私の読書室へようこそ 「朝日新聞政治部」を読む
東日本大震災のときの東電原発事故における「吉田調書」をスクープしたチームのデスクだったもと朝日新聞の記者が、吉田調書事件後の社内の混乱を告発した、注目の本。最近の朝日新聞の紙面には大いに疑問を持っていたので、その背景がよく分かった。
著者は書いている。
「私は木村社長が記者会見した2014年9月11日に朝日新聞は死んだと思っている」
「2014年の『吉田調書』事件後、社内統制は急速に厳しくなり、今や大多数の記者が国家権力を批判することも朝日新聞を批判することも尻込みしている。息苦しい会社になってしまった」
「経営陣が自分たちの危機管理の失敗を棚上げして現場の記者に全責任をなすりつけた『吉田調書』事件以降、この会社は頭から順々に腐ってしまったと思った」
「インターネットの登場でオールドメディアは情報発信を独占できなくなり、メディアの多様化・細分化が進んだ。ITの力を借りれば、取材も執筆も編集も宣伝も制作も経営も一人でできる時代が到来したのだ」
「フェイクニュースやプロパガンダが飛び交い、何を頼りに物事を考えたらよいのか、氾濫する情報に多くの人々は戸惑っている。オールドメディアはそのような時代に対応できていない」
著者は朝日新聞社を退社後、自力でウェブサイトを開設し、現在も連日記事を公開している。新しい時代の誠実なジャーナリストの在り方としてきわめて興味深い。
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