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【白井未衣子とロボットの日常】6・暴露の日《12》

※予告なく変更のおそれがあります。
※設定上、残酷な描写があります。


『未衣子!』
男の人の声がした。兄達から発した声ではなかった。
【パスティーユ】に突進するように、猛スピードで迫るロボがいた。
あの黒いロボは見間違えるはずがない。
【ブラッドガンナー】。
武人兄ちゃんが駆けつけてきた!

兄ちゃんが退かすために、私達に体当たりをしてきた。
体当たりで衝撃が走った。
だけど、白い光が消え、【フラワー】へのチェンジに成功した。
その引き換えに…【ブラッドガンナー】が電流を浴びてしまった。
『ぐあああああ!』「兄ちゃん!」
武人兄ちゃんは悲鳴をあげた。
彼は人間みたいな姿以外、ロボから変身できない構造である。

そうだ、雲だ!雲を消してみるしかない!
【フラワー】はロッドを上にあげて、薄桃の光の球を出した。
前に振ると、光の球は分身して、【フラワー】を囲むように陣形をとった。
「行け!」
【フラワー】が3回転すると、光の球は八方に散っていった。
雲に命中するのは容易い事だった。
雲は弾けて消えたけど、電流は止まらない。
武人兄ちゃんは未だ、電流に苦しんでいる。

他に方法は…。
考えようとした時、藍色の槍が雲に刺さった。
槍に電気が走り、避雷針代わりになった。

【ブラッドガンナー】が電流の縛りから解放された。
力が抜けているのか、兄ちゃんが下に落ちる!
私達が武人兄ちゃんを支えにいく…事はなかった。
槍を投げた張本人、【ホーンフレア5th】が急いでキャッチした。
『まっすぐに飛び込んで…貴様らしくない!何を考えている!』
王子の叱責だった。
『…責任取る…言うたからな…散々酷い目…合わせとる…』
兄ちゃんは途切れ途切れに言った。
【ブラッドガンナー】は黒いロボだけど、黒い煙と多数の傷跡でボロボロなのは一目瞭然だった。
武人兄ちゃんが、危ない!私達は危険を感じていた。

危険性を上乗せするかの如く、敵の白いロボがお喋りを始めた。
『お前達。そいつを庇う必要はないぞ。秘密を知れば尚更、やる気を削ぐさ。』

「…どう言う事?」
『戻るぞ君達!愛嬌湾が荒れているんだ!』
王子の叫び声がした。でもそんな気になれなかった。

『【ブラッドガンナー】の正体はラルク・トゥエルラー。
お前達が敵視している、[宇宙犯罪者]の1人だ。
しかも、11の星を滅ぼした、超極悪人なんだよ。』
『ラルク…?』『[宇宙犯罪者]…だって?』
兄達は敵のロボの説明に驚いた。私だって同じように驚いた。

『過去の話だ!此奴の言葉に耳を貸すんじゃない!』
『外野は黙ってろ!』
敵のロボはロッドを振るい、白く光る立方体を【ホーンフレア5th】にぶつけた。
『うおっ!?』
立方体は命中し、【ホーンフレア5th】は後ろに下がった。

『あの男はな、いい兄貴ぶりを装い、お前達を戦場に導く卑劣な罪人だ。学びの退屈さにつけ込んだ策略家だよ。
平和を願う癖に、侵入者を徹底的に叩く矛盾。
地球さえ良ければ、それでいいと思う自己中だよ。』

真っ白な電撃の光が、私達に襲いかかってきた。
敵のロボの話の途中で。回避はしたけど。

『この星の学舎は素晴らしいぞ。優劣なしに教養や知識を学べるんだ。お前達はそれを放棄しようとしている。
3人、学舎に潜入させたからな。』
「まさか丸井君は…!」
私は咄嗟に声が出た。

『女…そうか。君が1番親しくしてくれたんだってね。
周りに友達がいないから。
どうだ?僅かな期間のじゃれ合いは楽しかっただろう?』

敵のロボの攻撃は止まらない。
ロッドを振るだけで定位置に固定したままなのに。
何度も繰り出されると、1発は攻撃を受けてしまった。
「ああっ!」『未衣子!』
『君に友達がいないのは、《夢》のせいらしいな。
同じ男が出る《夢》に周りが引き、挙句には乱暴に扱ってもいいレッテルを貼られた。良かったな。《夢》の男に出会えて。
とんだ極悪人だったがな!』
攻撃の威力が増してきた。

何もかも見抜かれて、言い返せない。
防がないといけないのに、気力がない。
ダメージは受けるばかり。
『未衣子!俺に変われ!』
『安心しろ。目的は達成した。
お前達が俺に挑んでいる間に、本部に侵攻させた。
命を取る気はない。おとなしく勉学に励むんだな。少年少女よ!』
また攻撃をくらった。私は反動で頭を強く打った。
ヘルメットで衝撃は軽かった。けど何故か、左目に赤い雫が見える…。
きっと、前面ガラスが割れたんだ。破片が私の頭に刺さったのな…?

『未衣子!しっかりしろ!』『くっ、落ちるぞ!』
兄達が必死に心配してくれた。でも意識が遠のく…。
【パスティーユ】は装甲優れてる筈なのに。


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