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「ヘッセの読書術」 V・ミヒュルス編 岡田朝雄訳 草思社
この本はまず装丁に惹かれた。なおかつ懐かしい気持ちもあいまって手にとってしまった感じだ。(以下抜粋・まとめ)
流行を追うあさはかな読書からは得るものが少ない。一人のあるいは一時代の作品を突き詰めてしかも何回も何回も読み返す様な読書が本物の教養を生み出す。これは一流の作家が書いたものに限られる。
一冊の本に何らかの点で魅了され、その本の著者を知り、理解し始め、その著者とつながりを持った者はその時はじめてその本から本当の影響を受け始める。そのようにして築きあげた蔵書が自分の世界になる!
本当の教養は何らかの目的のためにあるのではなく、完全なものを目指すすべての努力と同様にそれ自体価値のあるものである。教養への道は運動自体が楽しいことと類似する。教養の目的は個々の能力・業績向上のためではなく、生活に意味を与え、過去を解明し、恐怖をもたず未来を受け入れる心構えができるように私たちを助けてくれるところにその目的がある。
読者は本に対する愛の道をいくべきであって、義務の道をいくべきではない。
娯楽に興じる時間よりも毎日1,2時間を昔の賢人や詩人のために残す場合のほうが生活に近い。
下手に力まずに自分にとって最も入りやすい門を通って精神の霊場に入ろう。各自が自分の理解し愛するものから始めよう。ただし傑作を選べ!
読書体験の神秘さと偉大さは次のことにある。つまり、それまでとの違いに気づきながらこれまでよりも繊細な感受性をもって読んでいる対象と自分との関わりがますます豊かになるのを感じながら読むことができればできるほど、私達はあらゆる発見をし、そこに究極の愛を見出すことになるのである。