春 (春よ いそげよ 改題)
僕のいる部屋から
とおくとおく
北風吹くまちの方から
梅の蕾の薫りを感じた
僕は中学生のころに
いちばん好きだった
文庫本のエッセイを
校庭でひとりで読んだことを
おもいだす
春よ
あせらないでこっちへ
でもすこしだけ
早歩きでこっちに来てくれたなら
僕はきみとふたりきりで
話したいから
ここでどれくらい待っているのだろうか
きみはいま
どこでどんな顔して
こっちへと向かっているのだろうか
春よ
寄り道するのはいいけれど
迷子にはならないでおくれ
青い灯が点滅し始めた
僕は都会のしまうまに乗って
ふとあなたの面影を感じたりする
あゝ 春よ
これから厳しい冬をこえる
この私たちのそばで
『がんばれ』とひとつ
ささやいておくれ
すべての温い生命のために
もうすぐそちらへ
向かうからと
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