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ビッグモーターの件から考える心理的安全性
みなさんこんにちは、現役大学院生(産業・組織心理学専攻)兼人事・組織コンサルタントのミナミです。
今回は、今世間を騒がせているビッグモーターの件から「心理的安全性」について考えていきたいと思います。
ではいきましょう!
そもそも心理的安全性とは?
心理的安全性とは、「組織の中で、自分の素直な気持ち・考えを誰に対しても安心して発言できる」状態のことです。
「心理的安全性」という概念を提唱したエイミー・エドモンドソンは、「対人関係でリスクのある行動をとっても、チームが安全な場所であるという思いが、メンバーの中で共有された状態」と定義しています。
心理的安全性は、単なる良好な人間関係や問題が起こらない状態を指すわけではありません。
企画の問題点や課題などを指摘したり、賛成意見が多数の中でも反対意見を言うことができるような状態も心理的安全性が高いと言えます。
心理的安全性が高いメリット
心理的安全性が高いと主に3つのメリットがあります。
①従業員のパフォーマンスが向上し、業績や生産性につながる
心理的安全性が高いと、安心して仕事に集中できる環境になります。
その結果、従業員のパフォーマンスが向上し、業績や生産性の向上に繋がります。
②ミスの早期発見、イノベーションにつながる
心理的安全性が低い職場ではミスがあっても報告しないまま、最初に報告していれば解決していた問題も解決できなくなっている場合が多いです。
しかし、心理的安全性が高い職場では、ミスが起こっても安心して上司やチームに報告することができます。
また、心理的安全性が高いとチーム内でのコミュニケーションが活発になり、企画などに対して様々な意見が交わされることでイノベーションが促進されやすくなります。
③離職率が低下する
心理的安全性が高い組織は、従業員にとって居心地が良いと感じられるため、組織に愛着が湧きます。
その結果従業員のエンゲージメントが高まり、離職率の低下に繋がります。
心理的安全性が低いとどんな問題が起こるのか
エドモンドソンは、心理的安全性が低いと組織メンバーに4つの不安が生じてしまうと指摘しています。
①無知だと思われる不安
無知だと思われる不安には、何か知らない・分からないことをメンバーに質問した時に「こんなこともわからないのか」と言われてしまわないか不安になることです。
気軽に質問や相談をすることができない環境では、コミュニケーションが減少していってしまいます。
②無能だと思われる不安
ミスをした際に、「仕事ができないと思われるのではないか」と考え、ミスや失敗を認めなかったり、報告しなかったりするようになります。
③邪魔をしていると思われる不安
自分が発言することで、「チームの邪魔になっているのではないか」と不安になり、提案や発言をしなくなってしまいます。
④否定への不安
改善案や意見への反対があっても、「他の人を否定していると考えられるのでは」と不安になり、発言をしなくなってしまいます。
ビッグモーターで何が起こっていた?
今世間を騒がせているビッグモーターでは何があったのでしょうか。
ビッグモーターでは、ゴルフボールを靴下に入れて車体を叩く、ドライバーで傷つけるなどして、修理費用を水増しして保険金を請求していたと発覚しました。
その後続々とビッグモーターの問題が発覚し、LINEでのパワハラ発言なども流出しました。
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こんな社内LINEがこの世に存在するのが驚きですね。。。
ビッグモーターの件から考える心理的安全性
では、なぜビッグモーターで今回のような問題が起こってしまったのでしょうか。
特別調査委員会が指摘した原因としては、以下の3つです。
①不合理な目標設定
②経営陣に盲従し、忖度する歪な組織風土
③現場の声を拾い上げようとする意識の欠如
①に関しては、達成することが難しいノルマを設定し、そのノルマを達成できそうにないとLINEで罵詈雑言を浴びせられたり、早く出社させられたりしていました。
②に関しては、先ほどのLINEからもわかるように副社長から明らかにパワハラであるLINEが来ても、店長たちは謝るだけでした。
③に関しては、①と関連しており、現場の声を拾い上げようとする意識の欠如から無理難題のノルマを設定していることが考えられます。
心理的安全性の観点から見ると「無能だと思われる不安」が深く関係しています。
ノルマを達成できないと無能に思われるのではないかと思い、結果的にノルマを達成するために不正を行ってしまいます。
また、「意見を挙げても現場の声を拾い上げてはくれないだろう」と考えて意見や改善案を提案しなくなってしまいます。
1番の問題点は経営陣です。
経営陣があのようなパワハラを行っている中で、従業員は安心して自分の意見や提案を言えることができるでしょうか。
経営陣に意見したら「今後社内で風当たりが強くなってしまうのではないか」「異動させられたらどうしよう」と考え、経営陣に従うことしかできなくなってしまいます。
まとめ
今回は、世間を騒がせているビッグモーターの件を心理的安全性から考えてみました。
ビッグモーターは心理的安全性が低いと言わざるを得ず、ここからどのようにして組織改革を行っていくのか楽しみですね。
社長・副社長は辞任し、新社長が就任されたそうですが、元々ビッグモーターにいた社員ならあまり効果がないのではないのでしょうか。
一度、現在の経営体制を解体し、調査で指摘された点を意識しながら新たな経営陣を構築することが重要ではないかと思います。
それでは今回はこの辺で。
最後まで読んでくださりありがとうございました!