【白井未衣子とロボットの日常】エピローグ・再出発の日 2 カレーポーク 2023年11月16日 20:53 ※予告なく変更のおそれがあります。※設定上、残酷な描写があります。温かいカフェラテは、寒い冬の時期には美味しい。自分の家の部屋で勉強している時に私は思った。11月半ばに家に帰れるようになってから、私達兄妹は[ラストコア]を訪れていない。10日に1回程、アレックスさんやジェームスさんからインターネット経由で連絡が来るぐらいだ。現在の[ラストコア]の運営は、うまくいってるらしい。平和な今の時期に被害の後処理の対応に追われてて大変らしくて。クーランとの決戦でお世話になった志願兵の皆さんの実力も、メキメキとつけてきたみたいで。【パスティーユ】に代わる超強力なロボの開発にも着手したらしかった。リュート王子達、土星圏の人達は一度だけ連絡があったらしい。私達にはアレックスさんを通じて、彼らの現在を知った。どうやら、王子の産まれの故郷の人に出会えるチャンスが訪れたらしく、再開する前に地球に挨拶に来たのである。本当に、喜ばしい出来事だよ。家に帰ってきてすぐに、吉川公園に行ったんだ。何でかというと、昔を振り返る為だったらしい。まあ…直近で襲撃事件はあったけどさ…振り返ってしみじみとしたいのかなあ…。季節外れの桜が綺麗だったから良かったけど。それ以降、私達の行動はバラバラだった。和希兄ちゃんが送ったメール、同じ部活の同級生の女の人宛なんだけど。返信が届いていたんだ。絵の上手な女の人で、その人に兄ちゃんの描いた絵を褒めてもらったって。感情を露わにしない和希兄ちゃんだけど、その時はほっこりした笑顔だったよ。勇気兄ちゃんが久しぶりに空手教室に顔を出した時、同じ稽古仲間の子達が兄ちゃんに群がったって。特に親しくしていた友達には、泣きつかれたらしい。服が濡れちゃって、兄ちゃんは道着姿で帰ってきたよ。もう、洗濯物を増やしちゃって…仕方がないけど。帰宅してからの私の変化と言えば…[ラストコア]に出入りする事がなくなったぐらいかな。家事と勉強と読書の時間を、増やしたから。帰ってきたからと言って、急に友達ができるようにならない。だから、私はいつも通り生活しているだけ。この日も午前中に家事の手伝いを済ませた。お爺ちゃんとお婆ちゃんが1階の喫茶店を切り盛りしている間に、掃除と洗濯をやった。昼食も残り物の食材で調理して食べた。勉強もキリの良いところで終わらせて…趣味の読書に没頭する。読書の合間にホットカフェラテをちょっとずつ飲んでいた。読書のジャンルは普通の小説だった。現代の日常生活の風景を描いた、ほのぼのとした小説。内容が入りやすいので、ページをめくる速度も早かった。時刻は午後4時頃だろうか。時計の短針は『4』を指していたから。1冊の小説の本も読み終えてしまった。あっさりと読めたからかな。本を閉じて、棚に仕舞おう。そう思って、立ち上がった時だった。木製の学習机に、透明の水滴が1つ、2つ落ちていた。カフェラテのカップは机の奥に置いていたから、手前に水滴が落ちる事なんてない。それに、自分の顔の頬に、何か冷たい物が感じられたんだ。鏡はないので、近くの窓で自分の今の顔を確かめた。机の上の水滴。頬に冷たい物の感触。正体は…涙だった。小学生の時にいじめられて以来、私は涙を流せなくなっていた。悲しい表情を、作ることはできても。だから、涙が溢れた時は、驚きで声を発せなかった。今日の出来事を振り返った。掃除と洗濯でヘマなんてした記憶はないし、勉強もハードな問題には挑戦していない。先程の小説の中身だって、涙を誘うような感動シーンの描写は見当たらなかった。なんでだろう?心当たりなんて、全くない。でも…訳の分からない虚しさだけは、感じている。兄達も祖父母も父もいるし、寂しくはないんだけど…。…そうか。これは誰かがくれた恵みなんだ。ずっと涙が枯れていた私を後押しするように。もう一度、普通に暮らしていけるように…。これは私への励ましなんだ。私が強くなれるように。ありがとう。知らない人。私はもう、自由に生きていけるよ。本を棚に戻す前に、私は涙を袖で拭った。本を戻してから、私はカフェラテのカップを持って、部屋を出た。【白井未衣子とロボットの日常】《共闘》おしまい。 ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #つぶやき #妄想 #まとめ #創作1 #ミコロボ 2