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【続いてる写経 750日め】〜鑑真和上の渡日を阻んだもの

唐招提寺を開いた鑑真和上。
小説『天平の甍』は、鑑真和上が日本にやってくるまでのストーリーです。

前回書きましたが、小説の主役は日本の留学僧の普照、栄叡たち。

彼らが日本に授戒僧としてきてくれる僧侶を募り、応じてくれた僧侶の1人が鑑真和上のお弟子さん道抗でした。
そしてこの道抗、和上渡日のキーパーソンとなるのです。

当時、日本に遣唐使船以外で戻ることは実は違法だったそうで、道抗が縁をつなぎ、高級役人に話を持ちかけ、船を用立ててもらうのです。
そして、表向きは「天台山へ奉納に向かう」とし、漂流を装い日本へ向かう計画を立てました。

あれ?船、なぜだか日本に行っちゃった? 
てへぺろ?!大作戦だったんですね〜

さらに、道抗を通じて鑑真和上と留学僧は出会います。
留学僧から日本の状況を聞いた鑑真和上は、日本に仏法を正しく伝えるため、弟子を引き連れ自ら渡日することを決意するのでした。

するとこの大人物を日本などに行かせてはならぬ、と弟子たちから横槍が入ります。
渡日計画はリークされ、おじゃんに。

それでも今度は鑑真和上が諦めず、自ら出資し船を準備。
しかし今度は出航するも、船が座礁し、官吏に捕まってしまいます。

と、このようなパターンで、5回失敗を重ねるんです。
弟子のリークで計画失敗、出航しても座礁、遭難
海南島に流されてしまったときに、南方の気候のためか、和上は失明してしまうのです。

ここまでダメだったら、ご高齢だし諦めるような気がしますが。。

そもそもなぜ唐でも高僧として有名であった和上が、私財もまで投げ打って、日本に来る気になったのか。

小説では、その理由の一つに、

天武天皇の孫、長屋王が中国のお寺に千枚の袈裟を送り、

山川異域 風月同天 寄諸仏子 共結来縁
(山川が異なる地にあっても、天はつながっているように、これを仏子に寄せて、共に来縁を結ばん)

と刺繍されていたことが、心を動かしたとしてます。

袈裟にこの漢詩が縫い付けられている、確かにぐっときそうです。

高僧ゆえに、使命を感じたのもあるのでしょうが、
このような粋な計らいをする国の人々はどんな人たちなのか、
実際に会ってみたくなったのかもしれません。

文化の力を、ここに感じました。

長屋王自身は政変で暗殺されてしまうのですが、この袈裟を送る運動は、唐招提寺が近年取り組むようになり、2020年には合計100領になったのだとか。

小説以外にも色々調べると、鑑真和上のような意志の強い、立派な師がいたのならば、ゆめゆめ他国に行かせたくないと思うのは、弟子なら当然かもしれません。

例えれば、羽生結弦くんが、「中国籍になってオリンピック出る」なんて言ったら、、
絶対止めますよね、なんとしても。

うん、よく理解した。


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