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詩「ニナ貝」



奥の部屋に引っ込んで
出てこなくなった思春期の子供の様に
頑なに
細い洞窟から出てこようとはしない
強情なニナ

あなたが奥に閉じこもらない様に
慎重に
温度にも気を付けて
至極丁寧に、煮たのに

私達は
宝探しでもするかの様に
クリップを真っ直ぐに変形して
暗闇の中をほじくり回す
膜が落ち
引っかかる様にして
あなたは姿を現した

引きちぎらない様に
貝殻をくるくると踊らせて
ダンスをしながら
紅潮させたニナが出てきた

磯の香り
海の味が鼻から広がる
海水に足をつけた
夏のビジョンが目の前に…
暑すぎて焦げそうだったあの日々
ニナの味が
私の過ぎ去った記憶の中のページをめくる
ありがとう
ニナ

直前まで
はらわたが煮え繰り返りそうだった
あの苛立ちは
潮が引いていく様に
砂浜に書いた文字が波にさらわれた時の様に
消え去っていた
記された爽やかな夏の日記の1ページ

色々なバランスが崩れ去る前に
また
あなたを買いに走ろうかな


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