系(120巻・別巻1)」 明治書院⇒2018年5月完結
漢字、漢文は中国生まれです。その誕生は3300年ほど前の甲骨文字にさかのぼり、以来多くの名著が著わされてきました。
しかし、残念ながらそうした数々の名著が体系としてまとめられた資料がありません。それを始めて作ったのが、全120巻の「新釈漢字大系」(明治書院)です。
中国4千年の歴史と言いますが、漢字の原点とされる甲骨文字が発明されたのは紀元前1300年ころ(3300年ほど前)の殷王朝の時代とされ、それが改良を重ねて、表意文字として使われるようになったのは周王朝の時代(紀元前1000年頃)と言われています。
いらい、論語、四書五経をはじめ、多くの名著が著わされています。こうした資料は、貴重な文書として今でも多くの研究者によって詳細な研究解読が続けられていますが、古今の名著を網羅した資料は中国にもありませんでした。
当然、母国の中国でこうしたものが作られ、研究が進められていると考えるのが普通ですが、残念ながら中国ではこうした歴史資産をそのまま保存するという発想がありません。かつて多くあったはずの古寺が中国に残されていないのと同じ理由です。
とくに文化大革命の時代には、旧態たる古いものを打破するべきという考えが大きな波となって、多くの貴重な資料が引っ張り出され、破壊され、燃やされてしまいました。時代(政権)が代われば「正義」が代わるという国では仕方がないことかもしれません。
昭和35年、第1巻論語を発刊してから34年、2巻大学・中庸、3巻小学、4巻孟子、5巻荀子上、6巻荀子下、7巻老子・荘子、8巻荘子下……と続いて、2018年に全120巻・別巻1が完成、その後も、「詩人編(全12巻)」、「補遺編(全9巻)」を刊行中。
重要な古典漢文を網羅した中国にもない貴重な文献で、中国の学者からも感謝の声が多く寄せられている。今後、漢文研究には、日本の文献に頼るしかないという状況にあるといっても過言ではない。なぜこうしたものを作ろうとしないのか、中国という国の姿勢を表している。
明治書院ホームページより(昭和五十九年十一月)