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【白井未衣子とロボットの日常】12・潜入の日《8》

※予告なく変更のおそれがあります。
※設定上、残酷な描写があります。


ジェームズが指揮官で搭乗した宇宙船から、ジェット機が複数機出撃した。
色は紺、深緑、茶色の3色のみ。数は均等に振り分けられていた。

実はこのジェット機、合体機能を搭載している。
【パスティーユ】同様、3機のジェット機が合体し、1体のロボになる仕組みを採用していた。名前は特になかった。
開発はアレックス達が担当したが、実戦に運用ができなかった。
パイロット不足が主な要因だったからだ。

呼び名としては、【軍用機】で仮づけられた。
紺・深緑・茶色の3色で1つのグループとなり、合体を行うのだが。

『きゃっ!』
『うわっ!』
うまくはいかなかった。
パイロットである志願兵達の経験不足と、敵の猛攻撃が原因であった。
[ラストコア]に配属されるまで、志願兵達は訓練を受けていた。
【軍用機】を秘密裏で、閑散とした基地に搬送された履歴も残されている。

ただ、訓練期間が短すぎた。
2、3年前からジェームズが独自で募ったのだが、学生時代の友人の手伝いもあっても、集まれたのは約1年前。
それでも十数人程が限界だった。
正規軍にバレないよう細工するのは困難で。
友人の小説にファンタジックな要素を書かせた理由は、検閲に引っかからないようにする為だった。

訓練開始は召集してまもなくだった。

ざっくり言うと白井3兄妹の経験した半年間と比べると、彼らは豊富なはずだが。
実際の戦闘経験は、今回が初めてだ。
正規軍の網目を潜り抜けるのも困難なのだ。

しかし、ここでネガティブな過去を振り返っても何も起きない。
限られた人数でも、この正念場を乗り越えなければならない。
ジェームズは宇宙船で志願兵達の動向を見守りながら、マイクを握って彼らを叱った。

「焦るな!ビーム兵器の届きにくい離れた地点へ行け!
合体してから仕返しすればいい!」
『ですが少佐!土星や金星の人達は…。』
「彼らはプロだ!しばらくは時間を稼いでくれる!先に合体に集中しろ!』
『わかりました!』
志願兵達はハキハキと返事した。

その後、志願兵達が乗るジェット機が距離を離すように後退する。
ビーム兵器の攻撃が届きにくい位置に来ていた。

『チーム1、コードS、始動!』
紺の機体に乗る女性の志願兵が号令を下す。
同意で深緑と茶色の機体の者達が繰り返した。
深緑、茶色の2機が横に並び、その上に紺のジェット機が乗った。
正面側から見ると、紺の機体を頂点にした三角形ができあがる。
『乗った』という表現だが、実際ジェット機同士は間隔を空けていた。

正面側と背面側に、三角形のラインが激しく点滅する。
3機のジェット機全てが光出した。

三角形のラインは残した状態。
3つの光は1つの大きな固まりと変化した。
やがて光の強度は弱くなっていくと、人型ロボが姿を見せた。

ロボの右手には先端に水晶のような球体がつけられたロッドがあった。
【パスティーユ・フラワー】と同じ、広範囲の攻撃型のロボが登場した。
メインパイロットの女性含め、志願兵達はドキドキしていた。
うまく成功するか、不安で気持ちがいっぱいだったからだ。

成功の反動で、志願兵達は思わず喜びの声をあげた。
『やったわ!』
『よかった…。』

しかし、戦況的に喜ぶのはまだ早い。
他の味方は敵と交戦中で、疲弊してるだろう。
即座に味方の支援に努めなければならなかった。

「いいか、『コードS』は【パスティーユ・フラワー】と特徴は同じだ!だが機体の耐久性は【フラワー】より劣る!
まずは後方からの支援に徹しろ、状況によりチェンジの指示を出す!」
『わかりました!』
ジェームズの指示に志願兵達は従った。

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