
Photo by
nao_bsl
くもの糸
あのけやきの老樹の枝に
蜘蛛の巣ができている
雨粒が垂れ落ちて
雫が日に照らされて
つかの間
虹をつくる
いまからわたしは
どこに行けばいいかと
迷うとき
蜘蛛すらいなくなった
巣を見て
すこしだけ考える
蜘蛛だって
ずっとそこで暮らさずに
新しい故郷を作っていく
迷子で立ちすくむ僕に
一つの雨粒が落ちた
君がくれたその粒は
七色の飴のようだ
もうここには
春が来ている
白鳥はシベリアへ
カワセミやカルガモは
わたしの暮らすまちへ
飛んでいく
睡蓮の花は
物足りない生活をする
わたしたちに
そのうつくしさと神秘を
魅せてくれる
そのやさしさとその葉の上を
水蜘蛛やタガメが通り抜ける
春の声がこの胸の痛みを
癒やして
ぼくたちはいつも
笑うことしかできない
でもそこからはじめることができる
でもそれを歌うことはできる
feat.Takuan