【こぼれ落ちた断片04】ブロッコリーとカツオのタタキ
覚えている彼とのおしゃべりのシーンは後から思い出される。ああ、書くのを忘れた。そういうのがいくつもある。
あれはまだ、彼と付き合い始めてわりとすぐの頃だったと思う。彼が私の分もブロッコリーを買って来てくれたからそんな話題になったのだったか。いや、むしろそのときではなかった気がするが。
「……でも、ブロッコリーみたいなつぼみ菜は尿酸値の高い人は食べないほうがいいんだよ。私の母親が尿酸値が高かったから、気をつけていたんだよ。」
彼は尿酸値を上げる食べ物についてやたらと詳しかった。
「え、そうなんだ。ブロッコリーよく買って食べてたけど。私の夫も尿酸値が高いんです。」
「そう。気をつけたほうがいいよ。あと、意外とプリン体が高いのがカツオのタタキなんだよ。」
「えー、タタキめっちゃ食べますよ。私が貧血だから、せっせと買って食べてたし、夫も一緒になっていつもよく食べてました。」
「バカっ!」
と彼は言った。
「ちゃんと気をつけてあげて。」
――えっ、バカ?まで言う?
と一瞬面食らったけれど、その語気には、マリの夫のことを敵対していないばかりか、マリの大切な家族として心から心配し、大切に考えている気持ちが感じられ、マリは驚くとともに温かい気持ちになった。
この会話は、彼のマリの夫への思いやスタンスを知る礎となった。
【このこぼれ話はどうしましょう課】
→彼がマリの分もブロッコリーを買って来てくれたことを書いたあたりに挿入予定。きっと時期的にもその辺りだったように思います。
☆【こぼれ落ちた断片】シリーズは、必要に応じて本文の中に回収していきたいと思います。
※ヘッダー画像はこじかの蒙古斑様よりお借りしました。ありがとうございました。